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小さな妖精に転生しました  作者: fe
五章 ガルム期
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178. ドラゴン

 どうやらドラゴンの危険性が伝わったようで、お城の人たちが急に慌て始めた。声は普通には出せないんだけど、風魔法の応用で割と簡単に声を出せたのだ。良かった。


 みんながバルコニーに出ると、遠くの空にドラゴンが舞い上がったのが見えた。うわー、ファンタジー! 太陽が白虹に隠れて薄暗い中、赤く燃えているような光を発しているドラゴンはめちゃくちゃ目立つ。


 だけど、どうも様子がおかしい。魔法使いのおじゃーさんが居たから、おじゃーさんと弓兄さんでドラゴン討伐に行くのかと思ってたんだけど、どうやら違うっぽい。


 ドアップ様や金髪兄さんもやってきた。みんなが見つめる先はドラゴン……、ではなくて、白い鳥の模型であるチェケラ号だ。人垣が分かれて威厳たっぷりに歩み進んでくる(フラッシュ)様。手には私が改造した宝物庫の赤い宝剣と、ダンジョンクリア報酬で用意した盾。


 え、まさか? ホントに? チェケラ号に乗ってドラゴンと空中戦するの? 宝剣はもともと宝物庫にあったからスゴイ剣なのかもしれないけど、その盾は見栄え重視の飾り用だよ? それでドラゴンに突っ込んだら絶対死んじゃうって!


 ……いや、どうなんだろ? この世界の人間ってめちゃくちゃ身体能力高いし、魔法とかもある世界だ。もしかしたらドラゴン退治とかも割と日常的にあるのかもしれない。だって誰もパニックにならずに期待の眼差しで(フラッシュ)様を見てるからね。


 その(フラッシュ)様が私を見てきた。それに釣られてか、みんなが私を見てくる。え、なになに? もしかして私のリアクション待ち? えーとえーと、この場合何が正解? よく分からん。私は頷いた。


 すると(フラッシュ)様も力強く頷く。周りから歓声が上がった。大盛り上がりだ。うん……、どうやら頷きが正解だったっぽい。おじリーダー相手に頷くと変な約束とか成立してそうだけど、(フラッシュ)様相手なら良いよね? 特に会話もなかったし、何か約束させられたってことは無いハズだ。



 そうこうしている内に近付いてくるドラゴン。満を持して(フラッシュ)様が銅貨をチェケラ号に投入。うーん、この光景だけ見ると、小さな遊園地で子供用の乗り物を大の大人が乗ろうとしているシーンにしか見えない。めちゃくちゃ滑稽だ。


 だけどチェケラ号の出力は子供用なんて生易しいもんじゃない。初速からトップスピードで飛び立った。歓声が大きくなる。前も思ったけど、よくアレの上に立ってられるよねぇ。


 内情はだいぶ滑稽だけど見た目はかなりカッコイイ。そして実情はかなり深刻というめちゃくちゃな状況だ。


 ヤバい、ドラゴンが街に向かって火を噴いた! 火炎放射と言うよりは大きな炎の玉っぽいヤツだ。あんなの落ちたら街に凄い被害が出ちゃうよ! その炎の玉にチェケラ王様(フラッシュ)が盾を構えて突っ込んでいく! ダメダメダメダメ、その盾観賞用だって!!


 だけどそんな私の心配を無視して、チェケラ王様(フラッシュ)が炎を突き抜け反対側から飛び出てくる! なぜか無事だ! 炎は搔き消えた! うそぉ? どうしてぇ?


 でもまだ安心はできない。チェケラ号には弱点があるのだ。時間制限。この距離だと普通の人には見えないだろうけど、私には見える。銅貨が飛び出て高度が落ちてきた。


 どうするのかと思っていたら、(フラッシュ)様は飛び出た銅貨をキャッチして、チェケラ号の向きを変えてから再び投入した。そんな芸当もできるんだ!?


 そうして街の上でドラゴンとの空中戦が始まった。(フラッシュ)様が剣を振るうと炎の刃がドラゴンへ飛ぶ! え、あの剣にそんな効果が!? どぎゃーとかずおーんとか色んなでかい音が鳴って、よく分かんないけどすごい戦いだ!


 暗い街中のいたるところで明かりがつけられ始め、街の人もドラゴンに気づいたのが分かる。ドラゴンの炎も(フラッシュ)様の炎の刃も暗い中よく目立つからなぁ。



 ドラゴンが斜めの姿勢で風を切りお城を掠めて飛んでいった。その風でバルコニーの人たちが翻弄されるほどの勢いだ。その後を羽から雲を引いたチェケラ号が追いかけていく。遅れてヒュィンと耳鳴りのような音が届いた。なんだこれ、ドッグファイトか?


 ふいにドラゴンがお城に向けて炎を吐いた。みんな恐怖の表情を浮かべる。それを炎の刃が切り裂いた。相殺したのか炎が掻き消える。わーつよーい。もう何でもありじゃん。



 ふと気づけば弓兄さんが弓を構えていた。よく見ると矢の先端に何か付いてる。あ、あれ私がお肉食べるときに使った串だ。この国の人たちは普通に戦えないんだろうか? 戦闘にもお笑いを忘れない芸人民族なのかもしれない。なるほど、だからあんな勇者くんみたいなのが育つんだね。


 (フラッシュ)様が追い詰めて若干動きが鈍ったドラゴンに向けて、弓兄さんが矢を飛ばす。眉間に矢が刺さったドラゴンはお城と貴族街の間の森へ落ちていった。またまた歓声が上がる。



 あー、なんかよく分からないけど心配いらなかったね。ドラゴンが普通に居る世界なんだから、ドラゴンに対応なんて普通にできるってことか。でも見ごたえは凄くあった。今回は心配で楽しめなかったけど、次また出てきたら楽しめそう。


 ようやくチェケラ号がお城に戻ってくる。みんな手を振って出迎えてた。(フラッシュ)様も手を振って嬉しそうだ。


 チェケラ号はそのままお城の壁に突っ込んだ。



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― 新着の感想 ―
[良い点]  話の進行のテンポが良いので、とても楽しく読み進められます。そしてテンポが良いことで、ご都合主義な展開をパンチラインとして楽しむことができることが痛快で最高です。  また、文章が上手なため…
[良い点] 王様、まさかの連コイン勢だった!? 串(妖精槍)2度目の活躍!? みんな笑いを取らなきゃいけないの!?(違う気が) あ、王様衝突した(やっぱ笑い取る運命なのかも)
[一言] >チェケラ号はそのままお城の壁に突っ込んだ。 こんなん吹くわw
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