種明かし
地球からここまで飛んできたのか。これは予想外だった。俺は爆発前に爆弾を回収してセットし直されたら困ると思い、しらを切ることにした。どうせすぐ爆発するし、これは地球人だけを破壊するらしいから、アルテミスはきっと無事だろう。
「何の話?」
アルテミスはせわしなく狭い船内を飛び回っている。早く爆発してくれ。
「分かったぞ。キミ、爆弾を呑んだな?」
気付かれた。俺は逃げようとしたが、アルテミスが俺の腹部から体内に入ろうとするのを止められなかった。俺の見る前で、アルテミスは俺の身体を貫通し、爆弾も一緒に弾き出された。終わった。やはり俺にはヒーローになる資格などなかったのだ。
「全く無茶をする。爆発まで後一秒もなかったぞ。このまま地球に戻る。今度こそ大人しくしてくれ。」
俺はアルテミスに縋りついた。
「まだチャンスをくれないか?確かに君たちと比べると、地球人は愚かで醜い種族かもしれない。でも、中には賢くて勇敢で優しい、役に立つ人々もいるんだ。皆が俺みたいに生きる価値がないわけじゃない。璃々朱のように優秀な人材も、俺みたいなゴミも一緒にまとめて消し去ってしまうのか?」
宇宙船はまだ動いていない。もしかしたら、まだ望みがあるのかもしれない。
「君を騙した分際で、こんなことを言う資格がないのは分かっている。でも、どうか…。せめて一部の人間だけでも、慈悲を…。」
もう胸が詰まって言葉が出てこなかった。
「もう止めだ!十分でしょう!」
アルテミスは声を荒げた。
「彼を騙して反応を観察して、地球人というものの本性は全てご覧になったと思いますが?これ以上の観察が必要でしょうか?」
俺は戸惑った。全てアスタリスクの人々に見られていた?俺が裏切ったことも、そのくせ都合よくアルテミスを丸め込もうと、身勝手なことを言って醜態を晒したことも、全て筒抜けだった?もう駄目だ。絶望だ。俺のせいで…。
「わざと彼とその妹を殺害、及び脅迫して、最後は母星を破壊すると伝えてその反応を見るという、非人道的な行為を行った我々と、そんな我らさえも思いがけない方法で、自らの命を投げ打ってでも人類を救おうとする彼では、どちらの方が機知に富み、勇敢で、慈悲深いと言えるでしょうか?我らは彼らに対して陳謝し、首を垂れ、謙虚な姿勢で対等なパートナーとして、協力を希うべき立場にあるのではありませんか?」
俺はハッと顔を上げた。アルテミスは毅然とした態度で言葉を継いだ。
「ここで高潔な魂に対して敬意を表せない者は、…星に生まれた誇りさえ失った卑劣な臆病者であると言わざるを得ません!どうぞ皆様!誇り高い…人としてあるべき態度をお示し下さいますよう!」
アスタリスクの所業があまりに悪辣で赦し難いように思えますが、種族の命運がかかっていたら、間違いなく人類はもっと非情になれることでしょう。最初から侵略しなかっただけまともだと思うしかありません。