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最初の街 アグセム

あらすじ:ゴルムが空気だった

「あぁ!やっと入れた!」


 アグセムへ無事?に入る事が出来たが、当然の事ながら、俺には家は無い。宿を借りるにもお金がない。

 どうしたものか……。


「おい、お前今からどうするんだ?」

「……どうするのがいいと思う?」


 素で聞き返してしまった。


「しらねぇよ。……とりあえず宿が決まるまで俺の家にでも来るか?」


 ……この者は神か?

 俺はゴルムの提案に乗る事にする……前に少し考えた。俺はこの世界に来てから、ゴルムに頼り過ぎている。これ以上何も返す事もせずに頼っていいのだろうか。

 俺はゴルムをある程度信用している。だからこそ、これ以上迷惑を掛けるのは申し訳ない。だから俺は……。


「あー……その提案はすっげぇ嬉しいんだけどさ、これ以上お前に迷惑を掛けられないよ」

「……そうか。俺はお前に命を助けられてんだぜ? この程度迷惑になんねぇけどな」

「いや、あれは森の飯と此処への案内でチャラだよ」

「お前がそう言うならそれでいいが……大丈夫か?」


 こいつマジでいい奴だなぁ。

 こいつとは、今後もいい関係を築いて行きたいものだ。


「あぁ……まあ何とかなるさ」


 俺は軽く笑ってそう言った。

 それを見たゴルムも軽く笑い、言い返す。


「そうか。まあ困ったら何でも言えよ。出来ることは限られてるがな」

「ああ。困った時は遠慮なく呼ぶから覚悟しといてくれ」

「はっはっは! そんじゃあな!」


 後ろを向き歩き出すゴルムを、俺は見送る。


 さて、まずはギルドに行って、色々登録やらするか……それとも宿を探して頭を下げるか……。


 宿を探すにしても、無一文の俺を泊めてくれるような優しい宿じゃないと意味がないし、それを探すのはちょっと現実的じゃない。

 よし、ギルドに行こう。ギルドなら宿とかいい場所を知っているだろうし、なんだったらお金も貸してくれるかもしれないしな。

 そう思い俺はギルドに向かって歩き始めようとした時、俺は大事な事に気が付く。


「いやギルドどこだよ!」


 宿を探さないためにギルドに行く計画だったのだが、結局ギルドも探すなら話は別だ。

 仕方ない。かっこよく別れた直後で非常にダサいが、ここは遠慮なくゴルムに頼ろう。

 そう思いゴルムを追いかけてみるが、時既に遅し、ゴルムの姿を見つけることが出来ない。

 俺はめちゃくちゃ焦りつつ周りを見渡す。しかしもう既に日が落ち掛けており、薄暗くなっている。

 薄暗い中、知らない土地で、見た目すら知らない建物を探す事が、どれほど無謀で危険かなんて考えないでもわかる。


 ……え? 最初の街の夜が野宿?


 いやいやいや、そんなアホな異世界転移の話なんて聞いた事ないぞ。神様少しは配慮してくれよ!

 内心叫びつつこの世界に来た時を思い出す。

 異世界に来ていきなり襲われ、説明無しに戦い、街に入るのに半日、街に入ってこの状況……。

 

「あぁ……あれに頼っちゃダメだ」


 何か救いが有るかもと言う期待を捨て、俺は今夜寝る場所を探しに行く。

 この街の治安がわからない以上、細い道や裏路地は避けて大きい道を歩く。

 街並みは日本と比べると、同じ場所を見つけることが困難なほどで、どちらかと言うと一昔前のイギリスに近い印象だ。

 道の脇には片付けをしている商人がかなりいて、服装はゲームで出てくる村人たちが来ている服に近い印象だ。


 本当に異世界なんだなぁ……。


 街並み、服装、それらから俺は異世界に来たことを再認識しつつひたすら歩く。

 しかし、歩いても歩いても俺が野宿できそうな場所はなく、時間だけが過ぎて行く。


「いやいや……こんな知らない場所で野宿とか馬鹿じゃないのか?」


 俺は野宿を諦め代案を考えるが、考えても考えても名案は出ない。

 寝ないで夜の街を探索というのも考えたが、知らない街を夜に探索するのはすごく嫌だ。

 どうする事も出来ず、途方に暮れていると、前の曲がり角から剣を持った女性が歩いて来た。

 その女性は、門番の方とは違い鎧を着ておらず、軽装で軍人と言うより冒険者と言った方がしっくり来る装備を着ている。そして歩いている姿は、武道を全く嗜んでない俺から見ても、強いと思えるほどだ。

 つまり、俺は冒険者を見つけた。

 冒険者であればギルドの場所も知っているし、安い宿も知っているかもしれない。

 あぁ!この世界で初めて希望を見た!


「ごめん! 待って! そこのお姉さん!」

「ん?」


 あぁ……止まってくれた。

 俺はその女性に走って追いつく。

 女性は見た感じ俺と同い年くらいの見た目で、正直可愛い。


「ハァ……ハァ……ごめんちょっとお願いがあるんだけど」 

「なに? ナンパに用は無いわよ?」


 ナンパに間違われるとは……。


「いやナンパじゃ無いんだ。ちょっと道を聞きたくて」

「ふーん。どこに行きたいの?」

「冒険者ギルドに行きたいんだけどさ、俺この街に来たばっかで場所がわかんないんだ」


 この人に付いて行けば色々解決だ。

 宿がないにしてもギルドならなんとかしてくれるだろう。

 不安が一気に解消されびっくりするくらい気が楽になった。


「へー。奇遇ね」

「……え?」


 え? 奇遇って言った?


「私も今日この街に来て、冒険者ギルドを探してたところなの」

「冒険者じゃないんかい!」


 俺の叫び声は街に響いた。

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