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2.



 はい、皆様いかがお過ごしでしょうか。

 えー、僕はですね、現状を言葉にするなら

 

『知らない天井だ』

 

 いやこれじゃ分からないですよねすいません。ちょっと言ってみたかっただけです。もう少し詳しく言うと、縛られて転がされてます。テヘッ。

 いやね、とりあえず伯爵領にいてイチャモンつけられても嫌だしと街を出たんですよ。テイムしておいた鳥さんの視覚共有リンクで隣町の方向は検討ついてたし。

 で、歩き出して人気が無くなった途端にあっという間に捕まっちゃったんだよねあははー。

 盗賊......いや、こういうのは山賊っていうのかな?ま、ちょうどいいや。利用させてもらうとしようか。

 

 

 

   *  *  *

 

 

「ガハハ!今回の仕事チョロすぎんだろ!」

 

 いかにもリーダっぽい一際大柄なスキンヘッドが豪快に笑う。 

 

「ですね!これだけで酒が飲めるなんてありがたいっすわぁ」

 

 それに追随するのはモヒカンのいかつい男。 

 

「でも逆に簡単すぎて怖くないっすか......?」

 

 一転心配そうな声をあげるのはヒョロっとした男。 

 

「そうだよね。簡単すぎる仕事には裏があるんじゃないかって疑うよね」

 

 同意を示す小さな人影。

 

「ったく、お前らは体がヒョロいから気もちいせえんだ......ってなんでこのガキがここにいんだぁ!」

「なっ!ちゃんと縛って隣の部屋に放り込んでおいたのにいつの間に......!」

「あー、無駄無駄。あんなの簡単に解けちゃうよ。見張りもつけないなんて不用心すぎるね」

 

 実際は隠れてたブランに手伝ってもらったんだけど。ここがアジトかぁ。森の奥にある廃屋なんていかにもって感じだね。

 中にいる山賊は6人。わりと少ないんだなと思ったけど、人数増えてもここじゃ狭くなるだけか。

 

「クソガキがぁ!おとなしくしていればいいものを......だったら二度と解けないようにキツく縛ってやんよぉ!」

 

 伸ばされたスキンヘッドの腕をかいくぐりそのままスライディングで股下を通り抜ける。モヒカンも襲い掛かってくるがスキンヘッドの足を掴んで華麗にターンを決めて躱す。

 うん、鍛えていたのもあるけど10歳の体は軽くて動きやすいな。

 

「このガキ......!ちょこまかとすばしっこい!」

「ねえねえ、それより窓の外、見た方がいいんじゃない?」

「......あ?な、な......なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁあああ」

 

 僕の言葉につられて窓を見る一同。そこには大量の鳥が集まって中を覗き込んでいた。しかも雀などの小さな鳥ではなくフクロウ。それが密集しているのだ。恐怖以外のなにものでもない。

 さらにカタリという音に振り向けば、閉じられていたはずの入り口の扉が開いていく。

 そこから悠然と入ってきたフクロウは僕の肩にフワリと着地した。

 

「シエル、やっちゃって」 

 

 僕の声に応じて嘶くと、扉から大量のフクロウがなだれ込んできて山賊たちを襲う。

 完全に油断していたのか武器を持っている者はおらず、必死に素手で抵抗しようとしているが効果は無い。

 僕が片手を挙げると肩のシエルが再び嘶いて攻撃が止む。さすがフクロウのリーダーだ。しっかり統率が取れている。

 

「さて、わかってくれたかな?この子達は僕の大事な仲間でね。これ以上僕に危害が加わるとどうなっても知らないよ?」 


 実際のところ、フクロウの中でテイムしているのはリーダーのシエルだけだ。

 元々リーダーは他の個体だったのだが、僕がテイムしてから成りあがったようだ。やはりテイムされた側は知能が上がっている説は濃厚だ。


「......クソっ!いったいなんだってんだ!」

「安易な考えで仕事を受けるからだよ。考えてもみなよ。たとえ僕を売ろうが殺そうが君たちに未来はあるのかい?伯爵にとって妾の子とはいえ、我が子を売り飛ばしたなんて事実があっては困る。それを知っている君たちを生かしておくとでも?」

