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小さな妖精に転生しました  作者: fe
六章 聖王国
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246. 繁栄を

 冬が過ぎて太陽が白虹に隠れる季節も終わり、いよいよ金髪兄さんと聖女さんが結婚するらしい。結婚式に向けて用意してきた私の細工がいよいよ効果を発揮するときが来たんだ。


 聖女さんの故郷に行ってから3ヶ月くらいが経っている。その間、色々と勉強を詰め込まれて私もだいぶ言葉を覚えてきたよ。

 太陽が白虹に隠れて暗くなる季節はガルム期って言うことも覚えたし、国の名前も覚えた。ここはファルシアン王国、東隣はザルディア帝国、西隣はエネルギア王国、それから聖女さんの故郷はリアセイント聖王国なんだって。


 文化面も色々知れた。例えばこの国だと誕生日は毎年祝わないらしいね。魂が定着する6歳と成人を迎える15歳、立派に生きたと評価される40歳、長寿の仲間入りになる60歳。そういう節目にしか誕生日を祝わないんだって。どうりで、この世界に来てからもうすぐ1年が経つって言うのに誰も誕生日を祝わなかったハズだよ。


 だけど、まだわからないこともいっぱいある。おじゃーさんの呪文は結局何言ってるのかまだわかってないし、気候的なこともよくわからない。

 去年の夏前は船を浮かべられないほど河が干上がっていた。だからガキンチョどももあんな排水口みたいなところを秘密基地にできてたんだ。

 なのでこの国の春は乾期なんだと思ってたんだけど、もう春だって言うのに雨も普通に降ってるし、一向に河が干上がる気配なんてしない。ここから夏前までに一気に干上がるのはちょっと難しいと思うんだけど……。今年が特別なのか、去年が異例だったのか全然わからないや。



 気付いたこともある。去年の夏から秋頃に起こったいろんな問題は、全部私のおかげで解決したということになってるっぽい。しかもなんかアクロバティックなこじ付けで、私が全部まるっと事前にお見通しだったらしい。聞いたとき、へー、すごいじゃん私。って思ったけどそんなワケない。


 歴史の勉強中、近代史の授業内容に普通に出てきたのにはびびった。「こうして妖精様のおかげで解決したのです」とか言われても、その妖精、そこまで考えてないと思うよとか言える雰囲気じゃなかった。もう後戻りできない雰囲気なんだ。


 街ぐるみで奇跡の妖精やら叡智の妖精やらを観光資産にする気満々っぽくて、冬の間に妖精土産やら妖精名所やら妖精参拝所やら色々作られてた。この雰囲気で、実はあのとき何も考えてませんでしたなんて絶対言い出せない。

 屋台のオッサンが串焼きの破片をくれたりするのって、私が叡智の妖精で国を救ったからそのお礼ってことだよね。もう色々貰い過ぎてて罪悪感がすごい。


 だからもう、これから私は賢いキャラをゴリ押しするしかないんだ。まぁ、元々それなりに賢いからそんなに苦労はしないと思うけど。モノを作れたりする能力だってあるんだし大丈夫、私はこの先も必要とされる存在になれるハズ。心配なんて何もないのだ。

 ってか、この国戦争してたんかい。そこにもびっくりだよ!



 最近は金髪兄さんと聖女さんの結婚式のためか、知らない人たちがいっぱい来てる。少し日焼けした感じの人とかもいるから、かなり南の方からも来てるんだと思う。


 結婚と言えば、お酒マンと事務員(しょう)さんが恋人になっててびっくりした。しかも、どうやら事務員(しょう)さんがお酒マンに惚れ込んだっぽい。だって事務員(しょう)さんが猛アタックしてたもんね。

 怪しいと思ってたんだよなぁ。2人きりで話してたり一緒に演劇観に行ったりさぁ! 幸せになれると良いね!


