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14.


「あ、今の僕の名前は『ライ』だから気をつけてね」

「分かったわ。まぁ私たちは主様って呼んでるから問題ないでしょうけど」

「他の人はそう呼ぶから覚えておいてねってことだよ。さて、これから忙しくなるから覚悟しておいてね」

「......俺、子供なんて初めてだから不安なんだけど」

「僕も子供なんだけど?まぁルナたちも遊んでくれるし、一緒に遊びながら危ないことをしないように見ていてくれればいいよ」

「主様と一緒にされる子供がかわいそうね......まぁ分かったわ」


 2人を連れて孤児院を訪れると、大歓迎だった。まぁ遊び相手が増えるのは嬉しいだろうしね。


 「とりあえず、ハーゼは子供の相手、シーニュはプリエの仕事手伝ってあげてね」

 「(プルプル)」

 「ん?着信か。じゃ、よろしく〜」


 震えているアニフィを連れてその場を離れる。アニフィは分裂個体から通信が入ると震えて教えてくれるのだ。人前でいきなり声が聞こえるのは困るしすごい能力だよ。まるで携帯電話だ。ただし誰がかけてきたのかまでは分からないけど。


「はーい」

「あ、繋がりましたわ。助けてくださいまし!」


 かけてきたのはジェニーのようだが、なにやら切羽詰まったような声である。


「どうしたの?」

「どうもこうも......書類の内容がちんぷんかんぷんで現状すらさっぱりですわ!どなたかこういうのに詳しいお知り合いはおりませんの?」

「うーん、知り合いと言われても......いや、僕が見るよ。どれだい?」

「......これなんですけれど」


 僕の知り合いなんて賊しかいないんだよね。テイム効果で知能も上がっているはずなんだけど、そんな風には見えない。そもそもの教養が無いからか、人には効果無いのかは分からないけど。

 小鳥を室内に入れてジェニーの手元を覗き見る。それは何枚もの紙を束ねた物だった。ジェニーに捲ってもらいつつ1枚ずつ確認していくが、鳥視線だとどうにも見づらい。


「ふむ......税金の出納帳のようだけど、かなり偽装されてるね」

「分かるのですか!?」

「まぁなんとなくだけどね。でもこれはなんとかしないとマズいなぁ」


 さすがにまだ子供のジェニーには早いだろうが、前世で経験のある僕にはパッと見でも支出が合わないということが分かる。これを王家に提出するつもりだったのかな?

 

「よし、今夜僕が直接行って確認するよ」

「......え!直接来られるのですか!?」

「うん、いつもの部屋に行くから、書くもの用意しておいてね。よろしく~」


 直接見なきゃ分からないところもあるし、ジェニーには話したいこともあるから丁度いいや。





 


 「へー。さすが公爵邸。大っきいなぁ」


 共有(リンク)では見たことはあるが、実際に見るとまた違う。門番がいないのは僕が来るからジェニーが人払いしてくれたのかな。

 屋敷をグルっと1周してみるが誰もいない。そしてジェニーの部屋へと窓から侵入する。


「よっと。おっ邪魔しまーす」

「ああ、よく来てくださいました!ようやくお会いすることが出来ましたわ!あらためまして、ジェニー・シュヴェーレンと申します」

「ああ、うん。僕はライ。よろしくね」

「まさか本当に子供だとは......。私よりも幼いですわ」

「ま、外見が全てじゃないってことだよ」


 今の僕はお面を付けていない。ジェニー相手には意味が無いだろうし、素顔で接するべきだと思ったからだ。よりよい世界をつくる同士だしね。

 

「わざわざご足労いただき申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします」

「構わないさ。困ったときに人を頼ることは大事だよ。1人で悩んでもどうにもならない時はあるからね。それよりも、ジェニー。ちゃんと寝ないとダメだよ」

「うっ......その、やることがありすぎて......」


 ジェニーの目の下には濃い隅がクッキリと現れている。公爵を懲らしめたあの日からロクに寝ていないのだろう。これは僕の責任でもあるなぁ。


「責任感があるのはいいけど、寝不足は集中力も落ちて逆に効率が悪くなるよ。今日の所は僕に任せてちゃんと寝ること。執務室借りるよ」


 アニフィに書類を回収して貰って部屋を出る。まだ13歳なのに隅が出来るほどの苦労をするとはこの先の人生が心配になってしまう。公爵夫人は既に亡くなっているらしいから自分が全部やらなきゃと使命感で抱え込んでいるのだろう。

 しかし廊下も良く分からない絵画や美術品で溢れてるなぁ。この辺売れば多少は回収できるかな。まっすぐ執務室へ向かうが、ここも仕事をする部屋とは思えない。ため息をつきながら机の上を軽く片付けて作業を始める。

 まずはぐちゃぐちゃの書類の中身を整理しないと......。新しい紙に表を作って収入と支出を書き込んでいく。訳の分からない名目の支出もあるし書いてるだけで頭が痛くなってくる。こういう時、パソコンがあればなぁ......なんて思ってしまう。


 途中、宿に置いてきたルナから「まだ帰ってこないのか!」と文句があったりもしたが、夜中になってようやく作業が一段落した。こんなんで王家もよく放置していたものだ。公爵がアレだし、そのうち王家のほうも調べてみる必要がありそうだなぁ。

 とりあえず帰ってルナをモフりながら寝よう。ルナも寂しがっているだろうし、疲れた体がモフモフを求めているのだ......!

 

 

 


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