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3.


 

 

「えーと、ハ......スキンヘッドがウルスで、モヒカンがリオン、細いのがシュヴェートヴァール——ヴァル、のっぽがシュランゲ、ちっちゃいのがハーゼ、お姉さんがシーニュだね」

「おい、てめえ今ハゲって言いかけたろ!」

「......ちっちゃいは余計」

「あらためて、僕はラモール。僕の仲間——いや、家族かな。ブランと、フクロウ隊のリーダー・シエルだよ。他にもいるけど今ここにはいないからまた紹介するね」

「......ねえ、その白い子、ブラン?どこで拾ったの!?」

「ん?ブランは伯爵家の離れである日突然現れたんだ。ご飯をあげたり綺麗に洗ってあげてたら懐かれたんだけど、シーニュは何か知ってるの?」

「私も実物を見たのは初めてだけれど、多分その子はグリュークという種族よ。見た者に幸せを運ぶと言われてて、神の遣いなんて呼ばれることもあるわ。あまり人前でその子を見せるのはやめたほうがいいわよ」

「へー。ブランってそんなすごい子だったんだぁ。でもたしかに僕に幸せを運んでくれたね。ありがとう、ブラン」

「キュゥ~!」

 

 顔をこすりつけてくるブラン。可愛いなぁ。

 

「そんなすげえのを手なずけているとはな......」

「ラモールなら本当に何かやるかもしれない」

「俺たちの希望......」

 

「あ、ところでさ。僕が抵抗してなかったらどうしてたの?」

「離れた街の孤児院の前にでも置いて来ようと思ってたんだ。伯爵のことは憎んじゃいるがおめえが悪いわけじゃねえしな」

「そっかぁ。まぁ詰めは甘いしやってることは誘拐だけどね」

「うっ......それは悪かったよ。もう伯爵には従わねえ。俺ぁ抗うぞ、貴族に......この世界に!」

「俺もだ!」

「こんな生活もう嫌だしね」 

 

 ブランと戯れつつ話していると、突如ブランが顔を上げて鼻をヒクヒクさせた。ん?どうしたんだろう。

 すると僕の服を引っ張り始める。どこかへ連れていこうとしているようだ。

 器用に小さな手で方向を示すのでその通りに歩いていく。どんどん森の奥へと入っていってるよな?まぁシエルもいるし帰り道が分からなくなるということはないからいいけど。

 その場所へ近づくにつれて、僕でも感じ取れた。

 ——何かいる。とんでもない存在感の何かが。

 ソコに近づくと、木陰から何かが飛び出してきた。これって......。

 

「スライムってやつかな?」

 

 なんかゼリー状のものがウネウネ蠢いている。しかしこいつからは特に何も感じない。

 

「キュウ!キュッキュウ!」

 

 ブランが何かを語りかけると、スライムは蠢くのをやめて丸くなった。威嚇でもしてたのかな。

 そしてソレ(・・)は現れた。呼吸はやや荒く、ゆっくりとした動きで俺たちの前に姿を見せた4本足の獣——狐だ。

 しかしデカい。 僕よりひと回りも大きい。そこから放たれる威圧感は桁違いだ。

 唸る狐に対して再びブランが鳴き声で語りかける。しかし狐は威圧をやめるどころか強めた。

 なかなかのものだ。......だけどなぁ!前世のパワハラクソッタレ部長の重圧(プレッシャー)に比べれば弱いんだよォ!

 睨み返すと狐はあっさり威圧をやめておすわりをした。 

 

『ほう、我が威圧に屈しないとななかなかのものよ。よかろう......その強き意志、我が(あるじ)たるに相応しい』

 

 頭の中に声が響いた。これは......テレパシー?この狐の仕業か?しかも人の言葉を操るなんてただの狐じゃない......妖狐ってやつか。よく見れば背後では3本の尾が揺れている。

 座ったまま頭を下げたのでとりあえず撫でてみる。すると、それでテイムが完了してしまった。

 単純な奴だな......と思った瞬間、体に衝撃が走った。なっ......息、が。

  

「キュウ!キュッキュイキュ!」

『仕方なかろう。我を目覚めさせたとはいえ、この程度に屈するようでは従う価値など無い』

 

 ブランと狐の言い合いも頭に入らず、膝をついてしまう。

 

「キュ!?キュイッ!キュウ!」

『む?どうした主。......ふむ、これは主のスキルか。我と繋がったことで負荷がかかったのだろう』

 

「............ハァ、ハァ」

 

 3分ほど経ってようやく収まってきた。こいつは......

