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小さな妖精に転生しました  作者: fe
二章 2つの満月
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034. 冒険者ギルド内部

 リンゴサイズだけど、見た目は1粒だけのマスカットのような緑の謎果物を浮かせて冒険者ギルドに向かう。


 河の水はまた増えていて、前よりも少し大きめの船が荷物を満載にして行き交っていた。無理すれば数十人乗れそうなサイズだ。ただ、荷下ろし場までは来れないようで、荷物の積み降ろしで小さな船が船着き場と中くらいの船の間を行ったり来たりしている。大きな船は未だ係留されたままだった。


 ふと気づくと、街並みの窓際に置かれている鉢植えに花が咲いている。街に来たときは咲いてなかったよね、雨期に咲く花なのかなぁ。




 冒険者ギルドに入ると、前回はあんなに人がごった返していたのに、今はほとんど人がいなかった。受付の人がクチをパクパクしながらこちらを見ている。なに? この果物が欲しいのかな? でも残念、これはお肉交換用なのだ。



 お、さっそく私は獲物を見つけた。飲食コーナーで飲んだくれてる冒険者の前にお肉発見。さっそく交渉してみる。そのお肉とこの果物、交換してくださいな。


 冒険者の前で果物を指さし、次にお肉を指さす。指をクルクルまわして交換をアピール、伝わったか?


 ……伝わってないか。私はもう1度、今度は両腕をクルクルまわして交換をアピール、ダメか。うーん、これと、これ、交換、わかる? ワタシ、ソレ、タベル、アナタ、コレ、タベル、ハッピー、オーケー?


 ぬぅ……。なんかだんだん面倒になってきたな。お肉は目の前にあるのにマテ状態の犬の気分だ。私は確かに王家のペットだけど、あんたのペットではないぞ。



 冒険者がクチを開いたので果物を突っ込んでやった。ほら、美味しいでしょう? 美味しいと言え。あ、美味しかったのは小さい方か。大きい方はどうなんだろう、もしかして不味かったかな……。


 ちょっと心配したけど、冒険者は夢中で果物を食べ始めた。ほら、やっぱり美味しかったでしょう。私は安心してお肉を頂くことにした。


 お肉を切り分けるのにステーキ用ナイフである必要はない。このサイズで人間サイズの食べ物を食べるには、色々と固定観念を捨てた方が食べやすいことに私は薄々気づき始めている。


 めちゃくちゃ切れ味の良い私サイズの剣を作ってスパッとお肉を細切れにする。それをめちゃくちゃよく刺さる小さい槍で突いて串焼き肉状態にした。ハフハフ、中はまだ温かい、うまー! 前回と同じくやっぱり薄味で胡椒とかスパイスは利いていないけど、ほんのり塩味が良い感じだね。



 いくら私が食い意地はってると言っても、人間の冒険者向け特大塊肉を全部食べられるわけがない。なにせこのお肉、私より体積がでかい。全部食べてしまったら私の体はぽっこりするどころじゃないからね。良い感じにお腹も膨れたし、ここまでにしておこう。ごちそうさまです。




 さて、改めて冒険者ギルドを見て回ろう。今いる飲食コーナーは2階が吹き抜けになっていて、一部ロフトみたいな構造で2階席がある。受付カウンター側は吹き抜けになっておらず、そちらはそちらで別の階段がある。ロフトの2階席には3階への階段がないから、3階には受付カウンター側の階段からしか行けないんだろう。


 受付カウンターには銀行窓口みたいな応対場所が3箇所、その横に広めの応対場所が1つ。広めのところが買い取りカウンターってヤツかもしれないね。入り口とは反対側の壁際には依頼票らしき紙が貼り付けられた掲示板。依頼票を見てみたけど文字ばかりで理解できなかった。挿絵でもあれば色々想像できたんだけどなぁ、残念。


 む、この掲示板真ん中で割れてるね。裏側から板が打ち付けられ補修されている。さすが冒険者ギルド、短気な冒険者がキレて壊したのかもしれない。こわ。


 依頼票の掲示板の横には開け放たれた扉があって、行ってみると中庭みたいなところに出た。端に木剣とか置いてある。なるほど、訓練スペースだね。


 もう1度ギルド内に戻って、今度は受付カウンター横の階段を上がる。とそのとき、受付の人が階段をふさいだ。両手を広げて通せんぼしている。ふむ、行っちゃダメ? ホントに? どうしても? そっかー。


 私は諦めて中庭に出た。そしてそのまま2階へすり抜ける。諦めたのは階段から上ることだけだ。ふははは。


 2階は飲食コーナー側が吹き抜けになっているからやっぱり狭い。デスクが6個置かれていて、書類に埋もれて書類整理している人が数人……。こっちを見ている。いぇーい、ぴーすぴーす。


 2階は面白みないな……。そのまま3階へ。3階は廊下があってドアが並んでいる。商談スペースとかだろうか? 商談スペースにお客さんを上げるのに、内部事情ダダ洩れしそうな2階の事務スペースを素通りさせるの? なんか違和感あるけど、飲食コーナーの吹き抜けが悪影響して、そうせざるを得ないのかもしれないね。


 なんか1番奥に1個だけちょっと立派なドアがある、入ってみよ。


 おわ、筋肉オバケだ! 目があった。おわ、こっち来る!


 私は捕まえられるかもしれないと思い距離をとった。そうすると筋肉オバケはその場で立ち止まり、何やら話しかけてくる。ふんふん、なるほど? 全然わかりません。いいや、4階に行こう。わ、付いて来る! こわ。なんか必死さがすごい。圧倒されそうだ。


 怖くなった私は壁を抜けて冒険者ギルドを後にした。冒険者ギルドはもう良いかな……。ちょっと遠くにでかい尖がり屋根が見える。今度はあっちに行ってみよう。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 妖精ちゃんがさすがにコミュニケーション取る気がなさすぎて怖い
[良い点] 果実を食った冒険者は近い将来世界最高のレジェンド冒険者に認定されるんじゃないかな とりあえずギルドを巡回コースにするように取引したいギルマスであった ノーコストの回復装置ゲットしたい
[一言] 冒険者ギルドは災難としか言いようがないなぁ… 敵国のスパイもしっかり根付いてるし、災害のような世妖精も来るし…… 妖精の果実を食わされた冒険者さんはきっと拉致監禁からの検体コースだろうなぁ。…
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