312. 有力情報
ってなワケで南東の森の縁まで来たんだけど……、なんか思ってたのと違う。ここまで来る間に私が期待してたカントリーな集落なんて全然なくて、どこもまとまった町を壁で囲んでドンって感じばかりだった。
目の前の森の近くにある町なんて、町の大きさに対して街壁が立派すぎる。小さめの町は木製の柵だったりしたけど、ここの町壁はまるで砦じゃん。私のド田舎観光ツアーはいったいどこへ……。
ここまで来たら嫌でも理解できる。たぶんこの国にカントリーなポツポツ集落なんてないんだろうなって。だってそんな無防備な集落作ったらそっこう魔物にヤられちゃうだろうし。
仕方ない。せっかくここまで来たからこの町に入ってみよう。
中は小さめの城塞都市っぽくてこれはこれで良い雰囲気だもんね。暗くてよく見えないけど、円形に近い石壁の中に100から200くらいの家が建ってて、中央にはちょっと立派な建物がある。家の造りは王都とそんな変わらないかな。お、冒険者ギルドもちゃんとあるね。
畑とかは町壁の外にあるけど、畑仕事中に魔物が来たらどうすんだろ。急いで町に逃げ込むのかな?
でも失敗したなぁ。白虹に太陽が隠れてずっと薄暗いから観光どころじゃないぞ。ほとんどなんにも見えないって。王都でも夜は灯が少なくて真っ暗なのに、この町ってば街灯とか1つもないじゃん。家の窓からもれる灯でかろうじて見える程度だよ。明るいときに来たかったなぁ。
そんなこと言ってても仕方ないか。明るくなったらまた来ればいいんだ。
とりあえず冒険者ギルドは見つけたからそこで情報収集してみようかな。でも初めて王都の冒険者ギルドに行ったときみたいに大騒ぎになるのはイヤだから、半透明状態でね。半透明になると眠くなるけどしょうがないのだ。
ギルドの壁をすり抜けて中に入り天井付近に隠れる。だけど人がほとんどいない。石壁は立派でもやっぱり地方都市だから人が少ないっぽいね。多めに見積もって家が200軒あるとして、そこに多くて6人住んでたとしたら、人口は1200人くらい? あってるかわからないけど、多くても2000人くらいしかいないんじゃないかなぁ。
ふぁぁ、ねむい。
お酒とおつまみを乗せたテーブルを囲んで話し込んでる冒険者が数人いる。食器のカチャカチャ音が良い感じに眠気をさそってくるよ……。このまま無限に寝れそう。
いや、ここで寝ちゃダメだ。とりあえずあの冒険者たちの話を聞いてみよう。私は半透明状態で見つからないように、天井からそうっとテーブル下へ移動した。
「その森の洞窟な、帝国が中にお宝を隠したって噂だ」
「どうせXXだろ。お宝なんて話がXXXXXXXときに真っ先に追加されるXXXXXXじゃねぇか」
「でも王家が冒険者ギルドXX、その洞窟のXXXXを禁止したXXXXXX。もう塞いだから開けるなっXX」
「マジか? XXXXしたらお宝が冒険者に見つかXXXまうから?」
「ああ、それは俺も聞いXXXXXな。でも俺は、お宝なんてXXXXXXX、XXXXXXXの上位種を閉じ込めたって聞いたぞ? なんでも去年XXXXXXXのスタンピードが起きそうになったXXXXXさ」
「うへぇ。じゃぁ今頃中はダンジョンXXXXXXXXなってXXXXXか?」
「去年? そういやXXXXXXXを狩りまくってたXXの冒険者が居たな! 体中毛むくじゃらにして帰ってきた奴!」
「ああ、居た居た!」
お、お宝……?
冒険者の言葉づかいがお城の人とちょっと違ううえに、眠くて翻訳が追いつかない。よくわからないけど、でも、森のどこかにある洞窟ダンジョンにお宝があるって?
これは有力情報だ。寝てしまう前に早く脱出して透明化を解かないと。ぐぬぬぬ……、っと!
よーし、森の洞窟ダンジョンに行ってお宝ゲットだよ!




