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小さな妖精に転生しました  作者: fe
六章 聖王国
245/342

241. 最後の10分

 良かった。よくわからないけど喧嘩は収まったっぽい。これも私のおかげだね!


 ……と思ったけど、本当にそうかな?

 もしかしてもしかして、私のせい(・・)だったりしない? だってこれは、国と国の話し合いだよ?

 こっち側には王族の金髪兄さんや銀髪ちゃんがいるし、相手側にも王様っぽい豪華ふとっちょとか王子様っぽい目付きワルワルイケメンがいるもん。王族同士の話し合いは、それはもう国と国の話し合いだって。

 で、そんな国際会議みたいな場で乱闘だなんて、普通そんなことなかなかなくない?


 聖女さんと(セイント)お母さんの国だから、私はもっと良好な関係なのかと思っていた。だからドラゴンで行っても問題ないだろうと思ったんだけど、到着してみれば最初から剣吞な雰囲気だったよね……。


 実はもともとそんなに良好な関係じゃなかったのかも。だって改めて冷静に考えてみれば、王族との結婚なんて絶対恋愛結婚じゃないよ。金髪兄さんと聖女さんの結婚は何かの政略結婚だったのかもしれない。

 それに国同士が良好な関係だったら、王子様の結婚相手のお母さんを酒臭い冒険者に迎えに行かせたりしないハズ。しかも転移の魔道具で連れてくるなんてほとんど誘拐じゃん。拉致だよそれは。


 そんな微妙な間柄の国に私たちはいきなりドラゴンで乗り込んじゃったのだ。

 相手からすれば「おまっ、政略結婚でせっかく国際問題解決しそうやったのに何ドラゴンで攻めてきとんねんナメとんかワレェ!?」って感じになるし、金髪兄さんたちからしても「知らんわボケェ! 嫁の国に行きたい言うたらいきなりドラゴン乗せられたんじゃアホが!」って感じだよね。そりゃ乱闘にもなるよ!


 そう思ってみんなを見てみれば、金髪兄さんは苦笑してるし銀髪ちゃんはあからさまに機嫌が悪い。聖女さんは喧嘩が終わってホッとしてるっぽいけど、(セイント)お母さんは怒りのためか小刻みに震えてボードゲームを砕かんばかりに握りしめてるよ!


 やばいやばい、これ以上刺激しないように私は黙っていよう。幸い(セイント)お母さんが握りしめてるボードゲームはボウリングモドキ用に私が強化したヤツだ。すぐには壊れないよね? 好きなだけ握りしめててもらおう。こっちに矛先が向きませんように!



 その後みんなはまた話し合いを続けて、それからしばらくして聖女妹カッコ容疑者が気絶からよみがえった。状況がわかってなさそうな彼女にみんなが何やら色々と説明して、そして突然の絶叫、号泣!?


 あー、これはあれだね……。

 どうやら2時間サスペンスドラマの最後の10分が始まったっぽい。

 主役側が謎解きをして犯人に絶対言い逃れできない証拠を突き付けた後の、犯人の独白パートだ。

 東尋坊みたいな崖っぷちで、「もうやめろ! これ以上罪を重ねるな!」とか「来ないで! もう私は終わりなのよ!」とかやるんだ。ここは断崖絶壁じゃなくて室内だけど。

 そんでもって、犯行動機と一緒に犯人の可哀そうな過去とかが語られてなんとなく同情しちゃうんだ。


 そして連行されていく聖女妹カッコ容疑者。それを悲しそうな顔で見送る聖女さんと(セイント)お母さん……。

 聖女妹カッコ容疑者が完全に見えなくなってから、(セイント)お母さんが振り返り私にお礼を言ってくる。

 む? 感謝されてる?

 良かった、(セイント)お母さんは私に怒っていたワケじゃなかったんだ!


 (セイント)お母さんは私にお礼を言いながら私が作ったボウリングモドキの玉をチラチラと見ている。

 ははぁん、わかっちゃった。(セイント)お母さんがこの玉を見てすごく驚いた理由とか、この玉を持ってここに来た理由とか全部わかっちゃったよ。



 事件の全容はこうだ。

 発端は聖女さんがまだこの国にいたときまでさかのぼる。ある日、聖女さんの妹が何かの拍子に教会の奥に安置されていた光の玉を割っちゃった。

 割れた光の玉はこの国にとってめちゃくちゃ重要な国宝だったに違いない。怖くなった妹さんは逃げたのだ。


 その後、無関係なオッサンが光の玉を参拝にくる。割れた玉を前に呆然とするオッサン。そこに偶然やってきた聖女さんがそれを目撃、オッサンは冤罪で捕まった。ここは前の推理通りだね。で、その後聖女さんは金髪兄さんと結婚するために国を離れた。


 その後、真犯人の妹はきっと、罪の意識に耐えられなくなって(セイント)お母さんに相談したんだ。真実を知ってしまった(セイント)お母さんは当然慌てる。このままだと娘が国宝を破損した罪で断罪されてしまうんだから。それで(セイント)お母さんはせめて国宝の代わりとなるモノを探してたんだろう。それで娘の罪を軽くできると思って。


 そんなとき、なんやかんやあって何故かお酒マンに拉致られて私が住んでるお城にやってきた(セイント)お母さん。そこで光の玉っぽい私が作ったボウリングモドキの玉を見つけたんだね。

 豪華に見えるように光らせたんだけど、光らせるために魔力を使ってる。見た目重視で特に何の力もないんだけど、魔力があって光ってるから光の玉の代わりにちょうど良いと思ったんだろうな。


 なので私に、この玉を持ってこの国にくるように頼んできたんだ。娘さんは結局捕まっちゃったけど、国宝の代わりのこの玉があればいくらか罪が軽くなるに違いない。たぶん。


 最初この国に来たとき、妹さんがヒステリックに叫んでたのもしょうがないのかもしれないね。国宝を破損して罪の意識に潰されそうなとき、唯一頼れる母親が突然いなくなったんだ。その母親が突然姉とともに戻ってきた。

 妹さん的には母親が自分を置いてのんきに姉のところへ遊びに行っていたように見えたかもしれない。不幸な勘違いだったんだよ。


 そんな母親を見てもう誰も頼れないと思った妹さんは、割れた光の玉を持って逃げ出した。そこを私が見つけたってワケ。


 まぁ、とりあえずこれで一件落着だ。謎も全部とけて2時間サスペンスドラマならスタッフロールに入ってるところだね。スタッフロールに重ねて主人公側のちょっとした日常を映してエンディングだ。


 じゃぁ帰ろうか、私たちの家に。私たちの日常に!



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― 新着の感想 ―
[良い点] ようせいさん「犯人は…お前だ!(誰?)」
[良い点] 一件落着!\(^o^)/ [気になる点] 迷推理! (*´ω`*) [一言] さすよう!さすよう! \(^o^)/\(^o^)/\(^o^)/
[良い点] 脳内がお花畑と昼ドラでできてはるw 悪役の独白を長く書かずにパントマイム式に済ませるところ本当に上手いです! くどいザマァ展開が嫌いなので、こういうアッサリ描写は助かります
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