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小さな妖精に転生しました  作者: fe
六章 聖王国
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231. ドラゴンブレス

「手筈通りに年明けに侵攻すると噂を流した結果、どうやら聖王国の中枢も信じたようです」


「そうか。これで目障りな聖王国を消せるな」

 聖王国との国境に兵を配置してから数十日、部下の報告にほくそ笑む。


 何百年、下手をすれば千年以上もそこにあり続けた聖王国。しかし最近までは無視しておけば良いだけの取るに足らない小国だった。結界によって攻められはしないものの、あちらから攻めてくることもない。聖王国は肥沃な土地らしいとの噂だが、手出しできないのなら全くの無意味だ。無いモノとして扱うしかない。


 そんな無視しておけば良いだけの小国が、西の蛮国と繋がりを持ったことで途端に目障りな国となってしまった。我々が西の帝国や蛮国に攻め込むには聖王国を無視して通り過ぎる他ないのだが、そうすると西側諸国にとっては聖王国が絶対に落とされない防衛拠点となってしまうのだ。


 帝国と蛮国の長年続いた戦争はこの秋に終わった。疲弊した両国を討つ絶好の機会だと言うのに、まさかこのタイミングで蛮国が聖王国と組むとは思わなかった。


 そのため、西側への進出も諦める話が出始めた頃、聖王国の結界が弱まっているという情報を得たのだ。当初はあまり期待していなかったのだが、我々の予想を覆して期待通りの結果となった。なんと聖王国の結界が消えたのだ。

 こうなると話は変わってくる。帝国や蛮国だけでなく、聖王国もいっきに攻め落とせるチャンスだ。


 奴らは年明けまで攻め込まれないと思い込んでいる。このタイミングで侵攻すれば大した抵抗もなく攻め落とせるだろう。

 罠なんてことはない筈だ。何百年も戦争のなかった平和ボケの国にそこまでの考えなどあるまい。それに、我々の嘘を見破った上で騙されたふりをして我々を誘い込んだところで、奴らに戦力などないことは判明している。

 懸念は、聖王国を攻め落とそうとしているのが我々だけではないということだけだ。


「よし、夜明けすぐに侵攻を開始する。とっとと攻めて年内に終わらせるぞ」

「いいですね。新年は聖王都の聖王宮とやらで我が物顔ができれば最高ですよ」



 進軍しようとした翌日の夜明け、それは突然に起こった。轟音が鳴り響き、我々の目の前で地面が壁状に吹き飛んだのだ。


「う、うわぁ!?」

「こ、攻撃だ! 大規模魔術を受けてるぞッ!?」

「ち、ちがう! ドラゴンだ! あれを見ろ!」

「ドラゴンブレスだぁ!」


 ドラゴンだと?

 兵が指さす方を見上げると、赤いトカゲにコウモリの羽が生えた魔物が飛んでおり、こちらに向けて太い光の柱を撃ち込んでいる。あれがドラゴン、これがドラゴンブレスか。何故、御伽噺の存在がこのタイミングで……。


 そう言えば、西の蛮国ファルシアンの王がドラゴンを倒したという噂があったな。ただのガセかと思っていたが、まさか本当に倒し、それだけでなくドラゴンを手懐けたとでも言うのか?


 なぜ距離のある聖王国元聖女と蛮族王太子の婚約が成立したのかと多少の疑問もあったが、ドラゴンを手懐けたからか。確かにあんなモノを手駒として使えれば距離など関係ないだろう。



 ドラゴンから放たれた太い光が消えた後、そこにはそれなりに深い穴ができていた。渓谷とまではいかないが平均的な城の堀くらいはある。なんて威力だ。さすが伝説の魔物と畏怖されるだけある。幸い軍には直撃しなかったがこれでは進むことなどできない。


 いや、これは警告か。わざと当てず、次は当てるぞという脅しだ。たった1発の攻撃、それも当たりすらしていない攻撃で兵の大半が恐慌状態だ。これではまともな行動などできん。


 撤退だ。あんなものには勝てない。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 石器時代で弓をやっとゲットした人類相手に、無限バンダナ付けた蛇傭兵がコブラに乗って空対地ミサイル連射してるようなものだからね。 もうだめだ、おしまいだぁOrz
[一言] ジッサイ新鮮だった頃のドラゴンちゃん(君?)でも似たような事はできたんだろうねぇ
[気になる点] 撤退の判断早すぎ、実戦経験ゼロの新人お偉いさんかな?
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