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そのときのミック

2章終わりの間話となります。短いです。

 日課の鍛錬を終えて朝食をとったあと、今日の納品予定になっている【ネズミ除けの香】の数量をチェックする。在庫があるなら追加で売ってくれと言われることもあるので、ある程度の予備の用意も抜かりない。


 思いつきで始めてみた小遣い稼ぎだったが、固定客がついてからは噂が噂を呼び、今ではこの商売だけでやっていけそうな気配すらある。まあ、いつまでも商売のタネが割れなければの話だが。この1年のうちに後をつけられたことが幾度かあるので、どこかの大商人かあるいは貴族あたりが、うまい儲け話をかっさらおうとしているんだろう。


 やり方は気に入らないが、もとより本業ではないし、そもそも自分だけのアイデアでもないのだから、そのときはそのときだ。きっかけになったあの出来事を思い出すたびに、俺は今でも笑みが浮かぶらしい。久しぶりに会って必ずこの話をするたびに、ヤンクスが必ずそう言ってくるのだからおそらくそうなのだろう。いま自分で口角を触ってみても、確かに少し上がっている気がする。


 午後の納品の時間までをどう過ごそうかと決めかねていたら、扉をノックする音が聞こえた。最初に2回、そのあと素早く3回の特徴的なノック音。冒険者ギルドの職員のようだ。


「……今日はギルドへの納品だったか?」

「いいえ、別件でお邪魔しました。入っても?」

「ああ」


 ギルドでもよく見かけた女性職員だ。何かの緊急依頼だろうか?


「さっそく用件に入らせていただきます。メリヤスの冒険者ギルドからの指名依頼をお持ちしました」

「メリヤスの……? ホゲットではないのか」

「このところ、うちは至って平和ですからね。ミックさんたちが定期的に間引きをしてくれるおかげで、街道に獣や魔物の害もありませんし」

「効果が出ているのなら何よりだ」


 その間引きにかこつけてネズミ除けの香の素材を失敬してきているのだが、今のところ冒険者ギルドにもバレてはいないようだ。バレていれば例の魔物の討伐依頼がギルドから出されているだろうし、その前に一度ぐらいは俺のところに話を持ってくる程度の信頼関係はあるはずだ。


 クリエが持っていた魔物除けをヒントに作ったネズミ除け。その材料は、ホゲットから少し離れた森の奥に群棲するグラスバイパーの肝だ。街道ではまずお目にかからないし、肉にも皮にも特段の需要がない魔物なので、討伐依頼が出されるようなことはまずあり得ない。


「こちらが依頼書になります。ギルドからというより、メリヤスの冒険者からギルドを通しての指名ですね」

「冒険者からの……? どうして俺に」


 受け取った依頼書に目を走らせ、依頼者の名前を目にした途端、体温が一気に上がったような感覚に陥った。


「……ミックさんがそんなにご機嫌そうな顔になるの、初めて見ました。そんなに割の良い依頼なのですか?」


 頭の中が少し混乱していて、職員が何を言っているのか少しの間わからなかった。


 そうか、俺はやっぱり笑っているのか。


「この依頼は受けよう。メリヤスにそう伝えてくれ」

「わかりました。いっぱい儲かっても、ホゲットの仕事も続けてくださいね?」

「その心配はない。儲けるどころか、こっちが払う番だ」

「……はい?」



 俺たちが忘れるわけがないのは当然のことだが、お前の方でも俺のことを覚えていてくれたのか、クリエ。まあ、借りたほうが忘れても貸したほうは忘れないという言葉もあるのだから、当然か。


 それでも、クリエに覚えられていたということが嬉しい。


『――その時にはとんでもない借りを返させられるかもしれんぞ?』


 そういえば、そんな事を言ってた奴もいたな。ヤンクスだったか? ミオではないな。


 ああ、俺だったか。

どうにか2章の区切りまで来ました。もうちょっと局面が変わるような感じでヒキにしたいところでしたが、第3階層の探索が始まるまでに説明っぽいの全部終わらせときたいなということで、本編が説明パートで終わってしまうという激渋なことになってます。「むしろ大人っぽくていいヒキだな?」って誰か言ってください。心の中でいいです。


3章のぼんやりした流れは決まっていますが、2章よりはテンポを早めたいので、数日ほど話を練るお時間をいただくかもしれません。のんびりダラダラした話ですが、少しでも気に入ってくれた方がいらっしゃいましたら、ブクマをしてお待ち下さい。


もちろん評価、感想、誤字報告もお待ちしてます。今後ともよろしくお願いします。

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