幼馴染みと海へ
拙い文章ですが、よろしくです。
只今、大幅に改稿中です。
太陽の焼けつく様な暑さと蝉の鳴き声が私に今の季節が夏だと教えてくれる。
風はあるが生ぬるい熱風が息が少しだけ苦しくなる様な風だった。
横断歩道は陽炎で遠くが見えずらく、目的地である図書館までの道のりは遠く感じる。
白と爽やかな檸檬色と淡い青で構成されたワンピースと檸檬色のリボンが付いてる麦わら帽子を被った高校生程の少女――――七瀬水乃が歩いていた。
チョコレートの様な色合いの髪は肩辺りまでの長さと飾りなのか段々と意味を成さなくなってきているヘアピン、少しつり目がちな同色の瞳。
健康的な程度に少しだけ焼けた肌は汗と共に首に張り付く髪がほんの少し彼女に艶やかな印象を与える。
この暑さじゃ、日焼け止めを塗ってまで肩の出るワンピースを着た甲斐はあったかもしれない。
近くではどこかで風鈴でもぶら下げてるのか涼しげに音を鳴らしている。
遠くを見ようと、太陽を遮ってくれていた麦わら帽子を外す。
図書館は、もう少しで着く様だ。
手元にあるスポーツドリンクが生ぬるくなりかけている。
麦わら帽子を被り直し、涼しい所に行きたいのを我慢して歩き出す。
早く室内に入りたい。
最近は天気に変動が起きやすく、今は晴れていてもすぐに雨が降る。
夏の雨は空気が涼しい時と涼しくない時がある。
台風も来てるみたいだし、凄くはた迷惑な夏休みになりそう。
折りたたみ傘、持ってくれば良かったかな。
そういえば凪、今日も……来るのかな。
そう思いつつ図書館に入る。
ずっと家の中に居るよりはマシだから、そう言い聞かせて図書館の中で時間を過ごす。
ある一冊の分厚い小説を時計も見ずに集中して読んでいたからだろうか。
時間を忘れてしまっていた様で、気が付けば夕方だった。
きっと今帰れば涼しいだろう。
そう思って小説を閉じて席を立とうとした。
だからこんなタイミングで声がかかるなんて思わなかった。
「水乃ちゃん
まだ雨が止んでません
閉館までには雨も止むと思うので、それまではそちらの小説を楽しめますよ」
視界の端にいつもふんわりしてるのに今日は湿気のせいなのかいつもよりクルクルになってるミルクティー色の髪が見えた。
そこに視線を向けると眼鏡で見え隠れする気の弱そうなタレ目が私を見つめていた。
凪の目はなんだか優しい目をしていた。
凪のそんな目は久しぶりに見た。
凪のキメの細かな白い柔肌は私が嫉妬してしまう程にサラサラしていて、正直羨ましいとすら思う。
淡いピンク色の薄い唇は、今日もいつも通り、微笑みの形をしていた。
そして、雨が降っていると聞いて自分が折りたたみ傘を持ってきていない事を思い出した。
そして結局私は閉館間際で図書館を出た。
さっき凪が言っていた様に本当に雨が降っていた様で、空気も冷たく、地面が湿っていた。
どうやら周りもちらほらとこれから帰る人が居る様で、私の横を通り過ぎていく。
それを見た私も、「もう暗いし帰ろう」と足を進める。
凪は、私の隣に居たみたい。
楽しそうな顔で私の隣を歩いてる。
家に着いた時、凪は唐突に口を開いた。
「僕、水乃ちゃんが好きです」
「そう、でも残念ね
何度も言うようだけど私は貴方の事嫌いよ」
ある日を境に凪は私を口説く様になった。
当然、私は凪の言葉を切り捨てる。
だって、凪の事は嫌いじゃないけど。
正直凪の想いに答えるつもりはないもの。
部屋の中の暑さと汗をソーダ味のアイスキャンディを食べる事で誤魔化す。
溶けきる前に食べ終わったアイスキャンディの棒を齧りながら、私は自分の部屋で時間を潰す様にベッドに寝転がりながらゲームを開く。
どうしても気だるさが混じるのは夏特有の暑さ故か。
そうして夕方を待つ。
夕方の時間帯が一番涼しく、体調も崩しにくいからだ。
夕方が来たら、外に出て何をしようか。
気晴らしに運動場に行くのも悪くないと思う。
今日の天気は曇り。
それに気付いたのは、カーテンの開かれた窓から見た空の雲があまりにも分厚かったからだ。
きっと湿っぽい暑さは残るだろうけど、風もあるみたいだから昼間よりはマシかな。
最近の天気予報は外れている。
部屋のクーラーを付けるのも悪くないのかもしれないけど、気温の激しい変化は体調も崩しやすくなるって聞くから、扇風機に留めてクーラーは付けないでおこう。
そうして夕方が来た頃。
風もあるみたいだけど、家の中でも暑いものは暑いのだ。
だから「外に運動でもしようかな」そう思って部屋から出て、階段を降りて玄関の扉を開く。
あぁ、やっぱり。
扉を開けたら待ってるなんて。
凪は、いつも気がついたら目の前に居る。
幼なじみだし、家も近所だから今はもう慣れて、あまり驚かないけど……
「水乃ちゃん、今日は何します?」
「別に、何もしないわよ」
「えー、つまらなくないですか?
