表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小さな妖精に転生しました  作者: fe
四章 収穫祭
142/342

139. 絵本

 今なお河を下ってどんぶらこ。何日もかけていくつかの町を回り、貴族っぽい人に挨拶したりされたり、回復魔法をかけたり災害現場を視察していっている。


 あれから訪れた町は、普段住んでたお城の街や最初に行った城砦都市ほど大きくはなかった。ある程度大きな町はその町毎の特色が出てるんだけど、一定規模以下の町はどれも代り映えしなかったね。


 でも、北に行くに連れて徐々に街並みも変わってきてる気がするんだよ。具体的にどう違うかと言われると答えられないんだけど、雰囲気が違う。なんでだろ? 建物の造りが若干違うのかな?



 各町が河に汚水を垂れ流しているせいか、河を下れば下るほど水は汚くなっていく。でも慣れとは怖いもので、何日か船の上に居ると匂いが気にならなくなってくるんだよね。町に滞在してまた船に乗りなおしたときに、改めて河の臭さに気付かされるんだ。あー、やっぱ臭いじゃんって。


 河幅もどんどん広くなってきて、船の上から見ると河というよりは湖に見えてしまう。ここまで来ると橋はほとんどなくて、河を渡るのは舟渡しになるようだ。そのため河の流れに沿って行き交う船と河を渡る舟が交差することになる。よくぶつからないよね。たまにシンバルみたいなのでバシャーンバシャーン音を鳴らしているから、音で情報をやり取りしてるのかな?



 船で移動中、鳥籠メイドさんは相変わらず私に言葉を教えようとしてくる。初日に酔って吐いちゃったから、最初のうちはカードゲームみたいな感じで単語を教えてくれていた。今となっては私も少しの単語は習得したのだよ。ふふふ、私はどうやら未知の言語も習得してしまえる秀才だったようだね。


 何日も船に乗ってさすがに慣れてきたのと、ある程度言葉が分かってきたこと、それから私が浮いていれば揺れの影響がないことから、今は絵本の読み聞かせをされても酔うことはない。


 そうしてここ何日かはまた初日のような絵本読み聞かせが始まっていた。魔王を討伐の旅に出た勇者の話とか、鳥に乗った王子様がドラゴンを倒す話とか、全体的に冒険活劇が多いね。鳥籠メイドさんの趣味かな? 今日読んでいるのは妖精がメインの絵本だ。たぶん前の町で新しく仕入れたんだろう。できたばっかりの新品な感じがする。


 絵本の内容は、ある日お城にやってきた妖精が魔物の軍団から街を救う物語だね。ブタ顔マッチョ軍団に街が襲われて絶体絶命、そんなときに妖精の加護を得て剣士と弓士と魔法使い3人でブタ顔マッチョを無双して街を救ってハッピーエンド。妖精はその功績を誇ることもなく人々を見守り続けるのだった、完。


 私だったらその功績、誇りまくっちゃうけどね。褒賞とか当然要求する。それに絵本の妖精は結構アホだ。人間の剣士に剣を与えるのは良いけど、与えた剣が妖精サイズなのだ。おかげで剣士は爪楊枝みたいな剣で魔物と戦う羽目になっている。1番盛り上がるハズの戦闘シーンが爪楊枝で台無しだよ。



 過去の実話なのか創作なのかは分からない。でもこういう話って街を救った剣士の人がお姫様と結婚してめでたしめでたし、がセオリーだと思うんだけど、剣士の人は宝剣をもらっただけってのがヤケにリアルだ。しかも弓士と魔法使いの人なんて何ももらってない。


 仮に過去の実話が元となっているんだとしたら、その過去の妖精はだいぶ私に近い暮らしをしていたっぽいね。お城でのんびり至れり尽くせりだ。私がお城にすんなり受け入れられたのはこの絵本の妖精のおかげかもしれないな。でかしたぞ絵本の妖精。アホだけど。


 そう言えば何か功績を称えられて剣を貰うって、お酒マンを思い出すな。でも絵本の剣士は若いイケメンだ。飲んだくれ中年のお酒マンには似ても似つかないね。



 ちなみに絵本の内容を把握できたのは言葉が分かったからじゃない。絵からの推測だよ。でもまぁ、そんなに間違ってないと思うけどね。


 この絵本で分かった衝撃の事実は、アシェールラが私の名前ではなかったことだ。もうびっくりだよ。どうやらアシェールは妖精って意味っぽい。他の絵本やカードでも妖精は全部アシェールだったから、個人名でないことはもう確定だ。後ろに付く「リ」とか「ラ」はたぶん敬称だね。


 つまり私はずっと妖精様と呼ばれていたってことだ。そして街の人からは愛称やあだ名ではなく、単に妖精と呼ばれていたと。ぐぬぬ。



 そうして絵本を読んでもらっていると、潮の匂いがだんだんと強くなってくる。今日か明日くらいには海に着くのかなと思っていると、午後に海、そして海の前に広がる港町が見えてきた。


 港町に近付く頃にはすっかり夕暮れ時になっていて、世界がまっ黄色に染まっていた。町なんて黒いシルエットしか見えない。海は北で太陽は西だから、海がキラキラ光るなんてことはないけれど、まっ黄色に染まった景色はなかなか壮大だ。普段落ち着いた雰囲気の見習いメイドちゃんも年相応にテンション高くはしゃいでいる。船員さんたちが慌ただしく行き交い始めた。そろそろ停船だね。


 さーて、港町はどんなところかな?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング
↑一日一回クリック下されば嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[良い点] 絵本の妖精はどうしてつまようじみたいな剣を作っちゃったんでしょうね。 不思議だねぇ、アシェールラ?
[気になる点] これ妖精さんに言葉を覚えさせるより鳥籠メイドさんが「妖精語」を学んた方が早いのでは?鳥籠メイドさんならすぐ翻訳役が勤まるはず、そもそも妖精さん一度も声を出したことないか...
[気になる点] 妖精さんは今まで一度も発声してないですよね? 言語以前に喋れるんでしょうか
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