表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/64

13.



「あ、のじゃだー!」

「違うよ!るなだよ!」

「そうじゃ!いかにも妾がルナであるぞ!」

「今日は何してあそぶー?」

「これ、引っ張るでない!」


 来訪と同時にルナにまとわりつく子供たち。ルナも最初こそ渋っていたが、今ではすっかり馴染んで相手をしている。なんとも微笑ましい光景だ。

 ブランや、意外にもアニフィも子供たちに人気だった。触手を操って縄跳びみたいにしたり木からぶら下げてブランコまで出来る。ホントに器用だなぁ。


「いつもありがとうございます。子供たちの相手をしていただいて助かってます」

「いや、こちらからお願いしたことだしね。それにルナも楽しんでいる」


 僕たちが来ているのは領都シュヴェールの片隅にある孤児院だ。

 孤児院があるというウルスたちの話を思い出して探してみたのだが、まぁ酷い有様だった。建物はボロボロで、中には5人の子供とシスターのような恰好をした大人が1人いたが全員が見るからにやせ細って元気が無かった。

 本来なら公営の施設であり公爵家が管理しているはずだが、あのクズ公爵ときたらその資金すらも使い込んでいたらしい。僕はすぐさま眷属たちと出かけて果実や魔物を狩ってきた。さすがに捌くのは無理なのでジェニーにお願いして職人に処理と調理をしてもらった。ついでに領主代行として手紙を書いてもらい、使者として孤児院に乗り込んだのだ。 

 アニフィから次々と食べ物が出てきてテーブルを埋め尽くす様子に一同は唖然としていたが、お腹は素直なようでグゥ~という音が一同のお腹から鳴りだす。

 好きに食べていいよと許可を出すと子供たちは一斉に飛びついた。唯一の大人であるシスターは遠慮していたが、領主代行からのお詫びだと告げると涙を流しながら食べ始めた。

 ジェニーも直接来たがったが、さすがにやることが多すぎて身動きが取れないので僕が来たのだ。ついでにここの経営に関しても許可をも貰っているので好き放題出来る。プリエと名乗ったシスターによると、一応孤児院出身の子たちが差し入れてくれてはいるようだが、そこまで稼げているわけでもなく本人たちの生活も危ういらしい。本当ならまだまだ受け入れるべき子供がいるが、そんな余裕もなく独自に生きている子や無茶をして命を落とした子もいるそうだ。そりゃやりきれないよな......。

 

 しかしこれ以上の犠牲は出させない。今ここにいる子たちは5~10歳程度。まさにこの子たちが未来をつくるのだ。放っておくことなど出来ない。

 子供たちは数日かけてようやく遊ぶ元気を取り戻したが、これからが大事だ。

 元凶となった公爵は公には病気療養と発表されている。まぁ孤児院の件でもお仕置きしておいたし、屋敷の奥で震えていることだろう。そして領主代行としてジェニーが立っている。その若さゆえに民の中には不安がる声もあったが、公爵が酷すぎたし実際に街の様子を見に来ていることを知っている者もいるのでこれから次第だろう。




 

「プリエ、他にここで働けそうな知り合いはいない?もちろん相応の賃金は払うよ」

「知り合い、ですか......。その、孤児院はあまり良くないイメージが強いので......」

「そうか、無理もないな。分かった、その辺はこちらでなんとかするよ」


 ここもジェニーのほうも人手が足りない。街に人はたくさんいるのだ。だが貴族や孤児院と関わろうという人が極端に少ない。しかもこちらから信用出来るというのも条件だから難しい。......仕方ない。宿へ帰ってからアニフィを使って連絡を取る。


「こちらラモール。聞こえるかい?」

「おお、(あるじ)様か。聞こえるぞ、久しぶりだな!」


 ウルスのデカい声が響く。もっと声量抑えてくれないかな。宿の人に怪しまれるじゃないか。


「仕事だ。シーニュと......ハーゼの2人は公爵領の領都に来て欲しい」

「あら、ご指名?嬉しいわぁ」

「......俺たち2人だけ?なにをするんだ?」

「ちょっと孤児院の経営を手伝ってほしいんだよね」

「孤児院?私たちが?......そもそも私たちじゃ街には入れないわよ」

「ああ、それなら問題ないよ。公爵とは話ついてるから、入れるようにしておくよ」


 まぁ正確には公爵令嬢だけど。ついでに言うとまだ話はしてないけどスウィーパーの仲間だって言えば大丈夫でしょ。


「おいおい、もう公爵をぶちのめしたのか?いくらなんでも早くねえか?」

「ぶちのめしたなんてウルスは物騒だなぁ。ちょっと()()しただけだよ。今は屋敷の奥で引きこもってるから実質的には公爵令嬢が街を取り仕切っているんだよね」

「公爵が引きこもり......?一体何を......いや、知らないほうがいい気がする」

「聞くのも恐ろしいわね。それで、いつ行けばいいのかしら?」

「ん?今夜だよ。サボに乗ればすぐでしょ?他の人たちは引き続き伯爵領と街道の監視、よろしくね」

「わぁったよ。お前ら、頑張れよ」


 女性のシーニュと背の低いハーゼなら子供たちも馴染みやすいだろう。他のは(おも)に人相がおっかないからダメだ。

 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