雷堂こなた 001
今回は、流れがどうのこうの__みないなのは無しだ。
みんな、誰しも、『この人物がいなければ今の自分は無い』という人間がいるだろう。
まあ、まずそれは親が挙がるのだろうが、そういう話もなしだ。
僕の場合、それは、雷堂こなたが当てはまるだろう。
雷堂こなた。眼鏡を掛けた、巨乳とポニーテールを揺らしている、高校一年生。楔無高校、E組(確か喜界島もここだ)に所属する、女子高校生。
いい奴だ。偏見だが、ああいう奴が『趣味はボランティアです』なんて言ったりするんだろうな、なんて思っている。
僕の、大恩人である。
いつだか、春休みの一件は七割五分白魚に救われたと言ったが、白魚が七割五分とするなら、残りの二割五分は籠女のおかげで、そもそも十割が雷堂こなたのおかげだろう。まあ、そもそも、籠女のせいで僕は地獄に叩き落とされたのだが。
だがまあ、籠女がいなければ、僕が死にかけなければ、僕は雷堂こなたに出会わなかっただろう。その点は、多少感謝__は、できない。それを差し引いても、僕はあいつが憎い。
白魚も籠女を憎んでいるし、僕も憎んでいる。
喜界島は__微妙なところだ。
そして、雷堂こなたは、籠女に、ある程度は、感謝しているだろう。
僕が、僕にとっての恩人を選ぶのならば、即答で雷堂こなたの名を出すのと同じように、雷堂こなたは、雷堂こなたにとっての恩人を訊かれたならば、籠女と答えるだろう。
やっぱり、いつか、語らなくてはいけないのかな。
春休みのこと。
僕が一度死に、傷を失って、いや、傷と引き換えに、永遠の命を貰った話。
籠女と『とりかえっこ』をした、あの雨の日。
運命は変わらないらしい。白魚曰く。
だったら、僕は僕の運命を進むだけだし、雷堂こなたは雷堂こなたの運命を進むだけだ。
ただ、白魚はこうも言っていた。『余程のイレギュラーが無い限り』、と。
だったら__僕にとってのイレギュラーは、雷堂こなた、なのだろう。
忘れたくない人にして、忘れてはいけない人。
やっぱり前説が長くなってしまったが、今回は、雷堂こなたについての話だ。




