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16.




「あの、それで......私は何をすればいいんですか?」

「基本的には好きな物作ってくれればいいよ。売りたい物があればルートも用意するし......あ、その前に量産体制整えたほうがいいかな。ちなみに今僕が考えているのは、子供たちが遊びながら言葉や数字を学べる物でね。こう、木の板か何かで——」


 僕が想定しているのはトランプやかるたといった物だ。さすがに紙で作る技術は無いから木だけどね。それを孤児院で使いつつ改良して、実際に販売していけたらいいなと思っている。


「すごい......!そんなものを思いつくなんて!」

「まぁ僕は手先が器用じゃないしデザインのセンスとかもないから自分では作れなくてさ。ちょうどそういう人を探してたんだよね」


 別に自分で発明したわけじゃないけどまぁいいだろう。使えるものはどんどん活用していくべきだ。


「お役に立てるように頑張ります......!」

「無理はしないでね。急いでるわけじゃないし疲れたら休めばいいから。あと住む所は今手配中だから、とりあえずはさっき取ったこの宿の部屋使って」

「え、そんな!この部屋の隅っこにでも置いてもらえれば大丈夫です!」

「言ったでしょ?衣食住は保障するって。これからもっと仲間も増えるからね。遠慮は禁物だよ」

「は、はい......」


 不当に扱われるのに慣れてしまうとその生活が当たり前になってしまうからね、まずはそこを直していかないと。この子だって将来、職人たちをまとめるようになるかもしれないしね。楽しみだ。

 孤児院のほうも手を入れていきたいところだけど......。具体的には広さとか設備とか。しかし建築系の知識なんかあるわけないし、ヘタに頼んで手抜き工事をされてはたまらない。難しいところだ。......よし、そのあたりはジェニーにぶん投げる(任せる)としよう!たしか、何でも言ってくれって言ってた気がするし、なんとかしてくれるはずだ。

 そのためにも、まずはお金が必要だな。問題はどうやって稼ぐかだ。賊がそのへんにリポップしてくれれば狩り放題なんだけどなぁ。仕方ない、別の方法で行くか。





   *   *   *



「この先にいるんだね?」

「......のう、主。やっぱりやめておかぬか?」

「ここまで来て何を言っているのさ。いやぁ、でもさすがルナだね。()()()()の知り合いがいるだなんて」

「出来れば関わりとうないんじゃがのう......。主にお願いされるとどうにも断れんのじゃ」

 

 何故僕らがこんな山奥にいるのかというと、話は簡単だ。ギルドの依頼掲示板を眺めていたら、公爵からの依頼で『ドラゴンの鱗と涙の採取』というものがあった。そこで公爵本人に直接聞いてみたところ、伝説とも言われているドラゴンの涙は特に貴族の中では価値が高く、ほぼ全財産を対価に求めている者までいるのだとか。そんなものを欲しがる貴族なんてロクでもないので、そこから搾り取ってお金を有効活用しよう!という計画だ。依頼自体はランク制限で受けることは出来ないけど、貴族に直接売る分には問題ないだろうしね!

 ルナを少し煽ってみたところ、あっさりと知り合いにいるという情報を得たのでやって来たというわけだ。ヒッポグリフのサボに乗って来たんだけど、途中で何かに怯えていたからそこからは歩きだ。サボが反応しているということはこの先にそれだけの何かがいるということだ。

 

「何奴だ」


 突如として大きな声が響いた。僕らを覆った影に顔を上げてみれば、そこには巨大な物体——まぎれもなくドラゴンがホバリングしながらゆっくりと降りてくるところだった。


「おお!本物だ!ルナ!本物のドラゴンだよ!」

「ええい、少しは落ち着かんか!」

「その魔力、もしや妖狐か?ククッ......堕ちたものだ。まさかそのような姿で人間の子供になぞ仕えているとは」

「フッ、貴様なんぞには分かるまい。主の偉大さは」

「ほう......ならば試してくれるわ!」


 いうが早いか、巨大なドラゴンの口からブレスが放たれて僕らに迫った。突然のことすぎて動くことすら出来ずに炎が僕らを焼き付くそうとしたその時、ブレスが()()()。代わりに僕の前に広がっているのは、巨大化したアニフィの姿。これって......。


「アニフィ!もしかして、ブレスも収納できちゃうのかい!」


 驚いて問いかける僕に、元の大きさに戻って触手で丸を作って答えるアニフィ。なんてことだ。まさかスライムにまだこんな可能性が眠っていただなんて......!これがあれば僕にも夢の魔法が使えるじゃないか!

 

「キュウ!キュッ!キュウ!」

「なんと......ブレスにも動じないとは。それほどまでに眷属を信用しておるのか?それに、グリュークまでも従えておるとは、こやつ......本当に人間か?」

「フッ、妾がただの人間に仕えるわけがなかろう。主は特別なのじゃ!」

「......よかろう、興味が湧いた。余も連れていくがよい。いい暇つぶしになりそうだ」


 あれ?なんかドラゴンが仲間になりたそうにこちらを見ている?動じないって言うか反応出来ないだけだったんだけど?そもそも涙と鱗さえ貰えればそれで良かったんだけど......。妖狐もドラゴンもチョロすぎない?

 地面に降りてきたドラゴンの巨大な顔を撫でる。うわぁ、すごくゴツゴツしてるなぁ。それに間近で見ると迫力が増してカッコいい!


「——っ!?......名前はエリィだよ。よろしくね!」

「ほう、これがテイムか。悪くない感覚だ」


 ドラゴンの強大な力が入ってきて僕の体を衝撃が襲うが、ルナの時ほどではなかった。僕の体も慣れつつあるのだろう。


「あ、僕たちドラゴンの涙と鱗が欲しいんだけど」

「そんなものを欲しがるとは人間とは奇妙なものよのう。その程度、いくらでも持っていくがよい」


 太っ腹だなぁ。というか涙はともかく、鱗を好きなだけって無くなっちゃうじゃないか。再生でもするのかな。

 涙と鱗を回収すると、ドラゴンは光を放ちルナと同じように人へと変化した。銀髪ツインテールで、僕やルナと同じくらいの歳の見た目だ。

 

 仲間も増えて、なんだかとんでもない勢力が出来つつある気もするけどまぁいいよね。敵対して争うよりはずっといい。これでお金の目途もたったし、やれることも増える。ふふふ、楽しみだなぁ。



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