危ないやつ
今回は、数字が物語を紡ぐ回です。長くってちょっと判りにくいかもしれませんが、図をつけましたので、性別と年齢で死ぬリスクが変わっていくことを、イメージとして掴んでいただければ幸いです。中盤以降は読み飛ばしての差し支えないかな?なを、引用資料は後書きに記載しています。
少し、時間をかけてネタ探しは続けている。パブで飲んでるだけだって?で、家族情報収集を集めているのはなんのためだって??
まあ、下の図を見てよ。縦軸は一メモリ100, 1,000...って10倍ごとになっているから、下の方の変化が大きいように見えても、実際の数は数百の差しかなく、上の方では万単位の変化になっていることはちょっと注意してね!
これは、2017年の日本における性・年齢別総死亡率だよ(*1: J国)。
死ぬリスクは大きく年齢に依存しているのよ。生まれてからの順にいくよ!
新生児期:ただし、短期間すぎるので、上図からは読み取れない。まあ、0歳児の死亡率が高いことから、類推してね。生まれてから生後28日までの死。経済・衛生・医療・社会の状態によって大きく変わる。日本は世界で最も低いの(0.09%)。それでも発生してしまう。重要臓器の奇形とか超未熟児なんて、どうしてもあるものなの。そちらのWikiだと4.56%(日本の50倍)という国が最大だけど、社会体制が崩壊して、統計も取れない国もあるからね。これでもましな方だと思うよ。こればっかりは、社会が悪い...って言っていいよ。でもそれは、その社会に属する大人の責任だからね。その社会でなんとかするんだよ。知らないよ、私は。で、一応この時期を乗り越えれば減っていく。
乳幼児死亡率:生後28日から5才までね。日本では2才ぐらいになると、あんまり死のリスクを考えなくてよくなるね。これから、父親、母親になる人、新米パパママここまで子供が育ったら安心していいよ!
まあ、この後しばらく変わらない。ただし、15才から30才ぐらいの青年期の間、また死亡率は高くなる。特に男性の死亡率が上がる。左から7番目の青丸(15才から19才の男性)がいきなり高くなって、青線の上になっているでしょう。まあ、社会参加するけど経験不足、そして体力のある若い男性は、比較的危険な肉体労働を受け持ったりする。それに加えて、男性も女性もやんちゃしちゃったり...女性は出産で死ぬこともある。いや、現代日本だと出産で死ぬことまずないよ。とはいえ亡くなる人はいる、年間に50人ぐらい。そんなことで医者を訴えたら、産婦人科医いなくなっちゃうよ。だから、それもその人の運命と考えて諦めてね。こっちの世界じゃ結構初産で死ぬ。衛生状態も良くないし、感染症に罹ると手の施しようがない。
あと戦争とか、戦争とか、戦争とか...この時期の男性の死亡率が突出する場合は、大抵戦争が原因だね。あとで別の国についても、紹介するから、よかったら比べて確認してね!ほんと、いやになるよ。色々不満や不安はあるだろうけど、いい国なんだよ日本は。なかには、こちらの世界よりもひどい国もあるから。
ここをから30才ぐらいはあんまり変わらない。だんだん落ち着いてくるからね、大人になるってことだよ。
まあ、この30才あたりの死亡率というのが、大体その社会における死亡率の基本になるんだ。青線、赤線は37才から57才の死亡率を統計的に結んで(回帰)、それを左右に伸ばしたものだけど、丸とよく一致しているでしょ?10才歳をとるごとに、死亡率は男性が2.6倍、女性が2.8倍になるという関係にあるの。
図から読み取れるのは約2.5倍ぐらいだけど、歳をとるといろいろな病気、特に高血圧や2型糖尿病といった慢性的な病気や、脳卒中や心筋梗塞といった突発性の病気ではあるけど、それによって組織の部分的な壊死が生じちゃって、それがずっと残るというような病気になったりするの。こういったものも死のリスクを高める原因になる。でも、ここでは、それらを一切考えていないから、10才あたり2.5倍になるっていうのは、ちょっと年齢を過剰評価していることになるんだよ。だから、とりあえず10才あたり2倍になるってことにしよう。いや、計算がめんどくさいからからじゃないよ...あの神様と波長が合うだけあるなって?うるさいよ!
要するに30才女性の死亡率に対して、70才女性の死亡率はざっくりと 2 x 2 x 2 x 2 = 16で16倍になるってこと。90才だと64倍だね。男性は女性の2倍と考えていいよ。40才ちょっと前の男性(青丸)から、右に水平線を引いてごらん?1つ飛ばしで、女性(赤丸)にぶつかるでしょ?60才までだったら、どこでやってもそうなるよ!そう、男性の50才って、女性の60才と死のリスクが一緒ってことだよ。
だから、70才男性の死亡率は30才女性の、32倍ってことになる。LGBT?知らないよ!普通、少数者は切り捨てられるんだよ?「誤差の範囲」だからね、悪いか!
