表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小さな妖精に転生しました  作者: fe
七章 勇者と魔王
258/342

254. 神域の民

「この山を越えるとファルシアンだ」

「ムニムニムニ、ムニムニファルシアン」


 通訳の男が神域の民に私の言葉を伝える。

 我々エネルギア、そしてファルシアンとサルディアは同じ公用語だ。カティヌールは言葉が異なるが我々でも話すことができる。しかし遥か南からやってきた神域の民には我々の公用語は通じず、我々も神域の民の言葉は分からない。唯一、ムースリという男が我々の言葉をほんの少しだけ話せるが、単語をただ並べただけの拙い言葉使いだ。満足に意思疎通はできない。そのためか神域の民は1人の通訳を連れていた。


 神域の民は8人。どれも成人男性の腰程しか背丈がなく、まるで子どものようだ。それでいて髭面かつ筋骨隆々なのだからまるで人型の魔物のようでもある。発する言葉はムニムニとしか聞こえずゴブリンの上位種と言われた方が納得ができよう。



「貴公らが言う神域から召喚されたというドラゴンは、おそらくファルシアンのドラゴンであろう。貴公らにはそのドラゴンを討って頂きたい。神域に空間干渉した不届き者に鉄槌を下すという貴公らの目的にも沿えるのではないかな?」


 通訳の男が再び私の言葉を伝える。すると神域の民がいくつかの言葉を発し始めた。小さな髭面達がムニムニと声を上げる。


「どうした? 何と言っている?」

「はい。我々の目的は犯人捜しやその罪を裁くことではない、と。目的はあくまで神域の正常化だそうです」


「……そうか。ファルシアンには神聖な力を持つという妖精がおられる。その妖精ならば神域の正常化も可能かもしれぬぞ。しかしファルシアンの虫共は妖精の力を悪用しておるのだ。ファルシアンから妖精を解放できれば貴公らの望みも叶うであろう」


 通訳の男を通して神域の民を納得させる。


「我々もファルシアンの悪事には困らされておるのだ。そのためまずはファルシアンのドラゴンを討って頂きたい。そして妖精由来の品を1つ以上入手して頂きたいのだ」


 ――。


「……妖精由来の品とは何だ? と言っています」


「ふむ。妖精は様々な高能力の魔道具を作り出すらしい。一振りで夜を照らす程の光を放ち敵を焼き尽くす光の剣など、妖精が作り出す品々はそれ1つで強大な力を持つのだ。それらをファルシアンから奪取できれば我々もファルシアンに対抗しやすくなるというもの。どうかお願いする」


 神域の民には山越えの途中で街道を外れてもらう必要がある。街道をそのまま進めばファルシアン側に見つかってしまうからな。そのため通訳の男が神域の民に同行するのはここまでだ。たいして鍛えているように見えないこの男が街道を外れて山越えなどできるようには見えんからな。よって、この場で神域の民に全ての行動を指示しておく必要がある。


 ――。


「……了承のようです」

「そうか。ありがたい!」



 そのとき、山の方からガサガサという音が聞こえてきた。

 カティヌールとファルシアンを隔てるこの高い山脈には強力な魔物が多く住み着いている。ここはまだ山のふもとだが、それでも平原に現れる魔物よりは強力だろう。神域の民の実力を確認しておくにはちょうど良いかもしれんな。


「魔物だ。討てるか?」

「ムニムニ、ムニムニ?」


 通訳の男の言葉を受けて神域の民が動き出す。

 神域の民からは魔力を感じはしないが、それは隠密行動のためらしい。神域内の強大な魔物達に気付かれぬよう行動するために誰もが自身の魔力を自然と抑えられるようになるのだとか。


 神域の民は膨大な魔力を持つと聞くが、装備は大剣、大槍、大槌、大盾が2人ずつ。

 事前に聞いた話では、防御魔術の優れた者が魔物と肉薄し、残りの者がひたすら大剣などを叩き付ける戦闘スタイルらしい。

 魔力耐性が非常に高い神域内の魔物には人間が放つ魔術攻撃など無意味で、そのため身体強化してできるだけ強力な打撃を与え続けるという何とも野蛮な戦い方だ。大剣も切るためではなく打撃目的だとか。

 前衛や後衛という考えもあまりないようで、あるのは攻撃(オフェンス)防御(ディフェンス)という役割分担のみ。



「ムニッ!」


 短い声を上げたかと思えば、神域の民は突然走り出した。

 速い!?


「ムニムニムニ」


 神域の民は山に入ったと思えばすぐに戻ってきた。その肩には数匹の大きな猿の魔物が担がれている。速過ぎて戦闘を目視できなかったではないか……。


 くくく、ドラゴンを日常的に狩っていると聞いたときには半信半疑だったがこれなら納得だ。ファルシアンのドラゴンも問題なく狩れることだろう。ドラゴンを排除できればカティヌールの重い腰を上げさせられる。

 理想はこやつらとファルシアン、そしてカティヌールの共倒れなのだが……、ファルシアンが負ければそれで良い。楽しくなってきたではないか。


「くくく……。ファルシアン王女と妖精は現在、ファルシアン王国内東側へ移動しているらしい。ファルシアン王女は我々エネルギアを壊滅させた悪魔だ。貴公らにはまず、この悪魔の王女を襲撃して殺害。その際に妖精由来の品を強奪できればなお良い。その後ファルシアン王都へ進み、ドラゴン討伐だ。理解されたか?」


 ――。


「……伝えました」

「よし。これが王女の姿絵、こちらがファルシアン王家の紋章だ。この場で覚えろ」


 ――。


「では行け!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング
↑一日一回クリック下されば嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[良い点] 公用語すら完璧じゃない妖精様にムニムニ語なんてわかるわけないよ~どうしよ~
[一言] ちゃんと覚えたか心配で心配で。
[一言] でもそのドラゴン魔道具だから多分攻撃効かないんだよなぁ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