届かなかった想い
回想です。
夏休み入って二週間ぐらい…
水乃に日付感覚はありません
全開にした窓から蝉の鳴き声が聞こえる……。
あぁ、今は夕方か。
周りなんて見てる暇無かったから気付けなかったや。
そういえば、夏休みに入ってからそんなに日は経ってない……様な気がする。
私は、暑いのも構わず扇風機も着けないでベッドにへたり込んでいた。
『水乃……』
お母さんの声が聞こえた。
扉のノックの音にも気付けないぐらい落ち込んでたらしい。
『…………』
『まだ、凪君の事……』
『そうじゃない』
『お母さんこれから買い物行くけど、欲しい物ある?』
『無い』
『分かったわ』
お母さんが扉を閉めた途端に込み上げる物があった。
『……っっ!!』
込み上げる涙と感情を近くにあったクッションに押し付けて声にならない声で叫ぶ。
『凪の……馬鹿!』
凪が居なくなったのは本当に唐突だった。
やっと夏休みにも入ったし、明日もきっと凪に会えて勉強を教えて貰って、そしてそろそろ約束を果たして貰えるとワクワクして家に帰り、リビングに入った時。
重い空気の中、電話の受話器を持ったまま固まり様子のおかしいお母さんを心配しながら呼ぶと、私を視界におさめたお母さんは私が帰って来た事に気付けない程ショックだったのか、
私の姿を認めた途端、泣きそうな顔で言った。
『水乃……今ね、凪君のお母さんから電話がきたの。
良い?落ち着いて聞いて』
『?』
『凪君、さっき交通事故に遭って……
『え……』
『道路に飛び出た小さな子どもを庇って……だそうよ』
『………』
『それから……打ち所が悪くて、即……死……だったそうよ』
『……は?そく……え?』
信じられなかった……。
受話器からおばさんの泣き声が聞こえたとしても、こんな事信じたくなかった。
『嘘……だよね?
ドッキリか何か?
ちょっと……たち悪くない?
そーゆー冗談止めてよ……』
『うぅっ……』
『ねぇ、そうでしょ?ねぇってばっ!!』
凪が死んだなんて信じられなくて
お母さんの両肩を掴んで揺さぶる。
反動で受話器が落ちるが、お母さんは泣くばかりで反応してくれない。
昨日までは凪とだって夏休みの予定を経ててたぐらいだったのに!
あまりにも信じられなくて玄関を飛び出し、凪の家まで走る。
きっと嘘だ。
凪の家に行けば凪がきょとんとした顔で出てくるに違いない。
そう思って凪の家の前まで来て玄関の扉が開いてる事に気付いた。
『おばさんっ!!』
『水乃ちゃん……?』
そこにおばさんは居なかった。
代わりに泣きそうな表情の疲れきった様な、一気に窶れてしまったおじさんが居た。
『おじさん……』
『すまないね、妻は今病院で……
私もこれから病院に行かなきゃならないんだ』
『病院……じゃ、じゃあ凪は今入院してるんですか!?
打ち所が悪くて……って言うのは、お母さんの聞き間違いだったんで……』
『水乃ちゃん……』
『あ……』
『すまないね、病院には手続きと確認をするために……』
『じゃあ……やっぱり聞き間違いなんかじゃ……』
『水乃ちゃん、有り難うね
凪の事……心配して……』
『……嘘……』
『今、凪は病院の……
現実を受け入れたくなくて、涙を堪えながら悲しげに話そうとするおじさんの声が遠くなる。
何で……凪……。
昨日まで元気だったのに……。
どうして……。
一緒に夏休みを過ごせると思ってたのに……。
気が付いたら、私は自分の部屋のベッドに居た。
あの後、私はどうやって帰って来たのかを覚えてない……。
さて、頑張って改稿しますね!