協力
「どうして地球を調査しに来たんだ?侵略が目的か?」
「それはまだ分からない。ボクのいた…星は地球と似た惑星だった。美しい星だったが、資源を狙う宇宙人に侵略され、ボクたちは別の星に避難した。でも、年々人口が減っていて、もう絶滅の危機に瀕している。そこで、地球人が高い知性と勇気と思いやりを持っているなら協力を求めて…星を奪還しようと思っている。」
俺は不安になった。地球人は彼らの眼鏡に適うだけの種族なのだろうか。
「もし、協力に値しないと判断したら?」
「…その時は、地球人を排除してボクたちがこの星に住んで、…星を奪還する策を練るよ。」
俺はヤバいことをしてしまったかもしれない。いや、大丈夫だ。俺が地球人は信頼に足ると証明すれば何の問題もない。
「協力するにあたって、星の名前と君の名前を知りたいんだけど、良いかな?」
「んー、キミたちの記憶を覗いた感じ、どうにも訳しようがないけど…。」
「だったら、俺が名前を付けて良いかな?」
俺は名前を考えた。もう現実逃避したかったこともある。
「星は『アスタリスク』で良いかな。君の名前は…。白い光が月光みたいだったから、『アルテミス』とかどう?月と狩りの女神だよ。」
璃々朱は頬を赤らめた。しおらしい態度をしていると、我が妹ながら可愛い。
「悪くない。」
「じゃあ、これから宜しく、アルテミス。」
俺はアルテミスを助手席に乗せ、車を運転して実家に帰った。大きな家が近付くにつれ、俺の心は重くなった。こんなに帰りが遅くなったのだ、何も言われないはずがない。
案の定、帰るや否や俺は璃々朱の母親に平手打ちされた。
「こんな時間まで璃々朱を連れ出して!どういうつもり?」
「すみません。帰りに少しトラブルがあって…。」
璃々朱の母親には俺の声が届いていないようだった。彼女は璃々朱を抱き寄せ、その頭を撫でながら言った。
「可哀想に、璃々朱。大丈夫だった?怪我はない?」
「え…うん。」
演技なのか本心なのか、妹は酷く戸惑っているようだった。俺は黙って自分の部屋に行こうとした。
「待ちなさい。お前を璃々朱に近付けたのがそもそもの間違いだったわ。あいつの子どもですもの。いつかこうなると思ったわよ。私の璃々朱に二度と近付かないで!出て行きなさい!」
璃々朱の母親はヒステリックに叫んだ。俺は黙って部屋に戻った。暫くして、璃々朱も俺の部屋に入ってきた。
「何、あの地球人?地球の慣習に疎いボクでも異常に見えるんだが。」
「い、いや、あれは…。ただ心配しただけだろう。娘に何かあったかもしれないと思えば、多少おかしくもなるさ。」
何であんな女を庇わないといけないんだ。でも、アルテミスが地球人に悪い印象を抱く方が困る。前途多難だが、上手くいくのだろうか。
アルテミスは璃々朱の記憶を持っているため、ある程度地球のことを把握できています。ただ、実際に璃々朱の母親を目の前にすると、流石に驚きが隠せないようです。