地球への帰還
俺は不覚にも涙腺が緩むのを感じた。暫くして、宇宙船目掛けて、様々な色の光の珠が押し寄せてきた。
「申し訳ありませんでした、英邁なる地球人よ。我らの非礼は如何に詫びようとも償えないものですが、どうか寛大なる御心でもって、我らを赦し、…のためにお力添え願えますよう。」
「俺の方こそ、皆さんを騙そうとしたのに、かえって恐縮です。早速の不躾な質問で申し訳ありませんが、今後地球をどうなさるおつもりですか?」
「これから地球全体に協力を呼び掛け、じっくり友好関係を築いていこうと思っております。万が一、我らが歓迎されない場合には、潔く帰ります。間違っても地球に害を及ぼすことは御座いませんので、ご安心を。」
俺はホッとして力が抜け、椅子に倒れかかった。
「これは気が利かず失礼致しました。さぞお疲れでしょう。ひとまず、貴方様を地球へお送りしましょう。我々は後日改めて、失礼のないように地球へ伺います。」
「はい。ありがとうございます。」
光は来た時と同じように去っていった。後には俺と白い光だけが残された。
「ずっとキミを騙していたこと、怨んでいる?」
俺は微笑んだ。
「それを言うならお互い様じゃないか。俺も悪かったよ。それに、アスタリスクのためだったんだろう?俺も故郷のために何でもしたいという気持ちは分かるからさ。気にしていないよ。さっきは庇ってくれてありがとう。」
「ううん。こちらこそキミには助けられてばかりだよ。ありがとう。本当にごめんね。」
アルテミスと話をしていると、あっという間に地球に戻ってきた。泣きじゃくっている璃々朱が見える。
「ただいま。」
「もう!心配したんだから!お兄ちゃんのバカ!」
璃々朱は俺に抱き付いてきた。俺は璃々朱の頭を撫でる。
「ごめんな。もうどこにも行かないから。」
「良かった。…私もお兄ちゃんを騙しちゃってごめんね。」
「良いんだ。もう全部終わったから。」
庭の花々がこんなにも鮮やかで美しいなんて知らなかった。星々の輝きも、空気の美味しさも、生まれてからずっとそこにあったのに、初めて気付いたようだった。アルテミスは俺の耳元に飛んできて、俺だけに聞こえるように囁いた。
「初めて会った地球人がキミで本当に良かった。キミは生きる価値がない人間なんかじゃないよ。生まれてきてくれてありがとう、太陽。」
それは俺が22歳になって初めて言われた、祝福の言葉だった。
このくらいの長さの小説が、一番書いていて楽しいかもしれません。読む分にはどうか分かりませんが。もし最後まで、或いは一部でも目を通して頂けたら光栄です。ありがとうございました。