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死のリスクをどこまで許容できるか

 仕事してるよ、ちゃんと。あの、暇を持て余している、金勘定の好きな神から与えられた、生きっているってことがよくわからないってやつ。


 生きていくことを考えるためには、死んでないこと、すなわち死のリスクを考えればいいってことだよね。背理法だね。ちょっと違うけど。ジヒドロゲンモノオキシド毎日飲んでるでしょ。ほら、みんないつかは絶対死ぬね。じゃあ、許容できる日常生活での死のリスクを考えてみよう!


 前世の日本では、海開きの日には必ず水死のニュースが流れてた。遊ぶだけでも死ぬリスクはあるのよ。スキーや登山はもとより、ジャングリジムやブランコだって死ぬリスクはある。ただ、それが小さいってだけだよ。ディスクワークより肉体労働系の仕事の方が、死のリスクは上がるよね。とはいえ死ぬリスクがあるから何もしないなんてことはできない。だって外に出て食料を手に入れるだけでも、車が突っ込んで来る可能性はあるでしょう?一人で引きこもってたら、飢え死にするよ。そもそも、毒キノコだけじゃなくて、牛乳、卵、豆、小麦、エビ、カニなどを食べても死ぬことはあるよ。あれ、食べることもできなくなっちゃう?


 うん、こまった...じゃ、まず生きていくためには、その社会で許容できる死のリスクっていうのを考えてみよう。

 その社会で生活を行うために「便利だから利用しているけど、危険なもの」により生じる死のリスク、っていうのが一つの目安かな?要するに、死んでしまうことがあるほど危ない、ってことは解っているけど、広く一般に使われているもの。交通事故死なんかがいいんじゃないかな?あまり、性別・年齢の影響受けないし。車便利だよね。速いし、重い物も運べる。こちらじゃ馬車だよ。遅いし、そんなに運べない。ほんとに車は便利だよね。だけど、人を轢いたり搭乗者が死んだりすることがある。それ、みんなわかっているけど使っている。


 いやー減ったんだよね。日本の交通事故死。7,000人/年ぐらいと思っていたら、2019年は3,215人か。ざっと30/100万人・年だ。要するに、1年間に100万人のうち30人が交通事故で死亡するってことだよ。事故が発生してから、24時間以内の死亡だけしか集計されないから、実際にはもっと多いのだけど...集計基準は変わってないから、10年前に比べてほぼ半減している。うん、日本人の命の価値が10年間で2倍高くなったってことだね。良いことだよ。だから、ちょっと死人が出ただけでも大騒ぎするのは判るわ。


 普通もっと死ぬよ?アメリカは、日本の3倍ぐらいだったはずだ。まあ、北欧なんかは、日本よりちょっとだけ交通事故死のリスクが低いけど、交通量がそれほど多くないからね。前世の世界では、日本はトップクラスに命の価値が高いってことだよ。自信を持っていいと思うよ。


 前世の日本では食べたり、遊んだり、仕事したりといった、活動により発生する死が、30/100万人・年以下であれば問題とはならないってことだね。これ以下の死のリスクなら、気にしても仕方ないってことだよ。大抵の仕事や遊びは大丈夫だし、いろいろ食べれるよ!!


 さて、今私はこちらの世界で暮らしている訳でだから、こちらの世界での情報収集を行うよ。手っ取り早く情報を集めるには、図書館があればいい。とはいえ宿の人は、図書館を知らなかった。そもそも、図書館という概念を理解できないって感じ。本をいろいろ集めたところって言っても、通じない。やっぱり、一般的じゃないってことはわかったよ。で、いずれにしても調査拠点を変えるつもりだったので宿を引き払ったあと、役所に行って聞いた。流石に役人は知っていた。ちょっとたらい回しにされた程度だ。前世の基準から見ても、役所としての標準的な対応だから全く問題ない。この国の中央役所に設置されているらしい。要するに図書館として独立しているものはないってことだ。うーん、行政資料も確認できるかな?そうしたら助かるのだが。


 馬車を雇い、中央に移動。結構広いんだよ、市街壁内とはいえ。最初の宿は門の近くだったし...御者に宿のお勧めを聞き、そこを今日の宿とすることにした。いや、時間かかるのよ、何をするにしても。図書館の場所を調べるだけで1日掛りだよ。しばらく、この宿に滞在することになるかな。で、パブへGO!


 翌日朝から中央役所へ。うん、官吏は無料だが、一般人は有料ということで、金を取られた。まあ、必要経費だ仕方ない。行政資料も閲覧することができた。もちろん前世みたいに詳細なものではなかったけどね。その代わり、プライバシーなんかはないから、個人情報だだ漏れだったけど。まあ、そんなもの知ったところで私には何もメリットはないから気にしない。そして事故死(こちらは自動車ないから乗馬、荷馬車が関係したやつね)の情報はあった。やっぱり、前世の日本とは比較にならないぐらい多かったよ。昨年1年間で、180人の事故死が確認できた。この街の人口が187,000人であることも確認できた。17世紀のロンドンぐらいだ。となると事故死のリスクは963/100万人・年ということだね。日本の30倍だ!人の命がそれだけ安く、死のリスクを気にする必要がないってことだ。この世界は前世よりもっと自由だったよ。ある程度危険な仕事だって平気だよ。食べ物痛んでたって平気だね。ほんとよかった!


 さて、報告だ。これになんの意味があるかって?こちらの世界では、年間1,000あたり一人亡くなる程度の災害は、通常運転ってことだ。ということはその10倍ぐらいの死のリスク、100人に一人亡くなるぐらいが災害、10人に一人亡くなるぐらいだと大災害ってところだよ。災害ぐらいなら気にする必要ないけど、大災害を越えるようなことになると、この世界に神として干渉するべきだろう。あの神様(ダメなやつ)になにができるかは知らないけど...まあ、あいつがこの世界を管理していく上での、参考ぐらいにはなるってことだ。あいつがきちんとこの世界を管理する、とは考えてはいないけど。暇つぶしの話のネタぐらいにはなるだろう。


 そんな簡単な調査結果なんて、正しい結果ではないんじゃないかって?いいんだよ。所詮、ヒトは真実を知ることはできないんだから、だいたい...で十分なんだよ。神様はそんなもの当然知っているんじゃないかって?いや、最初にあいつ言ったよ、一人一人が生きているか、死んだかなんて興味ないって。だから絶対に知らないよ。ましてや、一人一人が亡くなった原因なんて確認している訳ないじゃない。自信をもって断言できるよ。気にしたこともなかったから知ってる訳ないって。


 そうそう、今日はパブにはいかないよ?そりゃ、あいつは一応上司だ。酔っ払って上司に仕事の報告はしないよ。常識人だよ、私は。休肝日、大事!まあ、財布を服の中に入れて寝ることにしよう。


 無事、一仕事を終えたよ。ちょっとした騒ぎ(こうしょう)はあったけど。あいつ、あんまり抵抗しなかったよ。硬貨の山が混ざる程度しか。そして、ちょっと嬉しそうだった。自分でやればいいのに、って言ったらマイルールにおいて、反則らしい。目が覚めたら、財布にあいつから奪った硬貨はちゃんと残っていた。相変わらず銅貨がほとんどだけど...ねえ、お賽銭には高額通貨をいれてよ!

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