夏の回診
三題噺もどき―よんじゅうなな。
お題:スイカ・和室・医者
夏の日差しがヒリヒリと、肌を刺す猛暑日が続く。
僕は小さな島に住んでおり、そこで唯一の医者として働いている。
ギー、ギー、
(そろそろメンテナンスをしないと限界…)
坂道を漕いでいると、汗が吹きだしてくる。
毎日、自転車を漕ぎながら、家々を周り、おじいちゃんやおばあちゃんと話をしながら、診察をしていく。
それも、終わり、診療所兼家にしている小さな日本家屋に帰り着く。
「あっついなー。」
ぼそりと呟きながら、昨日島のおばあちゃんに貰ったスイカを取り出す。
(あのおばあちゃん元気すぎる)
そりゃもう、診察よりお話の時間が長いぐらい。
けど、その会話も大切だったりする。
冷蔵庫の中で冷えきったスイカは、手に持つだけで涼しくなった気がした。
台所に立ち、スイカを四等分にして、更にその半分だけを持って、この家で一番涼しい(であろう)和室へと向かう。
海に面しているその部屋は、風に吹かれて、軒先にかかっていた風鈴が涼し気な音を奏でていた。
爽やかな畳の匂いが広がるこの和室は、僕のお気に入りの部屋だったりする。
扇風機をつけて、畳の上に座り、スイカに口を付ける。
シャク―
耳触りのいい音が響く。
冷えきったその赤い果実を口に運ぶたび、上がりきった体温を冷ましていった。