九話 サイズとマダムに唐揚げを食べさせました
九話 サイズとマダムに唐揚げを食べさせました
要は料理の手本を見せて、能にスマホで撮影をさせた。これで動画を見て覚えられるだろう。
能はいつものおちゃらけた感じがなく、真面目に無言で撮影している。利己的な能も人の役に立とうとしているのが要には嬉しかった。
唐揚げを盛り付けてエスパーダ達が待つテーブルに持っていく。
「おいしそうですね」
真っ先に声を上げたのはマダムだった。当然、彼女に注目が集まる。
「おいしそうな物をおいしそうと言って何が悪いの?」
そうエスパーダに向かって言う。
「誰も悪いなんて言ってませんから」
気を遣ってエスパーダが言うが許してくれない。
「ご飯も用意します。エスパーダ」
要はマダムからエスパーダを引き離すために呼んだ。エスパーダは自室へ赴き、食器を持ち出す。要はそれを受け取り、炊飯器のもとへ。よそってマダムとサイズの前に置く。
「とりあえず二人で食べてください。食器は二つしかないようなので」
「なぜ二人分しかないの?」
マダムはまたエスパーダを非難する。
「こんなに人が訪ねて来るなんて想定外です。しかもご飯まで出すなんて」
エスパーダも機嫌が悪くなった。マダムに責められてるのもあるが、単純に自分が後回しにされた事が大きいと要は思う。
「仕方ないわね。サイズ、先にいただきましょう」
「うん」
二人は同じように茶碗を持ち、同じように箸を持ち、同じように唐揚げを箸でつかみ、同じように一口で頬張った。
「んまい!」
二人は同じ言葉を発し、ご飯をかきこんだ。