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地球調査員としての一月  作者: 馬之群
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そもそもの始まり

事の発端は1ヶ月前のことだった。俺は8歳年の離れた妹がバレー部の練習試合があると言うので、車で送り届け、練習試合も無事に終わったので一緒に帰っていた。因みに妹は13歳で、俺は21歳だ。


「大活躍だったな、璃々朱(りりす)。」

「ご褒美に何か奢ってくれる?」

「そうだなあ。アイスくらいなら買おうか?」


俺はコンビニに向かい、妹に言われるがままに、チョコミントのアイスを奢った。まあ、丁度バイト代も入ったからいいか。

「お兄ちゃん、ありがとう。」

「おお。出世払い宜しくな。」


その後も俺が車を走らせ、車通りの少ない田舎道に差し掛かった。

「ねえ、あれ何?」

「ん?」

俺は妹が指す方を見た。空に白い光が浮いている。俺達が訝しんでいると、その光は俺達の方に落下してきた。


「キャーッ!」

「うわあ!」

俺は咄嗟にハンドルを切ったが、その光は俺の車に激突し、俺は意識を失った。そして、目覚めた時、何故か俺も妹も無傷で、車も壊れていなかった。


「璃々朱!」

俺は妹の肩を叩いて呼び掛けたが、何の反応もなかった。身体が妙にぐにゃりとしている。俺は最悪の事態を想像して頭が真っ白になった。


「あちゃー、一匹殺しちゃったよ。マズいなあ。」

妙に耳障りな声がする方を見てみると、そこには柔らかな白い光を放つ謎の物体が漂っていた。俺は異様な事態と謎の物体に何らかの関係があるとみて恐る恐る声を掛けた。


「…誰だ?」

「ボクの…が聞こえるの?身体を治した時に…星の…が混ざっちゃったのかな?」

どうやら意思疎通は計れそうだ。俺は妹をそいつから遠ざけようと妹の前に移動した。

「いやあ、ごめんごめん。ボクは…星から来た…というものだ。地球の調査をするために来たんだけど、少々事故を起こしてしまってね。」


「宇宙人、ということか?俺達をどうするつもりだ?」

白い光はふわふわと漂い続けている。

「キミたちをどうこうしようというつもりはなかったんだ。少なくとも現段階では。本当は地球を調査して…星からの指示を待って、地球人に対する対応を決めなければならなかったからね。キミはどうにか生き返らせることができたから大丈夫だと思うけど、この地球人は死んでしまった。報告したら怒られるよ。」


「どうにかして妹も生き返らせることができないか?頼む。」

俺は頭を下げた。

「ボクだってそうしたいよ。キミよりこの個体の方が損傷が激しかった。助けるにはボクが数週間同化しないといけないし、そうしたらボクはその間調査ができなくなる。その方が怒られそうだ。」


俺は蒼ざめた。俺より妹の傷が深かったのは、俺が咄嗟に自分を庇うようにハンドルを切ったからだ。俺が殺したようなものだ。

「じゃあ、もういい?ボクは…星に報告しないと。」

光がふわふわと遠ざかりそうになるのを見て、俺は慌てて叫んだ。


「待ってくれ!妹と同化して救ってくれ。その間の地球の調査は俺が可能な限り手伝う。」

「手伝う?駄目だよ。地球人が地球人に不利な報告をするはずがないから、調査員はボクじゃないと。」

俺は妹に触れた。まだ温かい。急いでこの宇宙人を説得すれば間に合うはずだ。


「俺は妹を人質に取られているようなものだ。絶対に裏切らない。信じてくれ。」

白い光は黙って上下している。

「まあ、いいか。裏切ったらすぐ分かるからね。」

白い光はふらふらと璃々朱の胸元に入っていった。次の瞬間、璃々朱は目を開けた。大きな二重の目も、小さくて可愛らしい唇も、俺の記憶にある妹の姿と何ら変わりがない。


「璃々朱。」

「ボクは璃々朱じゃないけど。宜しくね、お兄ちゃん。」

璃々朱は邪魔そうに茶髪を払って微笑んだ。俺は複雑な思いだった。

『…』部分は日本語に対応する概念や音声が存在しないため、翻訳が上手くいっていない部分です。主人公の耳にはノイズとしてのみ聞こえています。星の名前やなどがこれに当たります。

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