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試験には合格

あらすじ:アルバが吹っ飛んだ

 しばらくすると、アルバが目を覚ました。


「いってぇ……なんだなんだ何が起こった?」


 あまりに一瞬の事で、アルバは俺に高速タックルをされた事を覚えていないらしい。


「ギルマス! なーに新人に負けてんすか!」

「お? イリスじゃねぇか。なんでここに居るんだ?」

「ギルマスが瀕死だって事で呼ばれたんすよ!」

「瀕死……? あぁ! そういえば……カズヤ!」

「ごめんなさい!」


 とりあえず謝っておこう。


「お前何しやがった?」

「えーっと……自己加速で走って行こうと思ったら、制御出来なくて突っ込んじゃった感じです!」

「……攻撃する気は無かったと?」

「そうですね」

「ふむ……『見切り』が反応しなかったのはそのせいか……」


 その結論にもう辿り着くとは……。

 アルバは反応できなかった理由に納得したのか、それ以上追求する事はなく立ち上がった。


「カズヤ、お前は合格だ」


 良かった……危険人物扱いで何か言われるかと思った。


「だがな……お前の能力がイマイチ分かんねぇんだ」

「え?」


 どういう事? 能力がよく分からないとダメなのか?


「冒険者ってのは仲間との信頼関係が重要になってくるんだが、能力がイマイチ分かんねぇ相手に命を預けれねぇだろ?」


 そういう事か……確かに命を預ける相手にはならない。

 そうなると……俺は1人で冒険者になるのか? それとも、そもそも冒険者になれない可能性もあるかも……。


「冒険者は1人じゃあ戦えねぇ……お前は仲間を見つけれるのか?」

「それは……」


 無理だ……俺だってこんな謎の多い能力の奴と仲間になんてなりたくない。

 やばいどうしよう。

 職員の方々も静かになっちゃうし……これダメなやつなんじゃ……。


「仲間になら私がなるから大丈夫よ?」


 声の主を周りの人達が一斉に見る。


「こいつの能力が使えない能力の場合だってあるんだぞ?」

「使えない能力が出たとしても、さっきの能力はそれを補うほどに強くて魅力的だったもの。構わないわよ」


 エリスゥー! 俺は君を信じていたよ!

 君なら、エリスなら仲間になってくれるって信じてたよ!


「そうか……まあ仲間が居るならいいか」


 ……とりあえずエリスのおかげで冒険者になれそうだ。

 しかし、アルバはカッコ良さを求めた冒険者のトップであるのに意外とまともだ。

 

「まあそういう事で、今回の合格者はお前ら2人だ。登録とか色々するから明日の夕方くらいにギルドに来い」

「「あ、はい」」

「よし、解散! あー疲れた!」

「ギルマスの真面目な話してるところ、久し振りに見たっすよ。笑えるっすね」

「俺だって仕事じゃなきゃ真面目な話しねぇよ!」


 ……ドウイウコト?

 あれ? なんか頼りになるギルドマスターって印象だったんだけど、違うの?

 周りのギルドの方々も笑いながら寄ってくる。


「ギルマスが急に真面目な話をするから笑い堪えるのに必死でしたよ!」

「僕なんかすっごい鳥肌立ちましたよ! 見てくださいこの腕!」

「私なんて鳥肌が立ちすぎて鳥になっちゃうところでしたよ!」

「うるせぇ! 俺だってやってて気持ち悪りぃんだよ! 吐くぞ!?」


 えぇ……アルバってそういう系の人だったの?

 でもよく考えると、冒険者はカッコいいという理由でなる人が多い。そのトップの人もカッコいいって理由で冒険者になったとしたら、まあこうなるのか……。


「さっさと帰って仕事しやがれ! 明日は登録とかあるんだぞ!」

「ギルマスは今からどうするんですか?」

「俺は……まぁ……他の冒険者と親睦を深めにだな」

「酒場で飲むんでしょう! なーに1人だけサボろうとしてるんですか!」

「いや! これもギルマスの大事な仕事の一つでな……」

「あ、それなら私が行ってくるんでギルマスは安心して仕事してきていいっすよ」

「おいイリス。いい度胸じゃねぇか」


 ギルドの人達はギャーギャー騒ぎ始めた。

 最初は俺の想像していた、漫画で読んだ事のある冒険者ギルドの風景だ。


「ま、まあそういう事だ。明日遅れんなよ?」

「いやいや何時か指定されてないんですが……」

「あぁ? んなもん気にすんなよ。とりあえず夕方来い!」

「いや理不尽!?」

「明日いきなり依頼を受けるわけじゃねぇんだから気軽に来い。あと明日は寝れねぇと思うから夜はゆっくり休めよ?」


 依頼があるわけじゃないのに寝れないって……一体何するんだろう。

 休めか……そういえば俺、この世界に来てから一回も寝てないなぁ……。

 ……ん? 休め……? 休む場所なくね?

 エリスもその事に気付いたのか、俺の方を見て来る。

 

「あ、あの解散の前に少しいいですか?」


 俺は帰ろうとしているアルバを呼び止める。


「ん? どうかしたか?」

「あー……えーっとですね? その〜……」


 俺はエリスと顔を合わせて、お互いに頷く。


「「宿代無いのでお金をかしてください!」」


 こうして試験は無事(?)に終了した。

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