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小さな妖精に転生しました  作者: fe
二章 2つの満月
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050. よし無罪

 あー、夜だなー。星空がキレー。

 どうしてどんちゃん騒ぎの帰りの夜って、ナイーブになるんだろうね?


 空を見ると満月に近い月が2つ、でもまだ満月じゃない。きっと今日見た河の逆流は、満月になった方が激しくなる筈だ。たぶん逆流はまだ数日続くんだと思う。


 私は河を見る。真っ暗だけど、星空を反射して水面がたぷたぷしているのが分かる。その水位はめちゃくちゃ高い。濁った水でも星空を反射するんだなぁ……。


 もう1度空を見る。天の川だ。天の川銀河じゃないんだろうから、天の川と呼んで良いのかは分からない。1つ分かるのは、この星も銀河の中にあるってことだね。キレイだなー、満天の星空。



 あー、帰ったら怒られるかなー? ガキンチョには叱られろとか思っちゃったけど、なんというブーメラン。今度は私が叱られる立場かも。


 いや、まだそうと決まったワケじゃないよね。出て行って欲しくなさそうだったけど、出て行っちゃダメだったのかはまだ分からない。仮に出て行っちゃダメだったとしても、今日の私は子どもを1人助けたのだ。チャラにならないかな。ドレスだってちゃんと修復してあるし、うん……、むしろこれは表彰モノでは? 褒められるのでは?



 いや、まだ分からない。あのとき鳥籠メイドさんは結構必死そうだった。必死な不思議な踊り、迫真の踊りだった。思い返すと目とかクワッてなってたような気もしてくる。クチも開いてたかもしれない、仁王像の阿のごとく。般若までは行ってなかったと思う、たぶん。



 あれ、やばくない? 出ていって欲しくなかったってことは、あの後も私に予定を入れられていた可能性がある。そして私はその予定をブッチしたのだ。


 ぐぬぬ、これは何かご機嫌取りをしといた方が良いよね。何か……、バカの1つ覚えみたいだけど、果物取って来ようかな。人間サイズのがなってると良いんだけど……。


 でも待てよ、この前植えた果樹の場所はお城の中だ。人通りが少ない位置を選んだとは言え、渡り廊下みたいなところからバッチリ見えるのだ。見つかってないハズがない。


 お城の中にあるモノと言えば、王様のモノだ。もう普通に王家の食卓に並んでいて、今更わざわざ持って行ったところで「あ、それいつも食べてるヤツ」とか言われたらどうしよう。まぁ、言われても何言ってるか分からないんだけども。


 うーん、うーん。いやいや、やっぱり無いよりはあった方が良い。誠意の問題だよ。「いつも食べてるヤツだけど、わざわざ持って来たのなら許してしんぜよう」という展開になるかもしれないし。


 私は果樹のところまで飛んだ。



 えー、1つしか果物なってないや……。小さいのは相変わらずいっぱいなってるんだけど、人間サイズのが1つしかない。組織に迷惑をかけて手土産が1つしかない場合……、それを持っていくのは直属の上司か、はたまた組織のトップか……。


 この場合はトップだ。つまり王様だ、フラッシュ様だ。フラッシュ様に果物を渡せば、「ほっほっほ。皆の者、この者無罪! 閉廷!!」となる可能性が高い。王様が言えば異議ありとは言われないだろう。鶴の一声だ。おでこのごとく、ツルツルだ。


 さらに、きっとこの果物はすごく美味しい。あの冒険者も夢中で食べていたのだ。逆に褒められるかもしれない。ようするに「ほっほっほ。素晴らしい献上品であった、褒美を取らそう!」といった展開も夢ではないかもしれない。テンション上がってきた!



 私は意気揚々とロイヤルなフラッシュ様を探す……、いた! なんか読んでる。もう夜だし、仕事も終わって趣味の読書とかに違いない。仕事中にお邪魔するのはアレだけど、休憩中なら行っても問題ないでしょ。私は壁を抜けてフラッシュ様の部屋にお邪魔する。


 フラッシュ様がこちらに気付いて何か言いかけたけど、先手必勝! 怒られる前にクチに果物を突っ込んだ! どうです? 美味しいでしょう? 美味しいと言え! 私は無罪を主張する!


 ……どうだ? お! 美味しそうに食べ始めた! よし、無罪! これで安心だ!




 そうして私は自分の部屋に戻った。


 鳥籠メイドさんが鳥籠の前で、椅子に座って寝ている……。もしかしてずっと私を待ってたのかな? うわー、すごい罪悪感だよ! なんかないかな、私の罪悪感を取っ払ってくれる素敵アイテムは!?


 あ! そう言えば果樹の周りに光ってる石がいくつか生えてたよね! あの石使えるんじゃないかな? よしよし、よしよし。私はもう1度果樹まで飛んで、光っている石を回収、回収……、かったいな!この石!! くそ、くらえ! よしよし。


 それで、この石をこうして……、こうだ! ふふふ、これできっと「まぁステキ! さすが妖精さん!」となるに違いない。あー、良かった。



 私はまた部屋に戻り、作ったばかりのネックレスを鳥籠メイドさんに掛けてあげた。ついでに毛布も掛けてあげる。全身透過して着せられていたドレスをストンとテーブルに落とし、鳥籠の前に畳まれて置いてあった自分の服を着る。


 ドレスはどうしとこうか、こんなふわふわマックスの服、畳み方わからないよ。そのまま置いておいたらシワになるよね? ちっちゃいトルソーでも作って掛けとくか。よし、就寝!



 いやー、今日は色々あったけど、終わってみれば万事オッケーだったね!


 終わりよければ全てヨシ! なんてね。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 鳥籠メイドちゃんに国宝級のゴッズアイテムが送られましたね 物理攻撃無効、魔法攻撃無効、状態異常無効、常時回復、成長限界突破、当たりの効果があるとみた トルソーというアイデアを齎しちゃった…
[良い点] 鳥籠さんの口から心臓飛び出てティンティン転がる次回が楽しみですわ。 おでこはふさふさにはしないのねアイデンティティーなくなるから仕方ないか。
[良い点] 一気に読みました。テンポがよくて面白いです。 人間の中で、鳥籠メイドさんが1番好きなので(妖精さんのために1番色々してるの彼女だから)なんか報われそうで嬉しい。 [一言] 続きも楽しみにし…
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