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小さな妖精に転生しました  作者: fe
二章 2つの満月
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048. ガキンチョ

 あっぶなー! もうちょっと遅かったらこの子死んでたよ!


 私はずぶ濡れの子どもと自分を乾かし、子どもの傷を回復させてやる。死んでなければ全快まで治せるのだ。もう心配いらないね。




 ドレスの着せ替えをさせられていたとき、凄い音がするもんだから外に出てみると、なんと水が凄い勢いで逆流してきていた。空を見ると月が2つともほぼ満月になっている。


 月1つの地球でも月の満ち欠けの影響は結構大きかったらしいから、月2つのこの世界だとそりゃもう、凄い影響が出てしまうんだろう。河からは潮の匂いがプンプン漂ってきている。河下を見ても海なんて見えないのに、そんな遠くの海からここまで海水が逆流してきたのか……。



 いやー、心配でまず秘密基地に来て良かったよ。子どもが流されてるのを見たときは心臓が止まるかと思ったね。私はもう1度地図を出して、他に流されている人がいないか確認した。うん、大丈夫そうだ。



 この地図にも助けられたね。流された子どもが見えなくなったとき、この地図の青点表示がなければ見失った後、もう1度見つけることはできなかったかもしれない。


 それに、お風呂で泳ぐ練習をしていて良かった、マジで。練習していなかったら追いつけないどころか、こんな荒波の中泳げなかっただろうし、そもそも自分が泳げるとか潜れるとかの発想が出てこなかったかもしれない。お風呂様々だね!




 あ、この子、3兄弟の兄くんか。どうせ秘密基地にいて流されたんだろう。ガキンチョまじ恐ろしいな。地元の子だから大丈夫だろうとか思ってたけど、全然そんなことなかったわ。これは説教コースだよ?


 岸の大人たちに手を振っていたガキンチョ兄くんが、こっちを向いて笑いかけてくる。うーん……、殴りたい、その笑顔。まぁ今はしゃーなしか、私も笑い返してやった。おーおー、嬉しいねぇ。




 そうして私はガキンチョを岸まで運んでやる。着いた途端に走り出した。元気だなガキンチョ、さっきまで流されてたってのに。そうして弟くんと抱き合った。弟くん泣いてんじゃん、心配かけんじゃないよホント。


 んで、次に父親かな? に駆け寄って抱き合って、そしてガキンチョは父親カッコ仮に殴られた。



 ひゅー! だよねだよね、もっと叱ってやってくださいな! ガキンチョも周りをよく見ろ。こんなに大人が集まってきてんだよ。めっちゃ迷惑かけたんだって。



 それを見た弟くんがなにやら止めに入って、何かを父親カッコ仮に差し出してきた。するとカッコ仮も何やら神妙な顔になる。周りの何人かも何やら押し黙った。


 なんだアレ? あ、あー、アレは3兄弟の1番下の弟くんが私に見せてきたヤツだ。なんかめっちゃ大切そうにしてたし、大事なモノだったんだろう。そうか……、兄くんは弟くんの大切なモノを秘密基地まで回収に来て流されたってことかな? 私はちょっと涙がちょちょぎれた。怒るに怒れない系の話じゃん……。


 まったくもう。そんな大事なモノ、なんでこんなとこに置いてんだか……。




 そうしていると、今度は私が取り囲まれた。なにやら笑顔で捲し立てられる。まぁ、珍しい妖精さんでもあるし、なんてったって私は今しがたガキンチョを助けたばかりだ。つまりヒーロー! ひゅー! 崇めても良いのよ!?


 その後私はみんなに連れられて、酒場みたいなところで飲めや歌えやの大騒ぎに参加した。大人たちは交替で参加しているようだ。まだ仕事が残ってるのかもしれないね、悪いことをしたかもしれない。でも楽しい!




 気づけばもう、辺りは真っ暗だった。


 やっべ、ドレス着たままだったわ。



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― 新着の感想 ―
[一言] そういや月が二つの異世界とかその辺言及されるの珍しいな
[良い点] 今は気にされてないけど妖精さんのドレスに着目する余裕が出てきた時に面白いことになるんじゃ 妖精様のお召し物を捧げることを許されたスーパー針子さんに注目が集まること疑いなし やはり恩を受け…
[一言] とりかごさんの報告書より ドレス泥水まみれ磯の香り付き。 廃棄または研究資料、商用ギルドへの売り渡しの判断求む。
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