どこか行きましょうよ」
「嫌よ、面倒くさい」
「なら明日はどうですか?」
「明日も何もしないわよ」
「なら…………
ここ最近は凪の口説き以外と言えばこういった会話ばかりだ。
凪はどこかに行きたいのだろうか。
最近口説いてるし、まさか私と一緒にどこか行きたいとか言うのかしら。
カーテンの隙間から漏れる光を見て朝だと思って、目を覚ましたら頭と身体が重かった。
まさかよりによって、こんな時に風邪を引くなんて。
こんな暑い日に、寝込むなんてまっぴらよ。
きっと最近は気温の変化が激しかったり、雨だったりしたからね。
あんな雨の日に外なんか出てるんじゃなかった。
私は誘われて出ただけだから、絶対に私は悪くないと思う。
悪くなんて……
せめて水分だけでもと、部屋の外に出ようとして、ベッドからフラフラしながら出る。
そして、部屋の扉を開けた時……
凪が居た。
「あ、水乃ちゃん!
おはようございます
暑いですか?
氷、使います?」
「……別に」
「なら、寒いですか?」
「けほっ……別に」
「水乃ちゃん?
冷えピタ……
凪の落ち着いた低い声が今日は少しだけ焦ってる様に聞こえる。
空調がどうのとか、今日の天気がどうのとか、最終的には寝てないと駄目だとか、凪がお母さんみたいだ。
ってか何で凪は今目の前に居るのよ。
心配してって言うけど、これじゃ私何も出来ないじゃないっ!!
ほっといてよ。
そう思って自室の扉を閉める。
あわよくば外に出てアイスでも買おうとしてた私も私だけど。
一応元気になったので例え太陽のせいで暑かろうと部屋の外へ出る。
あぁ、今日も今日とて暑い。
そう思って部屋からリビングまで行くと、今日はお父さんが居る日だったのかソファに座っていた。
「水乃、暇ならアイス買って来てくれないか」
「暇じゃないけど、帰りで良ければ買ってくるわ」
「頼んだ」
そんなやり取りの後、私は家を出ていつも通りに運動場に行った。
良かった、今日は空いてた。
耳にイヤホンを付けて私の大好きな音楽をかけて一通り準備運動の後に走り込みをして、壁を相手にラケットでボールを打つ。
それを繰り返してる内に夕方になった。
さて、頼まれてたアイスでも買ってこようか。
ついでにコンビニで涼もう。
そう思ってイヤホンを取ると、声が聞こえた。
「こんばんは、水乃ちゃん
好きな食べ物はありますか?
良ければ……
「特にない」
凪だった。
私はそれを即答して返す。
「僕はオムライスが好きなんです!
今度一緒に……
「興味ない」
私は今日も凪の言葉に辛辣に返す。
どのくらいこうしていれば凪は諦めるだろうか。
毎日の様にふらりと現れては気が付いたら消えている凪はいつだって飽きる様子も応えた様子もなく私に声をかけてくる。
あ、コンビニ着いた。
はぁ、涼しい。
でもここでの長居はアイスの到着を今か今かと待ってるお父さんに申し訳ないわね。
…………早く帰ろう。
今日の天気予報は夜まで晴れ。
何処に行こうかな。
そう思って起きた。
今の時間は6時。
うん、中々早いし涼しい空気の中にもじんわりとした暑さが微妙に出て来る時間帯。
散歩でもしたら気持ち良さそう。
家を出てすぐに声がかかった。
凪、だった。
凪の様子が少しだけ違った。
やたらと早い時間に声をかけてくる上に、いつも楽しげに声をかけてくるのに、今日は真剣な顔をしてる。
「水乃ちゃん、海に行きませんか?」
「…………」
「今、海が凄く綺麗なんです
どうですか?」
「…………」
「水乃ちゃん、お願いします
一緒に行きましょう」
「…………わかったわよ」
どうせ行く場所なんて決まってない散歩に出ようとしてただけだ。
そう言い訳を心の中で重ねる。
動揺してしまったなんて認められる訳が無いじゃない。
凪の真剣な心がこんなにも伝わるんだもの。
凪、どうして…………。
電車をいくつか乗り継いでバスにも乗って海まで来た。
砂浜をサンダルを脱いで素足で足跡を付けながら歩く。
この時期は夏休みだと言うのに、人が少なかった。
昼間から二人っきりでこの海を楽しめるなんて事はそうそうないだろう。
こんな状況じゃなければ……
「風、気持ちいいですね
それに潮の香りもしっかりします」
「…………」
「周りに人が居ないから貸し切りも同然ですね」
「…………」
「海も青くて凄く、綺麗です」
「…………」
「入ってみたくなりませんか?」
「…………」
柔らかく微笑む凪を見てどうしても思い出す。
海に来たのなんて、いつぶりだろう。
凪といつか海に行きたいねって約束して最初に来たのは――――…………
水乃ちゃんはツンデレです。
次話も是非…m(__)m