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小さな妖精に転生しました  作者: fe
三章 スタンピード
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055. 鳥

 人形騒動の後、私はいつものように街に出た。


 河はすっかり元通りだ。水位も安定して大きな船も行き交っている。だからかな、街がどんどん活気づいてる気がするよ。私はいつものごとく、露店などを巡りながら中央広場を目指す。


 広場まで行くと何やら人だかりができていた。なんだなんだ、音楽も聞こえてくるね。あ、吟遊詩人だ。たぶん間違いない。ギターみたいな楽器を弾きながら何か歌っている。もしかしたら吟遊詩人じゃなくて弾き語り歌手かもしれないけど。


 いや、やっぱり吟遊詩人だね。声の音程や強弱が歌って感じじゃなくて、セリフって感じだ。



 私が広場に近づくと、気付いた人たちが「わーっ」と盛り上がる。むむ、いつもより熱狂的に迎えられてる? 吟遊兄さんの音楽や語りも熱を帯びてきた。まぁ、何言ってるか分かんないんだけど。


 なんだかクライマックスかサビみたいな状況のようなので、私はキラキラエフェクトを振りまいてあげた。場が盛り上がる! みんなニッコニコだ、良いことした!


 そして歌が終わると吟遊兄さんが私に挨拶してきた。私も手を振ってあげる。それで終わり、次に行こう。と思っていたのだけど、何やら周りはワイワイしてるし、吟遊兄さんも何やらいっぱい言ってくる。私が首をかしげるとなんだか必死さが増した。


 あー、この反応はあれだ。おじリーダーだ。つまり妖精が頷けば中年男性が喜ぶ学説が、実は中年男性だけでなく青年男性まで適用されるという画期的発見、私は頷いた。吟遊兄さんは喜んだ! はいチョロ~、やはり学説は定説なのだ!


 そして吟遊兄さんは紙を取り出してなにやら書き始める……。3枚くらい書いてるね。その勢い、すごいです。そして書き終わった紙を私に渡してきた。え、どうしろと?


 私は一応、もらった紙を広げて確認してみる。やっぱり文字だ。そしてやっぱり読めない。うーん、でもここで突き返したり捨てたりしたら、印象最悪だろうなぁ。もらっておこうか。私が紙を筒状に丸めて持っていく素振りをすると、吟遊兄さんはまた喜んだ。


 その後も吟遊兄さんの演奏は続いて、広場でひとしきり遊んでいると気づけば夕方だった。そろそろ帰らないと、鳥籠メイドさんは私が帰るまでずっと部屋で待ってるんだよねぇ。帰るか。



 そうして王城に向けて帰宅中、私は悪意みたいなものが飛んでいるのを感じた。


 ぬぬ、悪意みたいなものを空に感じるのは初めてだよ!? もしかして飛行する魔物か? マップを出して位置を確認する。


 うん? 離れていってるね……。放置でも良さそうだけど何か気になる。追いかけてみるか。私はマップの赤点を追った。



 お、鳥だ。魔物かな? いや、何か変だ。悪意みたいなものが偏ってる……。あれか、足に何か巻き付いてるね。なんだあれ? くそ、鳥速いな。追いつけない訳じゃないけど……、えぇい、眠れ! 私は鳥に向けて魔法を放った。


 眠って落ちていく鳥に近づいて、浮かして止める。これでよく観察できるよ。うん、やっぱり足に何か巻き付いている。小さな筒だ。悪意みたいなものは筒の中から感じるね。


 筒を開けて中身を確認してみると、なんか紙切れが入っていた。広げてみる。うーん、これは文字、手紙? でも手紙にしては悪意マシマシなんだよねぇ。はっ! もしかして呪いのお札とかか!? でも鳥を呪って何になるんだろう? よく分からないけど、呪いのお札は焼却だ。そうすると筒の中身が空っぽになるワケで……、何か入れといた方が良いかな?


 私は吟遊兄さんからもらった紙を入れた。どうせ私には読めないのだ。よし、解決! これで安心してお城に帰れるね! ほら、鳥! 起きて! 私は眠りの魔法を解除する。鳥が慌てて飛んでいった。よしよし。



 お城に戻って部屋を覗いてみる。


 ――いた。やっぱり視線を感じる。


 うーん、あの人形なんとかならないかなぁ。私は人形のところまで飛んでいく。私が帰ったことに気付いた鳥籠メイドさんが、夕食の準備に出ていった。



 この視線が怖いんだよね。でもまぁ、誰か一緒にいるときはまだ耐えられそう。2人きりが怖いのだ。魔力も何も感じないから動きだしたりしないことは理解しているんだけど、その理解を超越したホラー感があるのだ。


 異世界転生したのに異界の異物が紛れ込んだみたいなこの違和感。異世界ファンタジー小説かと思って読んでみたら異界ホラー小説だったみたいなこの憤り……。


 でもまぁ、要は私1人のときに見えなければ良いのだ。部屋に私以外に誰もいないとき、この人形が見えなくなるようにステルス機能を付けよう。誰かが部屋に入ってきたらステルス解除、これでみんなは人形を見て楽しめるし、私も1人で人形から見られなくてすむ。


 私は果樹まで飛んで、光る石を1個ゲットして部屋に戻る。人形に仕込んでちょちょいのちょい。よし、消えた!


 鳥籠メイドさんが夕食を持って戻ってくる。夜のお手入れセットを持った見習いメイドちゃんも一緒だ。2人が部屋のドアを開けたと同時、人形のステルスが切れて現れた! よっし、成功~!



 さって、今日の夕食は何かな~?



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― 新着の感想 ―
[一言] 消える人形とかますますホラー寄りに傾いちゃいましたね そのうち誰も触ってないのに置き場所がズレるようになるんですね
[良い点] 手紙の差し替えとか! またやらかしやがったこいつ 大混乱必至のやつじゃないかこれ
[一言] だんだんとピタゴラスイッチのからくりが出来てる感じがしてワクワクしますね。
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