表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/64

24.



 うーん。さすがにこの孤児院でも狭いかなぁ。様々な街の孤児院から集め、さらに奴隷となっていた人たちも一時的に保護しているから予想以上に人が増えてしまった。

 ここだと土地が足りなくて建物は増やせないし、他の街に作るしかないよね。とりあえず今日は外に出れないし設計だけしておこうかな!

 今日はついに王都からの調査隊が領都シュヴェールに到着したのだ。顔を知られると厄介事に巻き込まれそうなのでジェニーに対応してもらって孤児院に引きこもることにした。まぁ情報収集はするけどね。



 

「しかしここは以前とは違い、活気がありますな」

「ええ。領民から搾取していた父とは違い、今は領民第1の政策を行っておりますから」

「ほう。具体的にはどのような?」

「まずは税を減らしました。金銭的に余裕を持たせることで心にも余裕が出来ます。そうなればお金を使うことにも抵抗はなくなり、結果的に街全体のお金の流れがよくなります」

「......なんと。そこまでの考えがおありだとは」

「民が豊かな生活を送れると知れれば他所からも商人や移民希望者が来てさらに街は発展いたします」

「たしかに、そう言われれば一理ありますな。そのお考えをどこで学ばれたので?」

「我が盟友、妖狐のルナ様ですわ。父の悪事を暴き、私に知恵を授けて頂きました」

「あの噂は真だったということですか......」

「もちろんです。この街の民も皆が実際にそのお姿を目に入れています」

「分かりました。王都にもしかと報告致しましょう。ではシュヴェーレン公爵への調査に移らせていただきます」

「それに関してはこちらにまとめてありますわ。当人を引き渡す準備も出来ておりますのでいつでも」

「なるほど、妖狐の助けはあれど、天才の名は伊達じゃないということですか」

「あら、私など真の天才の前では凡人に過ぎませんわ」

「そのようなお戯れを——」


 うんうん、上手くいっているようだね。全部ルナがやったことにしてしまおう作戦、成功だね!

 政策の詳細もある程度はまとめてあるし、あとは帰り際にでもルナの姿を見てもらえば完璧だろう。この街はなにがなんでもジェニーに治めてもらわなくちゃね!

 公爵は簡単な尋問だけされていた。とりあえず事実確認だけして詳しくは王都でってことみたいだね。僕のことは口にしないようにお願いしてあるし、おとなしく全てを白状するといいよ。

 調査隊はこの後伯爵領に向かって、帰りに公爵を連行する予定らしい。まぁ伯爵領に行っても領主はいないんだけどね。




   *   *   *



 伯爵領の領都に調査隊が到着したの同時に、伯爵邸の屋根に巨大なドラゴンが降り立った。調査隊は初めて見るドラゴンに圧倒され、悲鳴をあげるのも忘れてただ尻もちをついていた。


「愚かなる人間どもよ。禁忌に手を出した貴族は(われ)が滅ぼした。これがその成れの果てだ」


 唐突な言葉と共に何かが飛んできて調査隊の近くに落ちた。ソレは人の形のようにも見えるが、真っ黒であり、なにより人の数倍の大きさがある。さらには紙が束になって括り付けられていて、調査隊は混乱するばかりだった。


「向こうの街では妖狐が協力しているようだが、ならばここは我が見張るとしよう。まともな貴族が治めることを期待する」


 それだけ言い残して、ドラゴンは飛び去ってしまった。調査隊はいまだ言葉も出せないまま固まっていたが、民たちからは徐々に歓喜の声が湧いてきた。ドラゴンの姿自体は先日も目にしているし、なにより悪徳貴族の圧政が終わりを迎えたのだ。喜ばないはずがない。

 妖狐だけでも信じがたいしどう報告すべきか悩むのに、それに加えてドラゴンなど誰が信じるというのか。しかしすべては事実であり、強大な存在が味方になったと勘違いした民が調査隊を取り囲んでいた。

 自分たちは公爵と伯爵の調査に来ただけなのに何故こんなことになったのかと急いで伯爵邸に逃げ込んだ。そこは至る箇所が破壊されており、人の気配すら感じられず静寂が支配していた。

 誰もおらず書類関係も無いと分かると調査隊は逃げるように街を離れた。しかし民に睨まれて、重くてデカい黒い塊を回収せねばならず、心身ともにヘトヘトだった。


 シュヴェールまで全力で戻って来た調査隊は、今度は公爵邸の上に座っている妖狐を目にして気絶してしまう者までいた。ジェニーの盟友とはいえ、その強大な存在を目のあたりにすればどうしても恐怖心が湧いてきてしまう。

 ジェニーのもてなしも断り、公爵を連れて早々に引き上げていったのだった。今回限りでこんな仕事やめてやる......と決意した者がいたとかいないとか。





「ライ様、少しやりすぎですわ。調査隊の方々がかわいそうです」

「まさかあそこまでいい反応をしてくれるとは思わなかったよ。まぁこれで変な貴族が来ることもないでしょ」

「はぁ。嫌な予感しかしませんわ。ルナ様のお姿まで見せつけては本当に私の管轄領が増えてしまうではありませんか......」

「そうなったらペルディアにも孤児院作るからよろしく~」

「それは構いませんが、ライ様にも引き続き相談に乗っていただきますからね?」

「それくらいなら構わないよ。まだまだやれることはたくさんあるからね」


 税を減らしたくらいじゃまだまだだ。相変わらず人手は足りないが、人自体はたくさんいる。つまりは教育が行き届いていないのが問題なのだ。

 調査隊の報告によってジェニーが領主となるのはほぼ確実だろうし、これで本格的に改革が進められる。楽しみだなぁ。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