表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小さな妖精に転生しました  作者: fe
六章 聖王国
215/342

211. 進むか戻るか

 勢いよく飛び立ったら手紙がバサバサとえらいことになっちゃった。やばいやばい、とりあえず風から保護しないと。なんかバリアちっくな膜で覆っておけばいっか。よしよし。


 天気は小降りの雪、傘が必要なほどじゃないね。寒さもまだ耐えられる範囲。このまま行けそうかな。西の街道沿いに進めば良いんだから、とりあえず西門まで行こうっと。


 いやー、今更だけど西洋風のお城とか街並みの雪景色ってすごく良いね。なんかのRPGの影響か、ストーリーが中盤以降に来ましたって感じがする。なんでだろ? 魔女とか魔王って単語も出てきてるからかな。



 西門を空から越える。

 うん、これは想定外かも。雪が積もって街道がどこか全くわからん。街から10mくらいまでは雪掻きもされていて、そこから100mくらいまではこの辺が街道かな?ってなんとなく分かる程度。でもその先は足跡1つない真っ白けっけ。並木も特にないから目印的なのが一切ないよ。誰だ街道沿いに進めば問題ないとか言ってたヤツ。私か。


 でもまぁ、地図を見ながら行けば良いかな。

 って、地図も積雪状態を再現してる! 地図上でも街道が全くわからないよ! うげぇ、リアルタイム更新の地図も考えモノだなぁ。なんかこう、雪だけ非表示にできたりしないの……。あ、できたわ。よしよし。じゃぁ急ぎっぽいから全速力で行ってみますかね。


 さっむ! 風が冷たい!

 雪は透過できるけど寒すぎる。風は透過されないのかな。固形物と気体で透過できるかどうかが違うってこと? とりあえず手紙を覆ってるバリアに自分も入るか。

 うん、これなら問題なく飛べそう。よーし、今度こそ……。




 それから街道をだいぶ進んだ。真っ白い地面に灰色の空、小降りと言っても雪が降ってて遠くまでは見通せない。地面にはたまに木が見える程度で、それ以外は何も見えない。地平線もあやふやだ。静かすぎてなんか耳鳴りもしてる。何も匂わないから嗅覚もシャットアウトされてるように錯覚しちゃう。強いて言えば湿った冷たい臭いはするかな。これがホワイトアウトってヤツ?


 地図なかったらヤバかったな。どおりで私におつかいを頼むワケだよ。こんなん人間なら死ぬってホント。しかもこんな雪だけの状況なのに魔物もいるっぽい。地図にところどころ表示される赤点を避けて進んでいく。高度があるから大丈夫だとは思うんだけど、念のためね。



 地図だとそろそろ最初の町があるハズなんだけど……、あった。ここまで近づかないと見えないかー。で、おじゃーさんはこの町にいるのかな? いないような気がするな……。


 街門は通らずに空から街に入って大きめの建物を確認していく。ちょっと騒ぎになっちゃってるけど仕方ないよね。はいはい失礼、ちょっと通りますよ。

 おじゃーさん一行は騎士とか使用人っぽい人たちとかで結構な人数だった。あんな団体客がこの程度の規模の町に滞在してればそこそこ目立つハズだよね。うん、いないわ。この町はハズレか。



 また次の町まで飛ぶ。そしておじゃーさん捜索。さらに次の町、3か所ともおじゃーさんはいなかった。ぬー、これは思ったよりツライんじゃ? もう帰りたい。

 でもここで投げ出しちゃったら私の信頼がガタ落ちだよね。せっかくコツコツと王家ペットから始めて街のマスコット、ガキンチョ救助のヒーローを経てウソ劇を通して救国の英雄まで上り詰めたんだ。こんな手紙を届けるくらいのおつかいでぬくぬくスローライフを失いたくない。がんばれ、がんばるんだ。今だけだから、今だけがんばればそれで終わるから。


 それにしても今何時だろ。太陽も見えないから時間感覚が狂っちゃうな。出発が午後だったからそろそろ暗くなってきてもおかしくない気がするんだよね。

 いやまだ行けるか? 最悪暗くなっても問題なく進める気がするし。だって今ですら真っ白でまわり(なん)にも見えないんだもん。これが真っ暗で(なん)も見えないに変わるだけじゃん。




