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小さな妖精に転生しました  作者: fe
七章 勇者と魔王
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296. イチキュッパ

 メカキングドラゴンがぶしゅーっと音を立てて着陸する。

 このメカキングドラゴンは私のモノのハズだったのに、なぜか勇者くんが操縦してたんだよね。なぜか勇者くんが言ったとおりに動くんだ。つまり音声認識操作? そんな機能つけたおぼえないんだけど?


 メカキングドラゴンがたどり着いた先には、なんか黒コートをまとったコスプレ高校生みたいな人がいた。

 そしてまわりにムニ国民たちが倒れてる。うーん、残念だけどもう死んじゃってるな……。回復させられない。


 黒コートが片手で目を覆いながらニヤリと笑ってなんかしゃべりだしてる。俺の秘められた闇の力が暴走するとか言いそうなイタイ妄想高校生っぽいよ。

 いや、闇の力は本当にあるから妄想じゃないのか。それに当然高校生でもない。つまりただのイタイ人だ。いや、人じゃなくて魔王か? この人が魔王? ホントに?


「XXXxxXXXXXXXXxx。XXXXXXXXXXXXXXxx、XXXxxXXXXXXxxx」


 立ちポーズがなかなかにウザイ。本人的にはカッコイイポーズなんだろうけど、どうすんのこの空気。


「XXXXXXXXXXXXXXxx? XXXXXxx。XXXxxXXXXXXxxx、XXXXXxxXXXxxXXXXXxxx!」


 うん、何言ってるか全然わからん。他のみんなも反応的に通じてないっぽい。つまりあの黒コートは言葉の通じない相手に延々としゃべり続けているんだね。かわいそうに。


「XXXxXXX、XXXxxXXXXXXxxx? ……なんやねん、言葉通じひんやんけ。また覚えなおしかよ。小さいオッサン共に襲われたと思たら今度はバリア付きのメカドラゴンて、明らかに世界観あってへんやろ」


 に、に、に、日本語だーっ!

 ちょっと日本人っぽい見た目だなぁとは思ってたんだよ。しかも関西弁! お笑い戦闘集団の敵はお笑いピン芸人だった!?

 えーと、とりあえず会話か。もしかすると話し合いで魔王問題を解決できるかもしれないもんね。


「もしかしてキミって日本人?」

「お!? なんや日本語通じるやん! もしかしてアンタ転生者か!? ほな俺の仲間にならへん? 一緒にこの世界に復讐しようや」


「え、やだけど?」

 なんかフランクに答えてきたけど思想ヤバない? なんだよ世界に復讐って。誰だよ話し合いで解決できるかもって言ったの。とんだサイコパスだよ。さすが魔王、さすがラスボス。世界の半分をお前にやろうってこと?


「どうせアンタも扱き使われてんやろ? ってか、アンタ何て名前?」


「教える名前などないよ」

 ふ、決まった。人生で1度は言ってみたいセリフだったんだよね。教える名前どころか本当に名前なんてないんだけど、それはまぁご愛嬌だ。


「慎重なこった。まぁ、そりゃそうやな。つまり名前の束縛をもう知ってるってことやろ。ってか、アンタ面白い体してんな」


 え? 突然のセクハラ? それに名前の束縛ってなにさ?

 なんか身振り手振りがいちいち大きいのも気になる。昭和のオーバーリアクション外国人深夜通販番組みたいだよ。ハーイ、今日ハコンナ商品ヲ紹介スルヨ~! ワー、スゴイワネ! 見た目の情報量が多いって。


「そんな魔力の塊みたいな体してたら名前の束縛すごそうやな? 俺の場合は最初勇者としてこの世界に召喚されたんや。ほんで当時の魔王を倒してぇってな。せやし俺は魔王と戦った。でも違ったんや。何やったと思う?」


 うわ、なんか急に自分語りはじまった! 雑な導入が通販商品の実例紹介っぽい。デモオ高インデショ?

 いやいや、身振り手振りで話が入ってこなかったけど、なんか重要そうな内容じゃない? 現魔王は元勇者だった?

