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小さな妖精に転生しました  作者: fe
四章 収穫祭
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143. 港町

 朝起きて窓際から外を見る。これが全面展望オーシャンビューってヤツか。昨夜見たときは窓の外は真っ黒に塗り潰された漆黒の景色だったけど、朝見るとすっごく海が綺麗だ。ここに常時糞尿垂れ流ししてるなんて思えないね。



 昨夜船で港町に着いてから馬車のまま貴族のお屋敷に入ってそのまま一泊した。今までの町で会ってきた貴族の人はだいたい色白でふくよかだったけど、ここの貴族は色黒ダンディちょいマッチョだった。チェケラとか言いそう。今いるお屋敷はチェケラさんのお屋敷、チェケラハウスだ。


 夜は魚料理、というかこの遠出の後半はだいたい夕食が魚料理だった。切り身は私サイズに切り分けられてはいるんだけど、食べてるとスジに沿ってモロモロに分解していく。そうして最後にはカニカマみたいな棒状になるんだよね。


 魚料理って柔らかいイメージがあったけど、スジ1本1本は結構弾力があってびっくりした。まるで貝柱だよ。多分だけど人間が魚料理を柔らかく感じるのって、噛むとスジとスジの繋がりが崩れるからなんじゃないかな?




 そんなことを考えながら海をぼーっと見ているのも良いもんだね。この町は海側を下にして階段状に建物が並んでいて、チェケラハウスはその中でもひときわ高い位置に建っている。なので窓から海がよく見えるのだ。


 エメラルドグリーンの海を期待していたんだけど、全体的に濃い青でなんか日本の海っぽい。どうせなら南国リゾートみたいなエメラルドグリーンで覗けば海底が見えるような海が良かったけど、贅沢は言えない。ここは南国でもないし、大きな船が停泊できることから深さもあるっぽいし、とどめに汚水を垂れ流してるからエメラルドグリーンは無理か。それでも海は綺麗だし絶景だ。


 南に行けばそっちにも海があるのかなと思ったけど、南はすごく高い山があったな。たぶん南に行っても海はない気がする。



 海をぼーっと見ていたら見習いメイドちゃんも窓際に立って海を眺めだした。んー、部分的に海面の色が違うというか、表面がぬるっとして見える場所があるね。なんでだろう。ああ、よく見ると部分的に波がないのか。地形の影響かな。それともあそこに海流があるとかなんかな。


 岸に近い場所に船は見えるけど沖には船が見えない。私が乗ってきた船は羅針盤みたいなのがなかったから、この世界は船で外洋に出る技術がないのかもしれないなぁ。それか、海には怪物がいて沖に出られないとか。異世界だから可能性としてはあり得る気がする。地上にも魔物とかいるし。技術がないから外洋に出られないのか、外洋に出られないから技術が発達しなかったのか。……どっちでも良いか。



 朝食後に馬車でチェケラハウスを出て海岸に向かう。思えばなかなかハードスケジュールだよね。短い日程にできるだけ多くの観光地を詰め込んだパックツアー旅行みたいになってるよ。添乗員こと鳥籠メイドさんが馬車内から外を示して色々説明してくれる。何言ってるか分からんけど。


 いやいや、いくつかの単語は覚えたよ? でもほら、文章となると理解できるかは別問題じゃん。英語を学校でやったばかりの日本のお子さんが、大学入試のヒアリング試験を理解できるかって話よ。なので私は適当に頷いておく。おじリーダーに頷くのは危険だけど鳥籠メイドさんなら大丈夫でしょ。



 そんなこんなで、馬車は河に沿って海に向かって下っていった。海に近づくにつれて河の逆流被害は大きくなるのかと思ってたけど、海に近い町の方が被害は少ないみたいだ。この港町なんてほとんど被害箇所が見当たらない。海に近いから逆に対策がバッチリなのかもしれないね。


 魚市場みたいな場所があったけど素通りされた。そうしていつも通り病院で治療、その後造船中のドックに連れて行かれた。骨組みだけの船に板を張り付けている船大工がいっぱいいる。私たちがドックに入るとみんな寄ってきた。


 寄ってきた船大工たちは、なんか体をさすったり腕をグリグリ回したりして喜んでいる。この反応は傷が治った病院の患者さんたちに似てるね。この船大工たちは体の不調があったのかな? 私が近づいたからそれが治ったと。なるほどなるほど。崇めても良いのよ?



 外に出て海辺を案内される。漁で潜っている大人がちらほらといるけど、泳いでいるのはほとんど子どもばっかりだ。水着の大人がバカンスで泳ぐとかはないのかな、少し残念。鳥籠メイドさんとかは泳げるんだろうか? 水着とか絶対似合うと思うんだけど。いや、その前にこの世界に水着はあるのか?


 お、七色に光ってる綺麗な石発見! む、棒状だけどこれ貝殻か。お土産に持って帰ろう。ドアップ様とかの大人たちや、金髪兄さんや勇者くんみたいな男性陣にとっては微妙かもしれないけど、銀髪ちゃんみたいな子どもなら喜ぶかもしれない。もう1個ないかな……。お、あったあった。うーん、大きさが不揃いだね。ちょっと加工するか。


 大きさを揃えて、ついでにちょっとくすんでるからテカテカにしておこう。む、思ったより輝かないな。無理やり輝かせるか。さらにこれをこうして……、こう! むふふ、イヤリングのできあがりだ。



 その後は鳥籠メイドさんと港町のお土産物屋さんを見てまわった。適当に良さげなお土産を指させば買ってもらえるのだ。さすがお城の予算、何を指さしても買ってもらえるよ! む、この町のミニチュア置物。ゆびさしー、購入~♪ うお、でかい鳥の模型! ゆびさしー、購入~♪ なんかよく分からんモノも多少混ざったけど問題ない。ないよりはあった方が良いのだ。



 そうして3日ほど港町を堪能した後、私たちは帰路に就くのだった。エメラルドグリーンの海で水着バカンスは無かったけど、結構楽しかったよ。


 さらば港町! さらばチェケラ貴族! お城が私を待ってるYo!



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― 新着の感想 ―
[気になる点] >「外洋に出る技術がない」繋がっている認識で合っています。  お返事頂き有難う御座います。  ただ、頂いたお返事の御説明では、外洋に出る技術がある場合でも、がどうして「繋がっている」…
[気になる点]  「四章 収穫祭」の「143. 港町」における >私が乗ってきた船は羅針盤みたいなのがなかったから、この世界は船で外洋に出る技術がないのかもしれないなぁ。 という箇所の意味が良く解…
[良い点] 面白い 意外と難しい物語な気がするのにそれを100話以上展開させるってのが凄い 凄いうえに面白い [一言] 面白いのでこれからも頑張ってください
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