「そ、そんな......」

「......ハナから用が済んだら俺たちを消すつもりだったってのか。なるほど、それなら前払いなんて気前が良かったのも頷ける。俺たちを殺して取り返せばいいんだからな」

「そういうこと。どうせ仕事が終わってからパーッと使おうと思ってたんでしょ?」

「......その通りだ。で、おめえは一体何もんだ?ただのガキじゃねえ。それに伯爵との仕事を知ってるのは伯爵自身と俺たちだけのはずだ」

「ふふ、僕には隠し事は出来ないよ。あ、でも安心して。伯爵が僕を追放したのは事実だから」

 

 実際は攫われた時に頭から袋被せられたけどずっとブランと共有してたから見聞きしてたんだよね。視覚と聴覚の同時共有が可能なことは伯爵家にいた時に実証済みだ。僕自身のことを無視してブランに意識を集中すれば出来た。

 この山賊さんたちときたら、誰も聞いてないと油断しまくってアレコレとペラペラ話してくれたんだ。

 まったく。壁にミミあり障子にメアリー天井裏にロザリーって言葉を知らないのか?あれ、違ったっけ?

 

「......冗談だろ?こんな化け物を世に解き放つなんて正気か?」

「化け物なんてひどいなぁ。ただの10歳児なのに。ま、伯爵は何も知らないしね。話したことすら数回程度だし?」

「それで、俺たちをどうする気だ?」

「そうだね......君たち次第かなぁ。盗賊だか山賊だか知らないけどなんでこんなことやってるの?」

「......ここにいるのは皆、街からはじき出された奴らだ。皆普通に暮らしていただけなのに!貴族や奴らと仲のいい奴の反感を買っちまって居場所がなくなったんだ!他の街へ行っても同じだ!だからこんなとこで暮らすしかねえ!屈辱的だろうと!俺たちを追い出した奴に尻尾振って生きるしかねえんだ!」

「......もし、悪事を働かずに笑って暮らせるとしたら?」

「そんなの何度も夢見てきた!高望みはしねえ!ただ普通に笑って暮らせればって......。でもそんなこと出来るわけねえんだっ!」

 

 スキンヘッドの悲痛な叫びが響きわたる。他の者も気持ちは同じなのだろう。一様に俯いて、震えている者もいる。

 

「......僕はね、伯爵が遊びで母さんに手を出して生まれたんだ。妾の子、それだけの理由で10年間伯爵家の離れで軟禁されて生きてきた。そんで母さんが死んだ途端に追放してさらには山賊に売り飛ばされた。笑えるだろ?......だから僕は、身分も種族も関係なく笑える世界を作るんだ」

「......おめえには同情するが、そんなこと出来るわけねえ。そんな俺たちの理想の世界なんざ」

「関係ないよ。無理だとか出来っこないとか、そんなの他人が勝手に決めつけてるだけだ。大事なのは、僕がやると決めた。ただそれだけ。誰にも邪魔はさせないよ」

 

 瞳に強い決意を宿して見つめ返す。

 出来るか出来ないかなんて考えるだけ無駄だ。ただ為すべきことを為すために突き進むだけだ。

 

「勝手に決めつけてるだけ......私は......」

 

 言葉を発したのは、部屋の隅に座ってずっと黙っていた人物。ここにいる中で唯一の女性だった。

 ここにいる人たちは皆何かを諦めてしまったんだ。思い当たることもあるのだろう。

 

「そんなことが出来るなら、そりゃ俺たちだって諦めたくねえけどよ......」

「もちろん僕ひとりじゃ厳しいから君たちにも手伝ってほしい。ツラい経験をした君たちの力が必要なんだ」

「俺たちが......必要?」

「こんな俺の力が......?」

「まぁ、とは言っても急な話だしすぐには信じられないと思う。......だから、見せてあげるよ。変革の序章ってやつをね」

 

 僕は子供っぽく、ニッコリと笑ってみせた。



拠点ゲットだぜ☆

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