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友達から聞いた話

作者: 砂藪


 友達の女の子から聞いた話なんだけど。


 心霊番組を見ていた兄と妹がいたんだけど。

 番組が終わって、先に風呂に入った兄が妹へと風呂に入るように促すが、なかなかソファーから立たないの。


*


「早く風呂行けよ」

「だって、怖いんだもん」

「はぁ?」


 俺は目を丸くした。中学生にもなって心霊番組を見て怖くて風呂に入れないと妹が言い出すとは思わなかったのだ。


「待ってて!風呂の外で!」

「ええ……まぁ、いいけど」


 これが自分が小学生で妹が幼稚園の頃だったら一緒に入ったりしていたのだが、今の自分は高校生だし、妹は中学生だ。一緒に入るような年齢ではないし、だいたい自分はもう風呂に入ってしまっている。

 妹が風呂に入っている間、俺は脱衣所で風呂場の磨りガラスに背を向けてスマホゲームをし始めた。風呂の中からはシャワーの音がする。


『いるー?』


「いるよ」


 シャワーに紛れて聞こえてきた確認の声に応答する。どうやら、俺がいると見せかけていなくなってないか不安になったらしい。

 スマホゲーを進めているとまたシャワーに紛れて声が聞こえる。


『いるー?』


「いるって」


 二度ほど確認をとって、また数分後に声がする。


『いるー?』


「だからいるって言ってんじゃん。お前、どんだけ怖がりなんだよ」


『いたー』


「うん、だからいるよって」


 けらけらと笑いながら返す。しばらくして妹が「もう出るから」と言ったので俺は脱衣所から出て、キッチンへと行った。冷凍庫から個包装された棒アイスを取り出して食べていると、バスタオルで髪を拭きながら妹がリビングへとやってきた。


「何度も確認して、俺がそんなに薄情だと思ったのか?」

「え?確認?」

「ほら、何度も「いるー?」って確認してたろ?」


 説明しても妹は分からないらしく、俺と妹は首を傾げた。妹は困惑したようにジップロックに入れたスマホを俺に見せてきた。


「私、風呂だと音楽流してるからお兄ちゃんの声全くしなかったし、別にいなくなってても気にしないんだけど……」

「え、だってお前、俺に……」

「もしかして、怖がらせようとしてる?そういうのいいから」


 妹は顔をしかめるとさっさと自分の部屋に行ってしまった。


「じゃあ、俺が話してた相手は……誰だったんだ?」



 その後の話?


 え、知らないよ。この話を教えてくれた妹ちゃんは引っ越しちゃったし、最後に話したのは妹ちゃんのお兄ちゃんの葬式だったから。


 だから、この話はおしまい!


 ああ、また聞こうとしても無駄だよ。妹ちゃん、引っ越しちゃったみたいだから。夜逃げって言うんだろうね、ああいうの。




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