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小さな妖精に転生しました  作者: fe
三章 スタンピード
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083. 尊厳

 素晴らしい、彼は正に英雄だ。王都に押し寄せたスタンピードは今のところ、ダスターさんと魔術師団長殿の活躍でなんとか対応できています。


「んぞおおおおあああああああああッ!!」

ズドォン!!



 辺境のスタンピード対策でギルドマスターを含めた多くの冒険者が王都を離れている間、サブマスターである私が留守を預かると言っても、本来は通常業務を淡々とこなすだけの予定でした。


 それがまさか、こちらでもスタンピードが発生して、少ない人員で対応しなければならなくなるとは。絶望的な状況でしたが、妖精様の采配により光明が見えてきました。妖精様が特に懇意にしていたダスターさんには、やはり特別な力が与えられていたのです!


「ぬらぼおおおおおおおおおおおおおッ!!」

ズドォン!!



 ここまでは全てが上手く回っていて、スタンピードも最早残り1/4をきったところでしょうか。しかし、まだオークキングが残っています。魔術師団長殿はまだまだ大丈夫そうですね。


 ダスターさんの状況を確認したいところですが、彼は最前線に居るためここからでは声が届きにくいでしょう。誰かに確認させるにも、1人だけ次元の違う戦闘を繰り広げているため、近づける者がなかなかいません。


「くぁっぺええええええええええええッ!!」

ズドォン!!



「ふぅ……」

ゴクリゴクリ


「のぅ、サブマス殿」

「なんでしょう?」


 魔術師団長殿が魔力回復ポーションを飲みながら話しかけてきました。戦闘がこの形に落ち着いた以降に、魔術師団長殿から話しかけられるのは初めてですね。どうしたというのでしょうか。


「ワシ、ちょっと腹がたぽんたぽんなんじゃが……」


「……! どれくらいもちます?」


「……今すぐトイレに駆け込みたいくらいじゃ」


「……小さい方ですか?」


「……大きい方」


「どうして! もう少し早くおっしゃられてくださらなかったのですか!? っと、来てます! 撃ってください!」


「え……、どんぐあああああああああああああああああッ!!」

ズドォン!!


「うっ」

「……!! 衛兵!衛兵!」


 これはマズイですね。このような事態、想定していませんでした。


「ど、どうされましたか!?」

「緊急事態です! 今すぐオマルを持ってきなさい!」


「え?」

「早く! あなたのオマルに王都の未来がかかっているのですよ!」


「は? はッ! 了解しました!」



「い、いやじゃ! 人前で脱糞しながら魔術を放ち続けるなんて! 戦場でもそんな鬼畜な指示はなかったぞい!?」


「そのご意見はごもっともです。しかし、ここも戦場ですよ。貴方の尊厳と王都の人々の命、どちらを優先すべきですか? ほら、来てます!」


「畜生め! んがああああああああああああああああッ!!」

ズドォン!!


「あ」

「……!!」



「サブマス殿! 持って参りました!」

「素晴らしい! 魔術師団長殿の下に設置してください! それからあなた達! 魔術師団長殿に背を向けて並んで囲みなさい! 魔術師団長殿の尊厳を守る盾となるのです!」


「……はッ!」

「しょ、承知しました!」

「おい、いくぞ……」

「ぇ……、わかった」


「魔術師団長殿! 早く放って!」

「それはどっちを?」


「魔術をです! 次が来てますよッ!!」


「ちょ、ちょっと待ってくれんかな!? お、お、よし、どっこいしょ……」

「早くッ!」


「ええい、くそがああああああああああああああッ!!」

ズドォン!! プリッ



 ふぅ、これで当面もつでしょう。後はダスターさんがオークキングを倒してくだされば全て解決の筈です。すこしばかり臭っても贅沢は言っていられません。


「ワシの、そんげえええええええええええええええんッ!!」

ズドォン!!



 いよいよ、ダスターさんがオークキングと交戦を開始しました。そのとき、またもや予想外の出来事が発生してしまいす。いや、これは予想しておくべきでしたね。ダスターさんがキングに攻撃を仕掛けた際に、彼の剣が砕け散ってしまったのです!


「ああっ!」

「おいおい、まずいんじゃ?」


 これはマズイですね。全体に動揺が広がってしまいました。このままでは士気の低下に繋がります。幸いダスターさんにダメージなどはなく、キングの攻撃を避け続けていますが……。


「ふんぬぅううううううううううッ!!」

ズドォン!!



 なにか手は、打開策はないでしょうか。まだジェネラルも残っています。ダスターさんに他の武器を与えられれば良いのですが、生半可な武器では駄目でしょう。ジェネラルでさえダスターさん以外では刃が通らなかったのです。キングはさらに硬いと予想されます。これまでは妖精様の布石でなんとかなってきましたが……。


「らんぞおおおおおおおおおおおおいッ!!」

ズドォン!!



 妖精様? 彼女は他に何か残しているかもしれませんね。何か、何か……。できれば非常に切れ味の良い武器があれば良いのですが……。まさか? いや、妖精様の(おこな)いに全て意味があったとすれば……。非常に切れ味の良い武器、ありましたね。


「魔術師団長殿、魔術使用を殲滅目的から牽制に変更です! ジェネラルの動きを止めることに専念してください! それから皆さん! 残ったハイオークの殲滅戦を開始! ジェネラルの動きに注意しつつ事前説明どおり1体に対して5人以上で対応してください! 私は少し離れます」


「りょうかいじゃああああああああああッ!!」

ズドォン!!


 急げ急げ、アレはギルマス部屋に保管していた筈。誰か足の速い者に取りに行かせたいのはやまやまですが、緊急時と言えど部外者にギルマス部屋を漁らせたくはありません。


 ――間に合ってくださいよ!




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― 新着の感想 ―
[一言] 西洋の中世騎士だって一度甲冑を着込めば脱ぐまでは垂れ流しだったのでセーフ 洗うのは騎士見習いがやったのでさらにセーフ
[良い点] すぐアレ思い当たって即時殲滅目的から牽制に変更させて自分が行くべきだと走り出せる受付さんぐう有能。この短期間での成長も感じますね……!
[良い点] 「どっちを?」 「もう両方で良いです」 [一言] これが噂の、「臭い仲」ってやつですか?
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