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神の六面体

あらすじ:神様に会った

「神の六面体?」

俺は神様の手のひらに乗っている六面体を見る。

 それは白く輝いていて、誰もが美しいと評価する程だ。しかしそれと同時に誰もが思うだろう。

 ……サイコロだな。

「随分と仰々しい名前だけど、要するにこれはすごいサイコロさ」


 やっぱりサイコロだった。

 しかしあんなに綺麗なサイコロを渡されても正直困る。

 俺はギャンブルなどやらないし、人生でサイコロを使ったことなど両手で数えるほどしかない。だからあんな物を渡されても売るしか使い道が思いつかないのだ。


「それを売ってお金にしろと?」

「そんなわけがないじゃないか。これは神器だよ? これを使えば君は英雄にもなれるし、神様だって倒せちゃうほどの能力を与えてくれる物だ」


 英雄、それは男であれば誰もが1度は憧れ、そして諦めて行く夢だ。

 当然俺も1度は英雄になろうと夢を見て、当然なれないとあきらめた。

 しかし、異世界で英雄になれるかもしれないとなると……。

 ――英雄になってみたい。

 そう思ってしまった。


「ちょっとは異世界に行く気になってくれたかな? じゃあ神器の説明の前に、君が今から行く異世界の説明をしようか」

 俺は神様の顔を見て、小さく頷いた。


「まずは君の居た世界との人間の違いについて説明しようかな。さっき説明したように、君の行く世界では、人間は全員、特殊な能力を持って生まれてくる。力が常人よりも強い能力だったり、自分の周囲の物を腐らせないようにする能力だったり本当に様々な能力がある。これを生かして日々を過ごしている世界だ」

 よくあるファンタジーの物語の世界みたいだ。

「そして君の居た世界と違うのは、全ての人間は格付けされている」

「格付け?」

「そう。具体的には3種類に格付けされている」


 なんか、思った以上に大変そうな世界だなぁ……。

 そんな感想を持ちつつ話を聞く。


「まずは『通常格』。一番多くて一番下の格で、文字通り普通の人間である状態だ。当然君は通常格だよ」


 シンプルな格付けだなぁ……人類の殆どがこの格に配置されているんじゃないか?


「次は『英雄格』。英雄の領域にたどり着いた者のみがこの格に昇格できる。当然人数はかなり少ない。」

「2つ目でもう英雄になっちゃうのかよ」


 異世界は英雄になりやすいものなのだろうか……。


「そして最後が『神格』。これはもうわかるよね。神の領域にたどり着いた者がこの格に昇格される」

「……神格の人間はいるのか?」

「いるよ。ただし、世界に5人だけしかいないけどね」

「5人もいるのか」

「まあね。君の居た世界よりも圧倒的に戦いが多いんだ。だから英雄や神にたどり着く人間も少しはいるよ」


 なるほど、たしかに日本は平和で安全な国だったからな。それに比べれば多少は多くてもおかしくはない。


「そして格の違いだけどね、格が違うって言うでしょう? まさにその通りでね、その差は圧倒的に差があるんだ。格が上がれば、特殊能力の質から身体能力に至るまで全てがその格に合わせて強化される。それが昇格なんだよ」


 格の違いか……俺の居た世界でも多少はあったが、どうやら異世界でははっきりと違いが現れるらしい。


「昇格の条件は?」

「昇格するには、英雄格になるには英雄らしい、神格になるには神らしいすごい偉業を成し遂げることさ」

「偉業? 例えば?」


 俺のいた世界には英雄はいない。神話はあるけどそんなものは人間には不可能なものばかりだ。

 だからそれらしい偉業と言われてもピンとこない。


「うーんそうだねぇ……英雄格になった人間の偉業の例が、村を襲ってきた大量の魔物を10歳の少女が1人で撃退したことかな」

「1人で撃退!? 10歳の少女が!?」


 正直転移させられるという事実より驚いた。

 それが事実であるのなら確かに英雄みたいだ。


「神格は1人でドラゴンを討伐かな?」

「ドラゴンいるんだ!」


 1人で討伐よりもドラゴンがいることに驚いた。

 神話にもドラゴン退治はあった気がするからなるほどという感想だ。


「さて、やっとここで神の六面体の説明に入るけど、能力自体はすごい単純でね、出た目に応じて君に擬似的な格とそれに応じた能力を与えるものなんだよ」

「出た目に応じて擬似的な格?」

「そう。1と2が通常格。3と4が英雄格。5と6が神格さ。能力は奇数がその格の中で一般的な能力。偶数がその格の中でも強力な能力が与えられる」


 思ったより単純な能力でよかった。しかし、1つ思うことがある。


「なあ、それって超強くないか? 英雄格ってそんなにいないんだろ?」

「当たり前さ。サイコロといっても神器だよ? 弱いわけがないじゃないか」


 まあ、そうなんだけどさ……3分の1の確率で神格を得られるってどんなチートだよ……。


「まあしょせん擬似的な格だから時間制限付きだよ。効果時間は神の六面体を振ってから1時間。振り直しは当然できない。と、長々と説明したけどこれくらいかな?」

「1時間か……思ったより短いんだな」

「それはそうだよ。擬似とはいえ神格を得るんだから長時間与えたら世界のバランスが崩れちゃうだろ?」

「いやいや、もうすでにぶっ壊れ能力なんだが。」

 高確率で通常格よりも強くなれるのだ。ぶっ壊れ能力もいいところだ。

「ハハッ。ならバランスが崩れないように頑張って調整してくれ。使うのは君だからね」


 いやいや、笑い事じゃないだろう。

 神様は笑いながらそんなことを言う。


「さてと、そろそろ君を送り出そうと思うんだけど、とりあえず1番最初の出る目は3で固定しておくね」

「なんで?」

「簡単だよ。初っ端から1を出して死なれても面白くないし、5とか6とか出されても力の調整とかできないだろう? だから最初は強すぎないし弱すぎない程度の能力にしておいてあげる」


 力の調整って……。

 どうやら神格の力は俺の予想をはるかに超えているのかもしれない。


「じゃあ最後に何か質問とかはないかい?」

「じゃあ1つだけ」


 異世界に転移すると言われた時からずっと疑問だったこと。


「……俺は帰れるのか?」

「やっぱり、帰りたいのかい?」

「ああ。俺はいつもの日常が好きだったからな」


 今から行く世界も楽しみであることは間違いないのだが、やっぱりいつもの友人といつも通りの生活をする、そんな日常が俺は大好きだったのだ。


「そうだね……異世界の説明をしちゃった以上帰すのは無理だ」

「そうか……」

 予想はしていたが結構ショックだな……。


「でも、帰れないって言うのも可哀想だし、こうしよう。君が神格まで上り詰めた時、もう1度、この質問をしよう。だから君は神格まで、僕と同じ領域に上り詰めておいで」

「神格が目標か……わかった」


 とりあえずだが最終的な目標が早速できた。


「よし、決まりだね。じゃあ僕から最後に1つ。神の六面体は君に面白くしてほしいから持たせた物だ。つまり……」

「つまり?」

「僕がつまらないって思ったらその瞬間に取り上げるからそのつもりでね」

「はぁ!?」

「じゃあ行ってらっしゃい。僕を楽しませてくれよ」


 最後にとんでもないことを言いやがった!

 俺の体を光が覆う。そしてどんどん視界が白く染まっていく。


「おいちょっと待て! 取り上げるっていったぃ……どうぃ……」


 俺の発言の途中で視界は完全に白に染まった。

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