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15.



「うぅーん......」


 朝日が差し込む部屋で、ルナをモフりながら寝ているとなにやら頬をぺちぺちと叩かれた。なんだ......?昨夜は忙しかったからまだ寝足りないんだけど......。

 仕方なく重い瞼を開けると、頬を叩いていたのはアニフィの触手だった。震えているということは通信が入っているということか。


「......はーい」


 つい覇気のない声が出てしまうが、今日くらいは許してほしい。


「あ、ライ様。おはようございます。昨日はありがとうございました。朝起きて驚きましたわ。あんなに分かりやすくまとめていただいたなんて」

「あー、うん。一応新しい表も作っておいたから、今後はそれを使うといいよ。それと、今日は仕事しないでゆっくり休むこと。ジェニーの代わりはいないんだから」

「本当にありがとうございます。どうお礼をすればいいのか......」

「お礼......あー、じゃぁ空いてる物件があれば用意してほしいかな。出来れば孤児院の近くで」

「空き物件ですか。かしこまりました、すぐ手配いたしますわ」

「明日以降でいいよ。僕もまだ寝るから。じゃ、そういうことで」


 ジェニーの返事を待たずに通話を終了する。そして再びモフモフを抱きしめながら眠りにつくのであった。

 




 次に目が覚めた時、太陽がすでに高く上った昼過ぎだった。久しぶりにこんな寝たなぁ。ま、こんな日があってもいいよね。前世では土日であろうと出勤させられる日もあって自由に使える時間というのがほとんど無かったけれど、今は違う。好きな時に好きなことが出来るのだ。


「ルナ、今日はちょっとお出かけするよ」

「ん?どこへいくのじゃ?」

「ちょっと人助けに、ね」



 2人でやって来たのはシュヴェールの中でもあまり人通りがない、工房が集まっている区画だ。職人たちが己の技術を磨き、よりよい物を作ろうと努力している場所——のはずだ。

 その中にある1件の工房。そこには工房区画に似合わない小さな影があった。


「オラ!何度言ったら分かるんだ!もっと数を作れって言ってんだろ!品質なんて落としたって構わねえんだよ!そのほうがすぐに新しい物買いに来るだろうが!」

「す、すみません、すみません......」

「言う通りに働かねえとクビにすんぞ!ここ追い出されたら行くとこなんてねぇくせに」

 

「——へぇ、じゃぁクビにすれば?ウチで引き取るよ」

「誰だ!テメェは!」

「我らはスウィーパー。よりよい世界を作る者なり」

「何わけの分からねぇことを......変なお面まで付けやがって!とっとと失せねぇとただじゃおかねぇぞ!」


 大柄なオッサンが凄んでくるけど別に怖くないんだよなぁ。まだウルスのほうが怖いんじゃないかな。


「そっちの子、いらないんなら僕が引き取るよ。才能があるのにそれを潰すなんて許されないよ」

「ハッ!こいつに才能だァ?そんなものあるわけねぇだろうが!だからこうやってウチで働かせてやってんだ」

「それは嘘だね。事実、その子が作った物でここの工房は成り立っているじゃないか。あんた自身は何も作っちゃいない」

「な、なにを......」

「まぁ、あんたのことはどうでもいいんだ。そっちのキミはどうしたい?このままここにいても使い潰されるだけだよ。僕と来ればもっといろんなものを作れるよ」

「何を勝手なことを——」

「黙れ。自分のことしか考えてないくせに。質を落としたらすぐに駄目になって、また同じ場所で買おうなんて思わないでしょ。それよりしっかりと良い物を作った方が、店の信用も上がって新規のお客さんも増えるから最終的に売り上げは上がるんだ。それをしないこの工房に未来はない」

「テメェ......!好き勝手言いやがって!覚悟しやがれ!」


 顔を真っ赤にしたオッサンが殴りかかってくるが、その拳が僕に当たる前にオッサンは地面に転がっていた。僕がどうにかする前に、隣のルナがあっさりと返り討ちにしてしまったのだ。


「ふん、(あるじ)に手を出そうなんて愚かな奴じゃ。身の程を知るがよい」

「ルナ、そのへんでいいよ。ちなみにさ、コレ、何か分かるかな?」

「......なっ、それは......っ」


 あの子さえ来てくれれば工房は放っておこうかと思ったけど仕方ないね。僕が取り出した物を見てオッサンは一気に顔を青ざめさせた。


「へー、分かるんだ。お察しの通り、これは公爵家の短剣。つまり僕は公爵家の遣いでもあるんだよ。それに手を出せばどうなるか......分かるよね?」

「ぁ......ゆ、許してくれ......」

「ダメだね。この工房はこれからの世界にはあってはならないモノだ。よりによって子供を食い物にするなんて絶対に許さない。というわけでここは閉鎖になるから、僕のとこおいでよ」

「......わ、わたしなんかが」

「なんか、じゃないよ。キミの才能が必要なんだ。僕にも、この世界にも。だから力を貸してほしい。もちろん衣食住は保障するし、きちんとお給料も払うよ」

「お、お給料までもらえるんですか!?」

「当然だよ。労働にはきちんと対価を払わないと。僕と来てくれるかい?」

「い、行きます!......必要だなんて、初めて言われました」

「僕はライ。これからよろしくね」

「わ、わたしはメーヴェって言います!よろしくお願いします!」


 よーし、これで計画が進むぞー!僕自身はそういったセンスが無いからね。困ったときは人に頼るに限るね!


 


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