じゃあ、日本以外の例を見てみよう。資源国なのだけど、国内は結構グダグダ、おまけに国際紛争を抱えている国(I国)の、2016年のデータがあったんだよ、この年だけ。いや、きちんと報告できている国の方が、少ないんだけどね。それなのに小さな島国なんかは、きちんとデータをまとめているんだ、人口管理が容易なんだろうけど、ちょっと驚いたよ。
前の図と比べてみてね。乳幼児死亡率も子供の死亡率も、日本と比べてはるかに高いよね。しかも青年期の男性の死亡率が高く、40前ぐらいまで高くなっている。社会が安定せずに、暴力的な圧力がかかってたんだと思うよ。ただ、女性はそれにあまり巻き込まれてはいない。ある程度の規律は保たれているってことだ。いや、それでもこのデータを出せただけでも、一旦は落ち着いた状態だったと思うよ。この前後ではデータを出す余裕もなかったんだもん。多分、もっとひどかったんだよ...
でその後、年齢のと死亡率の関係が一定になっているよね。線の上に丸が乗っかってるでしょ?男性(青線)と女性(赤線)は10才歳をとるごとに、男性が2.3倍、女性が2.7倍高くなるという関係にあるの。ただ、男性と女性の差が5歳ぐらいしかない。ってことは普通より女性の死亡率が高い。そう、いろいろあって女性というだけで、かなり制限がかかってしまう国なんだよ。合理的じゃないけど、知らないよ。その社会を作っている人たちの責任だよ。
ちなみに、昔は連邦だったけど分離独立して、その後自治区が軍事攻撃を受けた国(U国)でも10才歳をとるごとに、男性が2.1倍、女性が2.2倍高くなり、男性と女性の差は10歳という関係だったよ。まあ、この国も青年から中年男性の死亡リスクが高く、ちょっとわかりにくい関係だったけど。
あ、怪しい例も示さないとね。都合が良いことだけを示してもダメだよね。
最後まで、極端な人種差別が残っていた国(S国)。とはいえ現在でも「世界で最も不平等な国」とされ、人種による失業率の差は3倍、平均収入の差は5倍、被差別者で医療を受けれる人は10人に一人とされる(*4)。とはいえ資源国なんだよ、この国。しかも、金、ダイヤモンド、プラチナなんかだよ!ここだけを見ると羨ましいけど、現実は金持ちはとことん金持ちで、この人たちは先進国と同様かそれ以上の生活をしている。で、貧困層は生きるために他人を殺す。こうなると、いろいろとおかしくなってくることは想像できるよね?要するに大多数の人の、命の価値が低すぎるため、単一集団として扱うと基本設計から外れてしまうように見えるの。とはいえ、50才以上では、男女の死亡率の差が2倍という原則は保たれているよ。
ただ、40才ぐらい迄男性女性に関わらず、ともかく死亡率が高い。戦争より酷い状態だよ。戦争だと死ぬのは青年から中年の男性中心だからね。市街戦だと巻き込まれることはあるけど、基本、子供や女性は前線にはでないから、少しは安全だよ。だけど、この国では全面的に治安が悪いから、男性も女性も殺されているんだよ。こちらの世界でもここまでひどくないよ。王様、貴族、騎士、平民と身分差はあるけど、犯罪はないから通常時に殺し合いは起こらない。戦争はある。それはしかたない。
まとめると、こうなる。
10歳年をとると死亡率はざっと2.0倍となる。で、例外もあるけどある程度環境で理由づけできるから、男性と女性の死亡率の差は10歳分ということになる。性・年齢と死亡率の関係には、人種差なんかないってことだよ。いや国によって違うだろうって?いい加減な世界さ、倍程度の差なんて誤差だよ!
うん、別に人間だけじゃないはずだよ。短命な生物では時間軸が短くなり、長命な生物では時間軸が長くなるだけ。ネズミだって象だって、哺乳類であればどの動物も、心臓が20億回打ったら寿命だよ(*2)。共通した基本設計ってやつだ。そして心臓が1回拍動するごとに、死ぬリスクは上がっていく。
こちらの世界でも、ヒトは母親のお腹の中で発生し、生まれてから最初は母乳を飲んで育つ。そう、おんなじ哺乳類ってことだ。だから、いろいろな基本設計は前世と共通しているはず。ただ、社会環境が違うだけ。悲しいことに、こちらは日本よりは生き延びるための環境が悪いから、乳幼児死亡率や青年期の死亡率が多分高い。ただ、女性が生きにくい世界ではないから、男女の死亡率の差は10歳のはず。こういったことを、調整するためにパブで情報収集をして、イメージを掴もうとしていたの。けっして、単にお酒を飲んで、酔っぱらって、あの神様の憂さ晴らしをしたかったからじゃないよ?本当だよ!
