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31.



「ここは街......というより村に近いかなぁ?」


 今回は森に沿って1周してシュヴェールに帰る予定なのだが、森から流れ出ている川を挟んで村が存在していたのだ。


「こんにちは〜!」

「こんな村に人が......?何用じゃ!」


 おー、いきなり初老の男性が出てきて睨まれてしまった。え、僕何もしてないよね?


「えっと......この度商会を立ち上げまして、街や村を見て回ろうかなと」

「商会だぁ?この村にゃ売るようなもんは何も無い!他所もんはとっとと去るがよい!」


 なるほど、僕たちがどうというんじゃなくて排他的というわけか。


「まぁまぁそう言わずに。実は面白い物もあるんですよ。子供たちが遊びながら勉強出来る道具なんかいかがですか?」

「遊びながら勉強?矛盾してるであろう。何が目的か知らんが騙されんぞ!」


 うーん。ここまで懐疑的とは、過去に何かあったのかな?ま、そんな程度で諦める僕じゃないけどね。


「いえ、そうでもないんです。実は僕、領都で孤児院を経営しておりまして......そこで子供たちが飽きることなく勉強出来方法を考えたんですよ。それがコレです」

「......なんだ?カード?」

「そうです。トランプと言います。ここに数が書いてあるでしょう?これを使って計算しながら、考える力も養うわけです。とりあえずお近付きの印に2セット差し上げますよ」

「何が狙いだ?さっきも言ったが、この村にゃ売れるようなモンはなにも無いぞ」

「狙いですか......強いて言うなら子供たちですかね?あ、別に攫うとかじゃないですよ?この国の未来を作るのは子供たちです。だから、子供たちにはたくさん学んでもらって知恵を付けてほしいんですよ」


 危ない危ない。子供が狙いなんて言った瞬間にすごい視線で睨まれちゃったよ。


「それを信じろってのか?」

「まぁそうですね。まずは実際に僕たちが遊び方を披露したいんですが、どこか広い場所を貸して貰えますか?皆が見学しやすいように」

「......こっちだ」


 ふぅ。なんとか村には入れたね。しかし家はボロボロだし、住人は皆痩せている。なるほど、そういうことか。

 とりあえず黙って着いていくと、村の中心にある広場にたどり着いた。

 続々と村人が集まってくるが、その手には農具やフライパンなどが握られていた。うん、怖い。


「みんな集まってくれ。なにやらこの商人だかが見せたいものがあるらしい」

「はいはーい!ライといいまーす!子供たちは見やすいように前に来てねー!」


 僕、ルナ、ククー、リュシオルの4人で7並べをやっていく。説明しながらだからゆっくりだが、徐々に見ている子供たちの目が輝いているのが分かる。

 途中から子供たちと入れ替わり、再度説明しながらサポートしていく。娯楽の多くない村の子供にとって、トランプの虜になるのはそう難しいことではなかった。

 さらにはアニフィやフクロウ隊が曲芸紛いのことをしだして、ついには大人までが盛り上がっていった。1番難しい顔をしていた村長的な人の表情も少し和らいだような気もする。


「さーて、それじゃ......今日だけ無料で家の修理承りまーす!壁でも屋根でも直すよ〜!依頼する人は並んでね〜!」

「なっ——」

「家の修理を?」

「しかしあんな子供が......?」


 まぁそうだよね。商人なのに家を直すなんて、しかも10歳の子供がそんなことを言っても信じられないのも無理はない。なら実践してみせよう!

 

「アニフィ!出番だよ!」

「(プルプルプルプル)」

 

 おお、アニフィが触手を展開していつもより震えている。やる気満々ってことかな。

 村の開いているスペースを提供してもらって、そこに即席の家を作る。材料はたくさん収納してあるし、アニフィの手にかかればお手の物だ。

 あっという間に完成した小屋を見た村人たちは唖然としていた。ふふ、これなら文句はあるまい。ま、やったのは僕じゃなくてアニフィなんだけど。


「さ、小さな補修から大きな修理まで、今だけ無料だよ〜!並んだ並んだ!」


 村にある家よりも立派そうな小屋を見たら文句など出るはずもなく、すぐに行列ができた。

 まぁそうなるよね。ここにある家を建てた人が今どうしてのかは知らないけれど、どの家も応急修理だけしてあるがなんとも心もとない。

 アニフィが頑張ってくれたおかげで、全ての修理を日が落ちる前に終えることが出来た。中には屋根や一部の壁だけが元より立派になっている家もあるが文句は無いだろう。


「アニフィ、お疲れ様。帰ったらいっぱいご褒美あげるからね」


 アニフィが飛び跳ねながらじゃれついてくる。労働にはしっかり対価を払わないとね。


「それにしても主。本当に無償でやって良かったのかのう?」

「ん?それはいいんだよ。まず必要なのはお金じゃなくて信用だからね」

「信用とな?」

「そ、最初はすごく警戒されてたでしょ?だからまずは困っていることを見返りなしに解決してあげる。そうすれば警戒は薄くなるんだ」

「むぅ......たしかに村人たちの表情は変わったのう」


 ま、それだけじゃないんだけどね。

 高い質に慣れてしまえば元の質では満足出来なくなる。再び壊れた箇所があれば依頼するしかないわけだ。

 税が減った分余裕は出来るはずだから、生活全体の質を上げていかないとね!

 

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