 勇者くんが通訳しろと言ってくるけど、ちょっと待って。今大事なところなんだから。


「なんと相手は神に連なる(モン)やった。しかも倒してから気ぃ付いたんや。それで神がキレた。で、この世界の人間(ヤツら)は裏切って神に俺を差し出したんや。(ひで)ぇ話やと思わん? 突然勝手に呼び出されて名付けで逆らわれへんようにされて、言われた通り頑張ったら世界全部(ぜ~んぶ)敵になったんやで? この世界の人間なんてクソや。死んだ方がええ」


「はぁ、それは大変だったんだね。でもそれって1000年以上前の人たちにされたことだよね? それを今の人たちに押し付けるのってどうかと思うよ?」


「はぁ? 1000年……? 俺が封印されてからもう1000年以上経ってんの?」


「うん、1000年。古い文献をあさってようやく当時のことが断片的にわかるくらいしか、今の人たちはキミのこと知らないよ?」


「なおさらムカついてきたわ。1000年も経ってたら日本に帰ってもしゃーないやんけ。……おい、俺の名前は伝わってんのか?」


「魔王ガルムでしょ?」


「クソが! そこは伝わってんのかい!」


 お、本場のツッコミだ!

 でも日本からの召喚者なのに名前がガルムってどういうことだろ? 全然日本人っぽい名前じゃないけど、日本でも山田ガルムくんとかって名前だったのかな。ああ、キラキラネームってヤツ?


 いや、注目すべきとこはそこじゃない。これでこの黒コートが魔王だって確定した。コスプレ黒コート魔王だ。それでこの世界の人たちを殺そうとしている。


「まぁええわ。アンタも俺に説教してっけど他人事ちゃうねんで。俺をなんとかすっために呼ばれたんやろうけど、俺を倒してもうたらアンタも用済みで裏切られるんや。確実にな」


 えー、そうかな?

 昔の人たちはいざ知らず、今の人たちってそんなバイオレンスじゃない気がするんだけど。昔はひどかったかもしれないけど、ソレガ、今ナラナント!ってヤツだ。イチキュッパは世界を救う。


「グァ」


 とか思ってたらメカキングドラゴンが突然小さく鳴いた。

 あれあれ? 鳴くタイミングは私が指示したときか、もしくは初めてお城にきた人がお城のホールに入ったときだけだよ?

 なんか突然低空飛行で森に突っ込んだりするし、ホントに暴走してるのかも?


「ムニ、ムニムニ」

 そしてムニリーダーがムニムニ言って、それをムニ姫様が通訳してくれた。

 え? マジで?


「どうしたんや? そいつらの命乞いか?」


「んー。ムニ姫様が、ムニリーダーが、木が、メカキングドラゴンが「なんでやねん」って言ってるって言ってるって言ってるって言ってる」


「はぁ? 何言うてんねん。もしかしてアンタ、アホなんか?」


「はぁ? 誰がアホよ。んー、ようするに、このドラゴンが「なんでやねん」って言ってるってさ」


 ムニ姫がムニリーダーの言ってることをわかるのはわかる。

 でも、ムニリーダーはドラゴンの言ってることがわかるってどういうこと? 木が言ってるってなに?

 言葉のまま受け取るならドラゴンの発言をコスプレ魔王に伝えるには、木、ムニリーダー、ムニ姫さま、私の順で伝言ゲームすることになるよ。


 それにドラゴンの「なんでやねん」て何に対してよ?

 コスプレ魔王のツッコミどころの多さに対して? それとももしかして、私のイチキュッパは世界を救うって思いに対してなのかな?


「はぁ? おちょくってんのか?」


「おちょくってってなに?」


「馬鹿にしてんのかっ()ってんだよ!」


 それは私のセリフだって。

 もういいや。日本人とか現地人とか過去とか今とか人間とか魔王とか勇者とかどうでもいい。つまりコイツは悪いヤツってことだよね? それだけわかればオッケーよ。


 妖精ビーム!


「おわぁ!?」



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― 新着の感想 ―
血も涙もないか! 中二病拗らせてるっぽいけど、実際経験してきたんだから中二病じゃないですけどね…
まあ厨二拗らせてるっぽいし面倒くさくなるのもやむなし。
あ、投げたwww まあめんどくさそうなやつだし仕方なしか。
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