宇宙への旅立ち
「行こう。」
「先に乗って。」
璃々朱は蒼い顔をしている。確かに未知の物体に乗り込むのは怖いだろう。俺は先に入っていった。中は椅子が2つあるばかりで、動力も何も見当たらない。試しに椅子に座ってみたが、身体に合わせてジャストフィットする、弾力のある素材でできている椅子だということ以外、特に気になることはない。
「大丈夫だよ。」
俺は中から璃々朱に呼び掛けた。璃々朱はアルテミスと何やら話している。
「ごめん、お兄ちゃん。私、やっぱり行けない。」
「璃々朱?」
俺は外に出ようとしたが、目の前で扉が閉まった。
「本当に、良いの?」
アルテミスが言った。璃々朱は泣きながら、俺の方を向いて微笑んだ。
「…さようなら。」
「璃々朱!」
その時、宇宙船がぐらりと揺れた。俺は璃々朱の姿がどんどん遠ざかるのを眺めるしかなかった。
「どうして、地球に残ろうと思ったの?」
アルテミスが璃々朱に言った。璃々朱は涙に濡れた瞳で、宇宙ガラスを見つめながら言った。
「お母さんを置いていけないもの。」
「どうして事前に相談しなかった?」
「お兄ちゃんも地球に残るって言い出すから。やっとお母さんと私から解放されたんだもの、自由に生きてもらいたかった。」
璃々朱は宇宙船が見えなくなると、家の中に戻った。そして、体中の力が抜けて、ただ椅子に座って焦点の合わない目をしている母親の手を握った。
「その行為に何の意味があるんだ?」
「分からない。」
アルテミスはおかしな機械を設置し始めた。モニターに立体的なグラフのようなものが映っている。
「箱に異常はないな。」
アルテミスはしばらく家をふらつくと、再び戻ってきて璃々朱に告げた。
「そろそろあの宇宙船も安全な場所に行っただろう。時間だ。」
「分かった。」
アルテミスは妙な音と光を発した。起爆コードだ。そして、モニターを見つめる。
「妙だな。箱が起爆を認識しない。センサーは壊れていないようだが…。」
アルテミスはしばらく機械を弄っていた。璃々朱は不思議そうにアルテミスを見ている。
「センサーは正常、起爆コードも合っている、こちらの機械も問題なし。となると、爆弾が箱の中にない?まさか。だとしたら、一体どこに…。」
一瞬、アルテミスの光が弱まった。
「まさか…。」
これで主人公だけが生き残ったとしたら、絶対に精神を病んでしまうと思います。璃々朱の気持ちも分からなくはありませんが、一言相談すべきです。かく言う作者も言い出せないと思いますが。