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23.


 「はいはいお邪魔しま~っす」


 外の見張りを蹴散らしてから乱暴気味にドアを蹴り開ける。建物の中には数人の大人が酒を飲んで騒いでいた。

 

「で、(かしら)ってどれ?」


 後ろを振り向くと、エリィに背中を押された男がたたらを踏みながら入ってくる。男は震えながらも、1人の男に指を向けた。


「あ、あれです。あの男がお頭です......」

「あん?なんだこのクソガキ。おい、スリ!これはどういうこった。攫ってきた商品はどうしたぁ!」


 持っていたコップをテーブルに叩きつけて怒鳴る男。なるほど、部下に仕事をやらせて自分はこんな真昼間から酒とはね。

 僕が目の前に立つと、男はいきなりコップで頭めがけて殴りつけてきた。が、左手で払うだけでコップはあっさり飛んでいってしまう。そして慌てて立ち上がった男の鳩尾に拳を叩き込むと、男はこれまたあっさりと背後の壁まで吹っ飛んでめり込んでしまった。


「少々虫の居所が悪くてね。僕としたことが手加減を忘れてしまいそうだよ」


 村を襲い、罪なき大人たちを皆殺しにしたうえで商品になる女子供だけを攫って奴隷にする。クズすぎて反吐が出る。

 周りで呆然としていたヤツらも飛びかかって来ようとするが、エリィがテーブルを持ちあげて振り回すといとも簡単に蹴散らされた。


「主殿に歯向かうとは愚かよのう」


 ルナは空の旅を嫌がって留守番を買ってでたけど、代わりについてきたエリィが頼もしい。さすがはドラゴンだ。

 僕はお頭に向き直って、壁から引きはがす。


「おやおや、先ほどまでの威勢はどうしたんだい?ああ、気絶してる暇はないよ。全てを吐いてもらうまではね」

 

 


  *   *   *



 僕の()()に応じてくれたお頭は全てを吐いてくれた。今まで同じようなことばっかやってたなんてのは分かり切ってることだしどうでもいいんだ。知りたいのは商品の販売先と、同業者の存在だ。

 というわけでお次は奴隷商へとれっつごー!


「この男の顔、知ってるよね?」

「......なっ!子供......?だ、誰に手を出したのか分かっているのか?」

「誰って人攫いをしているクズだよ。だからここへ来たんじゃないか」

「お、俺たちは伯爵様の許可を得てやっているんだぞ!」

「その伯爵ならもういないよ。噂になってない?あ、ちなみに僕は公爵家の遣いだからそこんとこよろしく」


 家紋の入った短剣を見せると、奴隷商の目の色が変わった。


「へへっ、ガキがどこで拾ったのか知らんが、それがあればやりたい放題じゃねえか。それを......よこせぇ!」


 どこから取り出したのか、ナイフを手に襲い掛かってくる。まぁ奴隷を扱っていればトラブルもあるだろうしいざという時の備えはしてあるか。賊共よりは優秀だな。

 だけど相手が悪かったね。避けつつ足を払うと奴隷商は転んで、ナイフはお頭の目と鼻の先に突き刺さった。


「甘いねぇ。見た目だけで判断するなんて商人向いてないんじゃない?サボー!入っておいでー」


 名前を呼べば、外で待機していたサボが入り口を破壊して突入して来る。突如目の前に現れたヒッポグリフに奴隷商は目を白黒させている。


「おー、よしよし。なになに......お腹が空いたって?そうだなぁ、何か餌になるものは......っと」


 奴隷商のほうをちらっと見ると、分かりやすくうろたえている。やっぱり初めて見る人には効果てきめんだよねぇ。


「......ぐっ、の、望みはなんだ」

「ん-?別に嫌々協力してくれなくてもいいんだよ?まぁ何人かいなくなるかもしれないけど」


 僕の言葉に合わせてサボが翼を広げて威嚇すると、奴隷商とお頭は面白いように顔を青ざめさせていた。


「ぜ、ぜひ協力させてくれ!なんでもするから!」

「そう?そこまで言うなら仕方ないなぁ。とりあえずここにいる奴隷全ての解放と、顧客リストを渡してもらおうかな」

「そ、そんな......」

「嫌ならいいよ。どのみちこの世界からは奴隷をなくすし、他の奴隷商に協力してもらうから」


 どんな手を使ってでもそれは成し遂げてみせる。罪を犯した者が償うためならまだ分かるが、借金のためとか攫われて売られたりとか、そんなのが許されていいはずがない。

 地球でだって、ローンや奨学金、クレジットカードを利用する人がほとんどだ。それだって借金みたいなものだけど奴隷になるわけじゃない。悪いのは民ではなく、こいつらクズや国のシステムなのだ。

 結局泣いて喜びながら協力を申し出た奴隷商の手により、商品とされていた人たちは全て解放された。みんな突然の事態に戸惑っているようだけど、公爵家の名の下に保護すること、そして今後の人生についてやりたいこと行きたい場所があれば全力でサポートすることを約束したら徐々に泣き崩れる人が増えていった。

 ここで奴隷にされているということは帰る場所はすでにないだろうし、まずは孤児院に連れ帰って体調を整えてもらわねば。問題はどうやって連れていくかだけど......。


「ねぇ、馬車持ってるよね?1番大きいやつ用意してよ。あ、馬は無しで荷台だけね」


 奴隷商にお願いすると、お頭たちと大きい荷台を引っ張ってきた。よくこんなもの持ってるなぁ。


「みなさーん、ちょっと移動するのでこれに乗ってくださーい!もう自由だから安心してくださいねー!ゆっくりと順番にー!」


 全員が乗り込んだのを確認してからアニフィの分体が触手でサボと接続する。けっこうな人数だから触手もサボも心配だったけど、いまやテイム効果でかなり強化されているから全然問題ないみたいだ。

 

「じゃ、サボ。よろしくね!」


 背中に乗って撫でると、サボはひと鳴きしてからゆっくりと飛びあがった。普通に曳いていくことも考えたけどそれだと揺れると元奴隷の人たちに負担がかかるし、ということで荷台を吊りながらサボに飛んでもらうことにしたのだ。

 とはいっても浮く程度で高度を取るわけじゃないけどね。ちなみに奴隷商と人攫いの一味は縛ってロープで荷台に繋いだから引きずられる形だ。せいぜい旅を楽しんでもらうとしよう。


「さぁ、孤児院へ帰ろうか」

 

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