 はい失敗しました。

 今私は森の中にいる。そしてあたりは真っ暗、夜になっちゃった。めっちゃ寒い。


 ここは1(いっち)(ばん)最初に銀髪ちゃんと出会った森の中で、出会った場所からさらにだいぶ西へ進んだところだ。

 何がヤバいって、私の地図は行った場所しか表示されないってことなんだよね。つまり銀髪ちゃんと出会った場所から西の地図はなし。未知の領域ってことだよ。


 銀髪ちゃんと出会った場所から東側の森の出口までそんなに距離がなかった。だから森を反対側へ抜けるのにもそんなに時間はかからないと思ったんだよね。ここは小さい森なのかなって。でもこの森、どうもめちゃくちゃ広いっぽい。詰んだ、出れない。



 で、どうして今立ち止まっているか……、飛んでるから飛び止まっているか、かな? まぁいいか。どうして今私がここで止まっているかって言うと、森が()ちゃ()()ちゃ()になってるからだ。え、()ちゃ()()ちゃ()()ちゃ()()ちゃ()だよ。なんか極太ビームで森を薙ぎ払ったみたいになってる。ホントなんだこれ。

 うーん、鳥籠メイドさんがナヨ冒険者にぶっぱなしてた極太ビーム魔法を横に薙ぎ払ったらこんな感じになるかもしれないな。


 しかも、なんか豪華そうな馬車が横倒しになってる。雪に埋もれてたから最初は気づかなかったけど、雪を除けたら出てきちゃった。銀髪ちゃんと出会ったときに銀髪ちゃんが乗ってた馬車とめちゃくちゃ似てるよ。馬車に描かれてる紋章もお城にある紋章と同じだ。お城以外じゃ見ないからたぶん国の紋章とかじゃなくて王家の紋章なんじゃないかなと思う。


 つまり、王家の馬車が襲われて極太ビーム魔法が使われるような激しい戦闘になったってことだよね? 王家の馬車ってことは、お城から出発した一行の馬車ってことなんじゃないの? それって、西に向かってたおじゃーさんが襲われたってこと?


 ってか、街道沿いにお墓があるんだよね。最近作りましたって感じのお墓が……。最悪おじゃーさん死んでんじゃないのこれ……。うわ、やば、えー……。心臓ドキドキしてきた。どうしよ……、今から急いで戻ってお城の人に伝えた方が良いのかな?


 あ、馬車の中からなんか木が生えてきてる。それから根本には割れたビン……。この薄っすら魔力がある感じ、お城に生やした果樹と似てる気がする。そう思うとこのビンも以前に果物を詰めたビンになんか似てるかも。

 私が作った果物のビン詰めを抱いたおじゃーさんが極太ビームで襲われちゃったのか……。そしてその後に生えてきた木……、これはおじゃーさんの生まれ変わりかも。涙出てきた。



 いや、いやいやいやいや。寒くて暗くてツラくてナーバスになってるから思考がネガティブになりすぎてる。冷静になれ。まだおじゃーさんが死んだかなんてわからないって。まずは冷静に、お城に戻るか先に進むかを決めないと。


 まず、おじゃーさんが襲われたのは間違いないと思う。そしてお墓があるから仲間の何人かが死んじゃったんだろう。お墓を作れたってことは全滅じゃないのは確定だ。だったら、おじゃーさんも生きてる可能性は高いよね。


 襲ってきた相手のお墓ってことはないと思う。だって銀髪ちゃんを襲った盗賊はまとめて焼いて埋めてただけだったし、鳥籠メイドさんを襲った盗人(ぬすっと)もお墓は作らなかった。きっとこの世界は犯罪者の扱いがかなり適当なんだろう。


 死傷者が出るほどの被害があったんだから、おじゃーさん一行は次の町でストップしてる可能性が高いんじゃないかな。今から半日以上かけてお城に戻るより次の町へ行った方が早い気がする。でも問題はこの先の地図がないってことなんだよね。森を出るまでなら木々の切れ目で街道が分かるんだけど……。


 うーん……。よし、進むか。



今回妖精さんが見つけた戦闘跡は160話で銀髪ちゃんがエネルギアに襲われた戦闘跡です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング
↑一日一回クリック下されば嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[良い点] …ぐるっとまわったら地図の反対側に… [気になる点] 自分、船入手後の周り方を間違えて、首をひねりながらも強行突破やらかしたタイプで… [一言] 西と東を間違えてもなんとかなる…さすよう!…
[良い点] 更新ありがとうございます。 いつも楽しく読ませて頂いてます。 [一言] おじゃーさんて誰でしたっけ・・・ 人物紹介ページが欲しいです
[一言] 勘違いは加速する( ˘ω˘ )
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