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小さな妖精に転生しました  作者: fe
六章 聖王国
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204. 演劇

 今年は激動の1年だった。

 舞台上で飛び交うドラゴンと白い鳥の模型に乗った陛下(父上)を演じる男を眺めながら、改めてそう思う。つい最近まで国の存続すら危ういと思われていたのに、今は王族揃ってこのような娯楽を楽しんでいるとは。これも全て妖精様のおかげだ。


 当初この演劇鑑賞は私とエフィリス、そしてティレスだけでの予定だった。私とエフィリスの親睦を深めること、そしてエフィリスの王国への理解を深めることが目的である。

 ティレスは本人が参加を望み、自動で結界を張ることができる妖精様のイヤリングを持つため許可が出ていた。


 両親や弟が参加できたのは、今もエフィリスが身に着けている腕輪のおかげである。彼女の腕輪の中央で薄く光る透明な玉は、驚いたことに聖王国にある光の玉と同じ性質の物らしい。

 腕輪の玉は小さいため流石に国まるごと覆う大きな結界を張ることは不可能だと聞いているが、それでも王都をまるまる覆う大きさの結界も張れるだろうとエフィリスは言っていた。それは1人での魔術としては驚異的な規模だ。


 そんな光の玉を妖精様は事前にご用意されていた。しかも妖精様付き侍女に確認したところ、なんと妖精様は光の玉を玉転がしゲームの玉として使っておられたらしい。

 妖精様らしいカモフラージュだ。事前に大事(おおごと)にならないよう、敢えてぞんざいに扱われていたに違いない。一体誰が、盤上の駒を撃ち倒すために使われている玉が秘宝中の秘宝と呼ばれる聖王国内の光の玉と同一のモノだと看破できるのだろうか。これは流石に王妃(母上)でも予想できなかったのではと思う。


 どうして妖精様が光の玉をご用意されたのかは現時点では分からない。

 静かに演劇を鑑賞されておられる妖精様、そのすました表情からは何を考えておられるのか私には分からない。まるで遥か遠い未来を見据えておられるようだ。



 エフィリスは食い入るように劇を見ている。衝撃的な内容だからだろう、時折肩を震わせて感涙している。その姿は小動物のようで愛らしい。ティレスも劇に夢中だ。


 ティレスがエフィリスに懐いたのは嬉しい誤算だった。これまで国の衰退のみを見続けてきたティレスは、近しい者以外にはドライな対応を取ることが多かった。しかしエフィリスとは魔力量増加の訓練を通してかなり仲が良くなっているように見える。

 幼少期に戦での功績が国で最も喜ばれる功績だと刷り込まれてしまったティレスは前線に出ていた弟の影響もあり、見た目からは想像できない程力で物事を解決しようとする思考が強い。どうか、おっとりとしたエフィリスから良い影響を受けて欲しいと思う。




 どうやら舞台上ではドラゴンとの決着が付いたようだ。陛下(父上)を演じる男が優雅に作り物の城に降り立つ。


 実際にはあのとき、鳥の制御が困難だったという理由で陛下(父上)は城に激突する形で停止された。体重移動で方向転換、コインを入れることで加速など、ある程度搭乗者の意思で飛ぶことができるというあの鳥は、しかし1度飛び立ってしまうと自身では止められないという欠陥があるらしい。そのため地上に降りるには自然に減速して墜落させるか、何かに激突させて強制的に止めるしかないのだと陛下(父上)はおっしゃられていた。


 この劇にはいくつか目的がある。その1つは民衆にある程度の情報を与えて納得させることだ。秋のドラゴン騒動で言えば、人為的だったこととその首謀者を討ったことで再襲撃はないと納得させる。夏のスタンピードも同様だ。そして王城への不満を帝国やエネルギアへ逸らし、王家の支持率を上げるといった目的もある。


 民衆もスタンピード無血防衛やドラゴンとの空中戦を目撃しているのだから、多少脚色したとしてもそれが事実と信じて疑わないだろう。なにより普段から王都中を飛び回っておられる妖精様の存在が説得力を増している。



 劇が終わり、エフィリスが私を見てきた。自然と見つめ合い、笑顔が浮かぶ。

 今後もまだまだ忙しい。しかし私には特筆した妖精様の加護がなくても、彼女の笑顔があれば頑張れそうな気がするね。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 妖精の奇跡(ことわざ):気にしていなかった事柄が後に非常に役立つこと 妖精の知略(ことわざ):偶然が数多く重なる事 みたいなことわざ辞典読んでみたい。
[一言] そのうちこの国に「妖精の気まぐれ」見たいなことわざできそうだよな
[一言] 妖精様、お兄ちゃんにも、王太子さまにもご加護をあげて!!
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