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試験前

あらすじ:肉が食べたかった

 俺達2人は徹夜に加えて空腹という心身共に疲労した状態で試験会場に到着した。

 集合時間の3時間は早い到着のため、試験官どころか審査員なども到着しておらず、アリーナに2人立っている状態だ。


「到着したはいいけど……どうする? 寝る?」

「カズヤは寝れるの?」

「俺は1回寝たら7時間は起きないよ?」

「すごい健康的な生活してるんだね」

「まあ……寝る時間があれだから健康とは言えないんだよね」

「……ねえ、寝る時間遅くて長く寝るって結構ダメな生活してる自覚ある?」

「え? そりゃもちろん」

「あぁ……この人想像以上にダメな人だった」


 自覚はあるからそんな変な目で見ないでくれよ。

 

「でもいつもそんなに寝るんだったらもうすごい眠いんじゃないの?」

「うーん……結構徹夜してたから、そんなに眠くないんだよね」

「へぇ〜。ちなみに何で徹夜してたの?」

「そりゃあ……」


 ゲームに決まってるでしょう! なんて言えればどれだけ楽か……。

 ゲームの話をしても通じないだろうしなぁ……。


「えーっとね、そ、そう! 戦ってたんだよ!」

「え? 徹夜で?」

「そうそう! 強敵と戦うには人数がいるじゃん? 倒すための人数を揃えようとすると、どうしても深夜帯になっちゃうんだよ!」

「カズヤって何処かの民族なの?」

「断じて違う」


 俺はネット民とは違う。断じて違う。

 しかし、俺のやっていたゲームの知り合いは、何故か深夜帯にログインする人が多かった。そのためレイドボスと言った強敵と戦うとどうしても深夜になってしまうのだ。だから俺は徹夜をよくしていた。

 うん、嘘は言ってない。


「深夜でしかも徹夜で強敵と戦うなんて正気の沙汰じゃないわよ?」


 当然の反応である。


「あー、やっぱりそう思う?」

「それは思うわよ……でもカズヤはその中で戦って生き抜いてきたのよね?」

「……え?」


 予想外の反応だ。

 もっと『バカじゃないの!?』とか『頭いかれてる!』とか言われると思ってたんだけど。


「本当にすごいことだと思うわ。深夜で戦うなんてよっぽどの理由があったのでしょう? しかも相手は人をたくさん集めないと倒せないような強敵」

「え、えっと」


 い、言えない! その理由が人が集まる時間だったとか、その戦う相手が画面越しの相手だなんて!


「理由があればカズヤは、そんな強敵にも挑み、生き抜いてきた。貴方はそれをもっと誇っていいと思うわ!」


 なんか罪悪感がすごい! お願いだからそんな目で見ないで!

 

「アア……ソウダネ」

「?」


 俺がなんとも言えない気持ちで居ると、気付かないうちに会場の準備が整っていて、試験官のような人も増えていた。

 

「そういえば書類渡されたよな? あれ書かないとダメだよな?」

「そういえばそうね……ちょうどいいしペンを借りて書いちゃいましょうか」


 俺達は試験官らしき人にペンを借り、書類に必要事項を書く。

 書く内容は住民カードの時とあまり違いがないが、自分の能力について書く枠がある。

 この世界に来てからずっと悩んでいるが未だにいい説明が浮かばない。

 なので、エリスに説明したような事を書くことにした。

 

「後は出すだけだね」

「そうね、あそこかしら?」


 エリスの指差す先にはテーブルが置かれており、そこには試験官のような人が座っていた。

 受付とか書けば分かりやすいのに……。


「あの〜冒険者試験の受付ってここです?」

「はい。ここで大丈夫ですよ。審査書はお持ちですか?」

「これですよね?」


 俺達は書類を渡す。


「不備がないかチェックをしますね」


 受付の人はエリスの書類を見て目を見開く。


「え、英雄格!? しかも18歳!? こ、これはまちがいないですね!?」

「何一つ間違いはないわ」


 受付の人はかなり驚きながらエリスに尋ねる。

 反応を見ていたのか、エリスが即答したのを見ると小さく頷き俺の書類に目を通す。

「分かりました……む、そちらの貴方、ムラカミカズヤさん、何ですかこの能力は?」


 やっぱり突っ込まれたか。


「審査書に嘘を書いたのをバレますと、冒険者の皆さんの信頼を失い、その結果生活が苦しくなりますよ?」

「嘘ではないので大丈夫です」

「……忠告はしましたからね」


 受付の人は諦めたような顔をして書類にサインする。

 それを封筒のような物の中にしまう。


「受付完了です。試験開始は1時からの予定ですので遅れないようにお願いします」

 

 アリーナの中にある時計だと後1時間くらいだ。

 しかし受付に並んでいる人は俺達以外に2人だけで、他の受験者が見当たらない。


「受験者少ないくない?」

「そう? 10人いたら多いって聞くからこんなもんじゃない?」


 冒険者って人気が無いのだろうか。

 考えてみれば命を危険に晒さないと稼げない職に、人気があるわけがないか。

 

「なぁ、俺はちょっと事情があって、冒険者にならないといけないから冒険者になるんだけど、エリスはなんで冒険者になりたいんだ?」

「え? そんなのカッコいいからに決まってるじゃない!」


 アホかこいつ!

 

「いやいやいや、カッコいいから冒険者になるのはちょっとアレじゃない?」

「え? なんで? 冒険者になった動機って8割がカッコいいからよ?」


 冒険者って馬鹿なんじゃないだろうか……。


「さあ後1時間くらいだから、軽く身体動かして試験に備えましょう」

「そうだな」


 俺達は体を動かし試験に備える。

 エリスは流石は英雄格と言ったところか、ランニングで追いつける気が全くしない。

 あぁ……マラソンで一緒に走ろうって言って結局置いていかれた事を思い出したよ。いや今回は一緒に走ろうって言われてないんだけど。

 そんな感じで準備運度をエリスと一緒にしていると、アリーナ中央に集合が掛かった。

 

「あら、もう1時間経ったの?」

「みたいだね」


 中央には受験者が6人ほど座っていて、その前にはゴツイおじさんが立っていた。


「よく来てくれたな。俺はギルドマスターのアルバだ」


 ゴツイおじさんは俺達に自己紹介をする。

 

「今から試験をするが、ルールは簡単だ。俺と5分間1対1で戦え。その結果次第で合格不合格を決める」


 ギルドマスターが直々に戦うのか?

 見た目は全く弱そうじゃない。いやむしろゴリッゴリで超強そうではあるが、こう言った試験は一流の冒険者がやるイメージがある。


「なあエリス、ギルドマスターって実はめちゃくちゃ強いとか?」

「今更何言ってんのよ……ギルドマスターはそのギルド最強の人がなる役職よ」

「え?」

「依頼とかの管理とかの仕事もあるけど、一番大事な仕事は誰もやらない依頼の処理ね」


 俺のイメージが一瞬で崩壊する。


「順番は俺がテキトーに選ぶから呼ばれたら出てこい」


 ギルドマスターはさっき俺達が出した書類を持ちながら言うのだった。

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