 そう言えばずっと見かけなかった冒険者ギルドの小太りさんが帰ってきてた。ずっといなかったから左遷でもされたのかと思ってたけど、戻ってからも1番豪華な部屋に居座ってるから左遷じゃなかったっぽい。

 どうやら左遷されたのは筋肉オバケの方で、今は小太りさんが冒険者ギルドのギルドマスターなのかな。そして小太りさんは左遷されてたんじゃなくて、冬の間は暖かい南へバカンスに行ってたんだ。1人だけぬくぬくと……、許せん。



 私は朝から式場でスタンバってる。

 この日のために色々と準備してきたからね、成功させたい。ここ数日降ってた雨も止みそうになかったから昨晩雲を吹き飛ばしてきたし。そのおかげで快晴、さらに虹まで出たよ。


 さて、そろそろ金髪兄さんと聖女さんが結婚式の場に出てくるハズ。一緒にスタンバってる小鳥たちを確認。よし、行くぞ小鳥たち! 私と小鳥たちは聖女さんの周りを飛び回る。


 やっぱ聖女と言えば、小動物に愛され常に小鳥とかを引き連れてなきゃ絵にならないよね。なのに聖女さんったら、春が近づいて小動物が活動を始めても、なかなか小動物を引き寄せたりとかしなかったんだ。だからこうして私が引き連れてきた、小鳥たちを。さらに聖女さんのドレスには気づかれないようにクッキー片を編み込ませてある。これで小鳥と戯れる幻想的な聖女を演出! さすが私。



 出てきた金髪兄さんと聖女さんが何か話してる。その聖女さんの腕には私があげた腕輪が。ふむ、そう言えば金髪兄さんにはまだ何もあげてなかったな。鳥籠メイドさんにはネックレス、銀髪ちゃんにはイヤリング、(フラッシュ)様はチェケラ号、勇者君はあげた覚えなんてないけど私が複製した黄色の剣を持ってる。


 金髪兄さんにも何かあげよう。結婚祝いだよ。

 でも何が良いかな。王子様と言えば王冠、でも王冠はこの国だと特別な意味があるっぽいし避けた方が無難か……。なら白馬。王子様と言えば白馬の王子様だよね。でもあげられる馬なんて飼ってないし、私にも動物はつくれない。植物は作れるんだけどね。


 うーん、じゃぁマントだ。王子様っぽいアイテムが他に思い浮かばないし。金髪兄さんの結婚式衣装に合ったデザインで、普段の服にも合うデザインが良いよね。よしよし、イメージわいてきた。おりゃ!


 ペカーッと光った金髪兄さんの背に白いマントがたなびく。白地に金縁で裏地は赤、けっこう豪華な見た目のマントにできたんじゃないかな。しかも、風を受けると魔力でかっこよくバサバサする。魔力でバサバサさせているから室内でもバサバサさせることも可能だよ。バサバサ角度も完璧。黄金比と言っても過言ではない。うんうん、かっこいい。



 順調に進む結婚式。

 さーて、そろそろ私の細工が発動するよ。本当は午後のパレードで発動させたかったんだけど、やっぱ結婚式と言えば愛の誓いが本番だよね。だからこのタイミングなのだ。ここを目立たせるため、ここまでは大人しく何もしてなかったんだからね。


 よーし、今だ! 神、降臨ッ!

 ペカーッと光って現れる神様。愛の誓いはやっぱ神様の前でってね。もちろん偽物だよ? 光魔法でホログラムみたいに表示してるだけ。わー、みんな驚いてるなぁ。仕込んだ甲斐があった。よかったよかった。


 ちなみに神様は街の教会にあった太陽神像を参考にしてる。さらに聖王国の教会で見た壁画の光ってる精霊要素をプラス。結果、光が強すぎてどんな容姿か全く見えない。光ってるだけのただのでかい人っぽくなってしまった。まぁいっか。


 あ、そうそう。聖王国の神話だと光ってる精霊に光の玉を授かったとかだったよね。あげよう、光の玉。神様からのプレゼントって演出だ。聖女さんが驚愕してる。ドッキリ成功!



 うんうん、平和だね。

 この国も去年までは色々あったらしいけど、この光景を見ていたら平和が続きそうな気がしてきた。


 願ってるよ私も。ファルシアン王国の繁栄を!



これにて六章完結です。

ここまでお読みくださった読者の皆様ありがとうございました。


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[良い点] なぁんだ、光の巨人はただのホログラムかぁ。 え。また、何か光る玉、作っちゃってるんだけど!? [一言] さす☆よう! さす☆よう!
[良い点] いったん完結表示が取り下げられてからの怒涛の国際展開がすごかった。お疲れ様です。 周辺国との友好も固められて(光の玉でまた騒動が起きる気がするが気にしない!)今度こそ大団円!ですね。最後ま…
[良い点] 最初から、笑いが止まらない展開でした。転生ものは言葉が通じるのが当たり前?みたいな感じでしたが、最後まで意思疎通なしで大団円。妖精さんと周りの認識の違いが大きいほど、楽しめました。素敵な作…
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