要するに、哺乳類としての死亡リスクについての基本設計に基づいて、こちらで取集した情報で、若干の修正を行うだけで、この世界の死亡リスクに関する情報になるってことだ。で、あの神様からお賽銭を巻き上げる。
区切りがいいから10才毎で説明したけど、1才あたりにでは1.072倍(7.2%増加)だよ!1.072^10 = 2.004231だ。もちろん1日当たりとか1時間あたりとかもっと細かく切ってもいいよ。めんどくさいから私はいやだけど。
試験にでるからね、7.2%!いや細かすぎるからほとんど使わないね、ごめん。細かくすると、複雑で使いにくいって文句言われるのよ...まあ、便利な数字を紹介しとくよ。大抵の「とある医術の危険計算書」は、これらの数字を1ポイントにして、計算しているんだ。25%を1ポイントとするのが多いかな?5ポイントで3倍になる。
大抵、買い物とちがってポイント貯めた方がいいわけじゃないからね。多くポイントためると、より多く病気になりやすくなったり、死にやすくなったりするってことだから、ポイント貯めないように気をつけてね!まあ、加齢や家族歴はしかたない。諦めることも大事だよ!
30才だと、生命に影響を与えるような病気を持っている人って少ないから、無視して(誤差だよ、誤差)、死のリスクは大体、高血圧やII型糖尿病(こういうのを危険因子という)で、それぞれ2倍になる考えていいから、高血圧、糖尿病持ちの70才男性の死亡率は、30才女性の128倍ってことになるね。あと3つ2倍になる危険因子(脳卒中、心筋梗塞の既往や慢性腎不全の既往など)を持っていれば、1,000倍こえちゃうよ!
ようするに、社会には死ににくい人と、死にやすい人というのが、混在しているってことよ。そこに死亡率を3倍にするような、病気や負傷が生じた場合、死亡率1倍が3倍になる人と、1024倍が3072倍になる人がいるということね。言い換えると、50歳女性であっても死亡率は90歳男性と同等っていう人もいるわけ。まあ、死にやすい人は、なにかあったら簡単に死んじゃうってことだよ。しかたないよね!
役所で調べればいいじゃないか...ってどういう風に役所が記録しているか、判らないでしょ?案の定、新生児や乳幼児の死は記録されていなかったよ。主に徴税目的なんだろうから、働くこともできず死亡する可能性が高い時期の死は、管理対象外ってことだ。いや感覚って大事なんだよ?行政がまとめたような権威づけされた数字をみて、それが正しいって盲信すると、足元を掬われるんだ。あれ、おかしいぞ?って感じる情報を用意しておかないと、簡単に間違えちゃう。ほら、パブがよいも無駄じゃなかったってことだ。もちろん、必要経費だよ。
で、聞き込みによる新生児死亡率と、役所の記録から推定した、青年期の死亡率とベースになる死亡率を元に、図をいじってあの神様に報告した。要するに、全体としての死亡率を4倍、上にシフト。そして、乳幼児死亡率をさらに、上へ。青年期の死亡率も上にね。男性はさらに上。感触的にこれでほぼ、大丈夫。まあ、誰も正しいかどうか確認できないから、全く問題ない。
で、あいつに報告。ついでに、お賽銭も分捕った。だから、お賽銭には高額通貨を入れてください!ほんとお願いしますよ。財布、ちょっと大きな奴を買い足ししておいたんだ。まあ少し収益が上がったので、しばらくは安心して生活できるよ。
生物に共通するこういった規則性って、結構あるんだよ(*2)。そもそも生命自体が複雑な科学的、物理的反応の上に成立しているからね。例えば、温度が10度上がるごとに、酵素反応の速度は大抵2倍になる(*3)。ヒトの体温が36度で、鳥の体温が42度ということは、同じ筋肉量で鳥はヒトの1.5倍(1.072^6 = 1.52)の力が出せるってことだ。恐竜が変温動物(体温22度とする)か恒温動物(鳥と同じ42度とする)かが注目されるのも、これが理由。同じ筋肉量でも体温が違うだけで、出せる力が4倍違う。そう、トレーニングして筋肉をつけるっていう手もあるけど、もし、体温を46度できれば2倍力持ちになれるよ。簡単だよね?まあ、体温が40度超えたら、脳や神経がおかしなことになちゃうんだけど...世の中デタラメじゃないってことだ。そういった規則性を理解していると、生き延びる確率は上がるってことだよ、たぶん...
*1: WHO Mortality Data base. 15Dec2019と、各国ごとの性・年齢別基準人口であるPopデータより作図。死因別の死者数を合計し、該当国の該当年度の基礎人口で除し、100万を乗じて算出した。なお、乳幼児期を除き5歳づつの区分なので各区分の中央の年齢とした(5-9才は7才としてあつかった)。
*2: 本川 達雄 著。ゾウの時間 ネズミの時間 サイズの生物学 中央新書
*3: 温度計数(Q10)
*4: 産経新聞 2020/5/27