 

『大丈夫か?』

「うふふ............あはは!これはすごい!僕はまだこのスキルを全然分かっていなかったんだ!」

「キュ?」

『急にどうしたのだ?』 

「ブランも感じるだろう?自分の中に力が入ってくるのを。妖狐の強大な力の一部が僕のものになったんだ!」

 

 今まではブランやシエルなどあまり力の強くない生き物をテイムしてきた。だからそこに意識がいかなかったんだ。

 今回、妖狐をテイムしたことで無理やり気づかされた。テイムした生き物の力が僕に集約されて、その一部がテイム先の生き物に分配される。

 つまり、テイムすればするほど僕や僕の仲間はどんどん強くなっていく。嗚呼、なんて素晴らしい力なんだ。

 

『そのような力があるとはのう。やがて世界の全てが主にひれ伏すだろうて』

「そんなのは必要ないよ。僕は表舞台に立つ気はないからね。ただ、笑って暮らせる世界を作りたいだけだ」

「キュウ!」

『ククッ、さすがだ。力に溺れぬ強き意志、それこそが我を目覚めさせたのだ』

「......ん?目覚めさせたってどういうこと?」

『我は長い間眠っていたのだ。そこをお主の強き意志に刺激されて目覚めた。おそらくはそこのグリュークが増幅させたのであろう』

「キュイ!キュウキュウ!」

『そうか、ブランというのだな。我には何か名は無いのか?』 

「あるよ。君の名はルナールだ」

 

 テイムが完了した時に自然に名前が浮かんでくるのは助かる。正直、ネーミングセンスに自信なんてないからな。

 

『ふむ、悪くない。ではこれからはルナールと名乗るとしよう。よろしく頼むぞ、主』

「(プルプル)」

「君も一緒に来るかい?」

 

 スライムがなにやら揺れていたので聞いてみると、触手を伸ばして器用に丸を作った。ビックリした......スライムって触手あるんだ。

 手を差し出してみるとその上にチョコンと触手が乗る。これでテイム完了。

 

「君の名前はアニフィだ。よろしくね」

「(プルプル)」





 

 ルナールとアニフィを連れて戻ると山賊一同の絶叫が響き渡った。まぁそりゃそうなるか。

 

「な、なんてもんを連れてきやがったんだ......」

「まさか......あれって......」

「みんなビビりすぎじゃない?」

「ラモール、よく聞いて。ソレはね、その昔、この国を壊滅寸前に追い込んだ破壊の権化よ。ソレが封印されていたからこの辺りには人が寄り付かなくて私たちが根城にしていたの」

「おぉ、それはすごいね。でも大丈夫だよ、今は僕の仲間だし。あ、でもこの大きさじゃ目立つかぁ。ルナール、姿って変えれたりしないの?」 

『まったく、人間というのは面倒くさいのう』

 

 ルナールが光ったと思ったら、そこには驚きの光景があった。

 

「どうじゃ?これでいいかのう?」

 

 テレパシーではなくちゃんと耳に聞こえてくる声。いやそれよりも驚くべきは、狐がいたはずの場所に女の子がいることだ。

 金色こんじきの髪に、薄茶色の狐耳と尻尾を生やした女の子。獣人(ケモっ娘)だ!しかも僕と同い年くらいに見える。

 

「こいつぁスゲエ......」

「......その服は?見たことない......」

「なんじゃ、知らんのか?主の記憶を読み取って再現したんじゃがのう......」

「なにしてくれてんの!?」

 

 ルナールが着ているのは着物だ。山賊が見たことないのも無理はないだろう。

 たしかに擬人化妖狐の着物姿なんて最高だよ!大好きだよ!でも今じゃないんだよ!

 なんで嗜好を暴露されなきゃいけないんだ!

 

 テイムスキルにこんな落とし穴があったなんて......。まさに穴があったら入りたい気分だよ......。

 

 

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