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アスト村

あらすじ:面白さは大事

 しばらく馬車に乗っていると、何やら村が見えてきた。

 

「やーっと着いたー! ケツいてー!」

「……本当に馬車乗ったことなかったのね」

「そりゃ何時間も固いところに座ってたら尻も痛くなるって」

「私は慣れてるから平気よ」


 こいつの尻は鉄製か?


 そんな事を思っていると、急にエリスに殴られた。


「いたぁ! 何すんだよ!」

「絶対失礼な事考えてたでしょ!」

「え、冤罪だ!」

「誰の尻が鉄製だって!?」

「……俺顔に出てた?」


 すげぇ……こいつ人の心ピンポイントで読みやがった。


「やっぱり失礼な事思ってるじゃなぁい!」

「ぎゃあぁぁぁぁぁぁああ!!」


 前言撤回。こいつめっちゃ勘がいいだけだ!

 割とガチ目のパンチが俺に炸裂した。


―――――――――――――――――――――――――――


「いてぇ……超いてぇよぉ……」

「自業自得よバカ」


 村に到着した俺たちは、まず村長の元を訪ねることにした。村の人たちは他所から来た俺たちを邪険に扱うことなく、むしろ歓迎ムードで村長の元まで案内してくれる。

 思いっきり顔にアザが付いている俺に対してはむしろ、「あぁ……頑張れ」と言わんばかりの温かいような悲しい同情のような表情を向けられる。いや俺が悪いんだけどね。


 案内された先には1人の老人と、その周囲に若い男の人が数人立っていた。


「村長ー! 冒険者様が来てくださいました!」

「おぉ! ありがとうの。冒険者様方も遠路遥々よくお越しださいました」

「いえいえ! それが我々の仕事ですから!」

「この度は本当にありがとうございます。早速依頼の説明を……と行きたいのですが、男性の冒険者様はなぜ顔が腫れているでしょうか?」


 さっきエリスに殴られた時についたアザの事だろう。

 エリスをチラッと見ると、目が合ったような気がしたから即座に目を逸らし、誤魔化すことにする。


「あーこれは……まあ……色々ありまして……ははは」

「あぁなるほど。どこも女は強い、と言うことですな」

「そう、マジでこいつゴリ「あ?」……んん!何でもないですごめんなさい拳を下ろして」


 殺気って漫画の中の話だけじゃなくてマジであるんだ……横から俺に対してビリビリ感じるぜ……。


「はっはっは。これは頼もしいことですな」

「まあ……頼りにはなりますよ……ハハ」

「それでは依頼の説明をしましょうか。立ち話するのも悪いのでよかったら儂の家でお話ししましょう」

「ありがとうございます」


 俺たちは村長の家に向かった。


「今お茶を出しますので座って待っていてください」

「分かりました!」


 村長はお茶の準備を始める。

 手際が良いのか、5分程度でお茶が出てきた。


「さてと、依頼の内容の確認なのですが、ゴブリン退治をお願いしたいのです」

「はい。ゴブリン退治の依頼で来ました!」

「数ヶ月前からゴブリンが目撃されるようになって、田畑は荒らすわ家畜を襲うわで迷惑しておったのです」

「人の被害は?」

「幸いにも被害者はまだ出ておりませんが、出るのも時間の問題だったでしょう。どうかよろしくお願いします」

「了解しました!」

「何もない村ですがよかったら観光でもしてくると良いでしょう。自然が豊かなの唯一の自慢ですがね」

「分かりました! 堪能させてもらいます」 


 俺たちは村長の家を出て、村をふらふら歩く事にする。

 村長の言う通り自然はめちゃくちゃ綺麗で、元々居た世界のコンクリートジャングルを見慣れていると、少し感動する。

 しかし、ゴブリンの被害を受けたであろう田畑や、破壊された家畜の柵が目に入る。

 

「これは酷いな」

「そうね……まあ、私が来たからにはもう安心ね!」

「なんだその自信は」

「ゴブリン程度私の相手じゃないわ」

「まあそうだろうね」


 この世界に来た直後にゴブリンと戦ったが、仮初の英雄格ですら戦えたのだ。ガチの英雄格のエリスなら相手にもならないだろう。

 問題があるとすれば俺だ。あの時は緊急事態だったし、やらなければ死ぬような極限状態だったから躊躇なく戦えたが、そうじゃない状態で戦う場合、俺のような平和ボケした日本人に戦うことができるだろうか……殺す事が出来るだろうか……不安だ。


 こんな調子で村をぐるりと回ったが、村長の言う通りでこの村本当に何にもない! いや自然は超綺麗だけどさ!

 そして歩いていると、宿がないことに気がついた。


「宿なくない?」

「そういえばそうね……まああったところで止まるお金ないんだけどね」

「それな」

「何処かにいい馬小屋ないかしらね」

「寝床はそこでいいとして飯はどうする?」

「木の実?」

「村長に聞いてみるか」


 普段から馬小屋で寝泊りしているからか、馬小屋を寝床として認めてしまっている自分たちにガッカリしつつ、俺たちは一旦村長の家に戻ることにした。


「あのー村長さんすみません」

「どうかしましたかな?」

「寝床が無いのですがお金もないので何処かに泊まってもいい馬小屋ありませんかね?」

「あと、あと食べれる木の実も教えてくださると嬉しいのですが……」

「馬小屋? 木の実? ちょっとなんの話をしておるのですか?」

「いやー寝る場所と食料の確保ですね」

「普段どう言う環境で生活しているのですか……まあそれは置いておいて、安心してください。寝床と食べ物はこちらで用意あります」

「え、でもお金ありませんよ?」

「依頼してきてもらっているのです。これくらいは我々が出しますよ。冒険者様方用の家を用意しました。どうぞ使ってください」

「「あなたが神だったか」」


 久しぶりに馬小屋ではなく、家で寝ることができる事に喜ぶ2人だった。

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