表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地球調査員としての一月  作者: 馬之群
7/16

阻まれた復讐

「何てことを…。」

「嗚呼、やはりお前もオレと同じだったのか。まさか璃々朱ちゃんまで同じだとは思わなかったけどね。」

芝は学生の頭を踏みつけながら言った。


「もう止めろ!」

俺は芝に銃口を向けた。芝はまだ笑っている。

「止めるなよ。オレがどんな目に遭わされたかを思えば、このくらいどうってことないだろう?お誂え向きに、復讐を果たせる力も手に入れた。オレは捕まる前に全員に復讐しないといけない。どいてくれ。」


「そうはいかない。俺は中学の時、お前を助けてやれなかった。今はもう見て見ぬふりはしない。その力は俺の妹のものだ。返してくれ。今ならまだ引き返せる。」

芝は俺に拳を突き出してきた。耳元で空を切る音が響く。

「嫌だね。今更身勝手すぎるよ。もう引き返したってオレの居場所はどこにもないんだ。せめて復讐くらい見逃してもらわないと割に合わない。」


俺は足元の学生を巻き込まないように注意しながら、芝の攻撃を躱し続ける。徐々に威力が増しているようだ。

「気持ちは分かる。でも、このままだとお前は後悔する。」

「五月蠅い!」


俺の手元の銃を目掛けて放たれた蹴りは、直前で失速した。芝は毒々しい紫に変色した足を押さえて呻いている。俺は銃口を芝に向けているアルテミスの方を見た。アルテミスは呻く芝に一切動揺せず、まだ芝を狙っている。


「邪魔するな!」

背後で芝が立ち上がる気配がする。アルテミスの指は引き金を引こうとしている。俺は咄嗟に芝に覆い被さった。


パーン。


銃声が響いた。弾丸は俺の前の壁に当たったようだ。

「…どいて。」

「待ってくれ。芝は混乱しているだけだ。突然自分の身体が妙なことになったら、誰だってそうなる。俺が説得するから、銃を納めてくれ。」

「馬鹿なこと言わないで!これが彼の本性だよ。放っておけば全てを破壊するだけ。そんな奴のために血を流す必要はない。さっさと片を付けて帰ろう。これ以上は時間の無駄だ。」


芝は弾丸が足に当たっただけでも苦痛に呻いている。そして、妙な力の気配は一向に消えていない。この銃で力を全て消してしまったら、深刻な後遺症が残るだろう。それは駄目だ。


「じゃあ、今から証明するよ。」

俺は銃口を自分の方に向け、銃身を持って、銃の握りを芝に差し出した。アルテミスが銃を構える音が聞こえる。


芝は銃を受け取った。手が震えている。大丈夫だ。芝には撃てない。

「…。」

心臓がバクバクいっている。汗が止まらない。膝が笑いそうだ。俺が緊張の限界に差し掛かった時、芝はフッと笑って、銃を投げ捨てた。静寂の中を金属音が響く。


「お前、本当に信じられないくらいの馬鹿だな。」

芝の声に、俺の緊張は一気に緩んだ。

「オレが撃ったらどうするつもりだったんだ?」

「お前は撃たないと分かっていたからさ。」


「あーあ、オレの負けだ。警察に突き出すなり、銃で撃ち殺すなり、好きにしてくれ。」

アルテミスは銃を納めた。芝に歩み寄ると、いきなり手を掴んだ。一分ほど経っただろうか、芝はばたりと床に倒れた。もう妙な気配はなかった。


「彼の言う通りだ。キミは大馬鹿者だよ。」

「心配してくれたの?アルテミス?」

妹は盛大に舌打ちした。

「キミが殺されてもボクは黙って見ているつもりでいた。ボクを当てにするのはお門違いだ。」

芝の名前の由来は、インドの神、破壊神シヴァ様です。彼は人間の道を踏み外しきれず、踏みとどまってしまって破壊の限りを尽くせませんでしたが。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