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小さな妖精に転生しました  作者: fe
六章 聖王国
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216. 拒否権などない

 どうしてこうなった……?

 一介の冒険者である俺がこう何度も王城へあがることになるなんてと、この国の王妃様を前にして改めて思う。


 今回の原因は分かっている。数日前の妖精様の発言が発端だ。妖精様が発したお酒マンという言葉にサブマスが過剰反応したことが原因なのだ。お酒マンとはおそらく妖精様の俺の呼び名だろう。そこから魔王だの魔女だのと話が発展するとは思わなかった。間違っていればすぐに誰かが気付くだろう、そう思ってわざわざ訂正もしなかったのだ。


 なぜなら妖精様からお酒マンと言われたのは結構前になる。正直記憶があやふやだ。おそらく俺の呼び名だったと思うのだが、もし違っていれば大事になる。相手は王族、記憶違いでしたでは済まされない。と言うよりも、本当に妖精様からの警告であったなら国が滅びかねない。


 それに、もしお酒マンが妖精様からの警告だったのなら、ドラゴン召喚の魔法陣を調査しに行ったときから事態が起こっていた可能性がある。あの頃に対策に動き出さなかった俺達を見て、妖精様が今になって改めて警告しにきたという可能性もゼロではないのだ。


「と言う訳で、その魔道具でリアセイント聖王国の現状を調べてきてください」


 簡単に言うが、リアセイント聖王国とはどこだ?

 王太子殿下の婚約者として聖王国という国から聖女がやってきたことは知っている。その聖女と言うお方が初めて王都に入った際に歓迎パレードみたいになっていたからな。

 しかしその聖王国がどこにあってどんな国なのかなんて全然知らないぞ。東門から入ってきていたようだから、おそらく東にある国なのだろうと予想できる程度だ。


「近くまではその魔道具で転移できる筈です。転移の魔道具は2つきり。1つは2回転移が可能、もう1つは1回のみ転移が可能です。分かりましたか?」


「はい」


 つまり、基本行って帰ってくるだけにしか転移は使用できないのか。あと1つは不測の事態に対処するための予備。それも予め登録された場所か、対になる魔道具のある場所にしか転移ができないと。そして今回は対になる魔道具がない。

 まぁ、帝国領内の聖王国付近へ転移、帰りに王都へ転移と覚えておけば問題ないな。


 しかし、魔女とお酒マンに関して調べてこいとは……。もしお酒マンが俺の呼び名なのだとすれば、王家も妖精様とあまり意思疎通が取れていないことになる。

 いや、王侯貴族など肝心なことは喋らないのだ。全て分かった上で敢えて調べてこいと言っている可能性もある。

 転移の魔道具も2つあるとは言っているが、2つしかないとは言っていない。どう考えても1つは予備で持っておきたいだろうに。これ1つあれば王族の危機を回避するのに十分だ。本当に2つしかないのなら、俺には往復用に1つ渡せば済むのだから。


 しかし、聖王国に入るには結界を通り抜ける必要があるって? 結界は弱まっているから問題なく通り抜けられるだろうという話だが……、そこは行ってみて対処を考えるしかないか。



「ところで、あなたは妖精様の果実で身体能力が上がっているのでしょう? 具体的にどのような感じなのです?」


「あ、え……と……、そうですね……」


 今そんな質問が来るとは思っていなかった。俺は説明下手だから、誰かに何かを説明するには1度頭の中で喋る内容を整理しないと駄目なんだ。王族相手に想定外の質問に答えるのは難易度が高い。どう説明しようか……。


「体が……、思い通りに動くと言いましょうか……」


「ほぅ、興味深いですね。どのような動きができるのです?」


「……その、理想の動きです。普通なら何度も練習を積まないとできないような、普通なら頭の中でしか実現しない動きを、ぶっつけ本番でできてしまうと言いましょうか……」


「あら、では両手でそれぞれ別の文字を書くといったこともできるのかしら?」


 両手で別の文字を書く? そんなことは試していなかったが……。両手で別々の文章を書くことを頭の中で思い描くと……、できる。そんな気がする。


「おそらく……、可能かと思われます。簡単な文章なら……ですが……」


「あらあらまぁまぁ、それは()いことを聞きました。あなたができると言うのであれば陛下もできるのでしょう。陛下には今後、倍働いてもらえるということになりますね」


 王妃様が説明し辛い笑顔を浮かべる。正直恐ろしい。俺の軽率な発言で国王陛下の仕事量が倍になるって? やめてくれ、胃が痛い……。


「では、話し合いはここまでです。できるだけ早く報告をお願いしますね。先程言いましたとおり、5日後までに音沙汰がなければ問題が発生したとみなしますので」


「はッ」


 どうせ俺に拒否権などない。今日は遠出の準備と聖王国の情報集めをして、明日早朝に聖王国国境へ転移するか。


 全く、最近は王家からの依頼ばかりだ……。国の依頼で転移の魔道具と透明化の魔道具を使って他国の情報を集める……、ザンテンを思い出すな。ザンテンが帝国の間諜だったと知ったとき、まさか自分が王国の間諜になるとは夢にも思わなかったぞ……。


 さて、魔女とお酒マン、はたしてどんな情報が出てくるのやら……。何も出てこなければ、お酒マンは俺の呼び名だったと報告すれば良い。どうして最初に言わなかったと問われても問題ないだろう。なに、悪いことはしてないんだ。正直に確証がなかったと伝えれば良い筈だ。


 5日で良いんだ、少し頑張ってくるか。



妖精様が何か警告してきた。聖王国以外は問題ないけど聖王国の状況が分からない

聖王国の状況を知るために聖王国にいる諜報員に書状を届けたい

妖精様が届けてくれるって!

妖精様、聖王国は東なのに西にかっとんでった!?

妖精様が、西のエネルギアに居た魔術師団長から転移の魔道具と透明化の魔道具を受け取ってきたぞ?

妖精様はこの魔道具で人間達自身で聖王国の状況を確認してこいと言っているに違いない。でも転移回数の都合上1人しか行けない!

ダスターさん、1人で行ってこい!←いまココ!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 往復1回分と、片道1回分。 つまり、あれか。 「好きな女性をお持ち帰りしていいよ♪」 いや、何か違う気がするなぁ。 「お菓子職人つれてこい!」 これだ!!!
[良い点] さすよう!さすよう!
[良い点] お酒マン、相手が新しい聖女だとか考えずにさくっと魔女退治して5日で返ってきそう。それでこその王妃の紐付き!! [気になる点] 妖精様の聖水に毎日入浴している王妃様、そろそろナニカに進化して…
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