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準備運動ってなんだっけ

あらすじ:神は居た

 今日の朝はやけに目覚めがいい。何故かって? 今日は馬小屋じゃないからさ!

 藁を敷いただけの布団じゃなくてふかふかの布団で寝て、美味しい晩ご飯を頂いたから空腹でもない。そして寝巻きまで準備してくれたのだ。

 人間らしい生活には衣食住が大事だね。


 俺は大きく伸びをした後に与えられた寝室を出る。

 リビングに行くとエリスはもう起きていた様子で村長と談笑をしていた。


「やぁおはよう!」

「……おそようよ。何時だと思ってるの?」

「……朝8時?」

「もう昼よバカ」

「ハッハッハ、長旅で疲れておったのでしょうな。ご飯を用意してありますが食べますかな?」

「あ、お願いします!」


 そう返事をして俺もテーブルに着く。


「あのねぇここは依頼先なのよ? ちゃんとしなさいよ」

「いやさ、久しぶりのふかふかの布団じゃん? 寝心地いいじゃん? 起きれんじゃん!」

「気持ちは分かるけども! ちょっと気が緩みすぎよ。シャキッとしなさいよ」


 こんな感じでエリスに小言を言われながら談笑をする。

 テキトーに言い訳をしたが、気が緩んでるのも確かかもしれない。

 エリスの能力ならまだしも俺の能力は不安要素の塊だ。もう少し気を引き締めるべきか。


「よし! 今日も張り切って依頼をこなそう!」

「……え、何急に……キモ」

「おいお前それ素だろ! シャキッとしろって言ったのお前だろうが!」

「いや言ったけどさ……そうじゃない」

「泣くよ?」


 どうも気合の入れ方が違ったらしい。

 ちょっと心の端っこがポキッと行きかけた所で村長がご飯を持って来てくれた。

 湯気が上がっている暖かいご飯……荒んだ心が癒される。

 

「何やら盛り上がっておりますな」

「あ、すみません騒がしくして!」

「いえいえお気になさらず」

「今日の予定なんですけどエリスどうする?」

「そうね……とりあえず軽く体を動かして襲撃を待ちましょうか」

「そうだね、そうしよう」


 とりあえずの今日の行動を決めた俺たちはご飯を食べた後に、軽く体を動かす事にした。




―――――――――――――――――――――――――――



「さて何しようか?」


 外に出た俺たちは軽く準備体操をしながら、運動を決める。

 

「そうね……ただ走ってても退屈だし私と戦うって言うのはどう?」

「いや待て、自慢じゃないがエリスと戦いなんかしたら俺死ぬ自信あるぞ」

「本当に自慢できないし……大丈夫よ手加減するから」


 そう言ってエリスは木の棒を拾い素振りを始めた。

 俺はエリスの戦いは二度と見た。一度はチンピラを撃退した時、もう一度は試験でアルバと戦っている時だ。

 思い出すだけで勝てる気がしないし、勝負になる気が一切しない。

 そもそもエリスは俺程度の相手で運動になるのだろうか? それとも俺に試験のような動きを求めているのだろうか?

 そうなると能力を使って戦うべきか……? いやこんな所でいい目が出るのもなんか嫌だな。

 俺は能力を使わないで戦う事にして、エリスよ同じように木の棒を拾いエリスの方を向く。


「よし準備完了だ!」

「オッケー! じゃあ行くわよ!」


 その瞬間にエリスは走り出し、枝を振りかぶりながら一気に俺との間を埋める。

 一瞬ギョッとしたが、競争をした時にエリスの速さを体験しているので即座に反応し、振り下ろされるであろう枝を枝で防ごうと試みる。

 乾いた音が鳴りなんとか防ぐ事に成功しホッとした瞬間に腹部に強い衝撃が走り、俺は吹き飛ばされる。


「ゴホッゴホッ! オエェ!」


 イッテェ! 何が起きた!?

 エリスの方を見るとどうやら俺を蹴飛ばしたらしい。いや蹴りで吹っ飛ぶもんなの!? 骨折れてない? 内蔵大丈夫?

 しばらく悶絶しているとエリスが歩いて来て、俺の前でしゃがむ。


「うーん……今の枝を防げるならセンスはあると思うんだけど、どうも戦い方が素人なのよね」

「ゲホッ! いや、俺戦った事なんてほぼ無いし!」

「やっぱりそうよね? よっし私が鍛えてあげるわ!」

「……お前さっき手加減するって言ったよな? 死にそうなんだが?」

「……てへ」

「チェンジで!」


 痛みが引いたらまた戦う事になったのだが、どうやらエリスは手加減が下手な様だ。つまり死ぬ程痛い。というか死にそう。

 何度も何度も殴られ、蹴られ、もう俺の体はボロボロだ。


「お前マジで手加減覚えろ! 俺死ぬよ!?」

「だって手加減なんてした事ないもの!」


 くそう! このままじゃマジで死にかねん! こいつをなんとかしなければ!


 俺は能力を使う覚悟を決め、右手を前に突き出す。


「召喚! 神の六面体!」


《神の六面体の召喚に成功。神の六面体を使用してください。》


 いつもの様に時が止まり、サイコロが出現する。

 俺はサイコロを放り、出目を確認すると……。


《1。通常格を獲得。能力。投擲。投擲時、非常に短い距離での必中能力》


 ……終わった。

 何? 石投げろと? 非常に短い距離ってどれくらい? 1メートル? バカじゃないの?


 止まった時が元に戻っていく中で絶望しているとエリスが声を掛けてくる。


「能力使ったようね……その顔見るといい結果じゃなさそうだけど……」

「あぁ……俺ここで死ぬんだ……いい人生だった」

「ちょっと!? 流石にそこまで手加減下手じゃないわよ!」


 ひどく絶望した俺の顔を見たエリスはため息を吐く。


「もう、どんな能力だったのよ」

「投石だってさ……短い距離必中能力……短い距離ってどれくらいよ……投げるって何をよ……」

「あー……その枝でも投げたら?」

「お前余裕で避けるだろ」

「まあね」


 完全に反撃の術を失った。

 よし決めた。そこら中の砂やら石やら枝やら投げまくってやる。


 覚悟を決めてエリスの方を向き直した直後、声が響いた。


「ゴブリンだぁ!!」


 俺とエリスは目を合わせる。


「カズヤ! 行くわよ!」

「おう! ……あっ」

「どうしたの!?」

「……投擲」

「……」


 俺戦力になるだろうか?

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