TRACK-5 錯綜 7
エヴァンが目を覚ましたのは、使いなじみのないベッドの上だった。
(どこだ、ここ)
起き上がって周囲を見回す。部屋は東方文化を思わせる、赤を基調とした内装だ。ほのかにヒノキの香りがする。
自分の状態を確認すると、衣服は前日のままだが、スニーカーは脱いでベッドの下に揃えられていた。
唐突に夕べの晩餐を思い出して、エヴァンは膝をぽんと打った。
「そっか、ここローの屋敷だ」
昨晩はレジーニの旧友であるバージルの帰還を祝し、ファイ=ローが夕食をふるまってくれたのだ。あまり記憶にないが、たしかカクテルを数杯飲んだはずだ。 エヴァンはそれなりに酒を好むものの、あまり多くは飲めない体質だった。
マキニアンの高い代謝能力は、摂取したアルコールを常人の何倍もの速度で分解する。が、その作用は生来の個人差に左右される。エヴァンのアルコール分解速度は、他のマキニアンに比べても遅かった。アルコールが抜けきるより早く、睡魔に負けたのだろう。どうやら宴の途中で眠ってしまい、ファイ=ローの屋敷の客間に寝かされたらしい。
ふと、アルフォンセの顔が脳裏を過ぎった。一晩帰らなかったので心配しているに違いない。あとで電話すること、と頭の中にメモした。
彼女はたしかママ・ストロベリーと一緒に、リカの食事を作りにセーフティハウスに行ったはずだ。リカの様子はどうだっただろうか。
食事といえば、自分の腹が鳴っている。
ローに朝食を食べさせてもらおうか、と考えている間にノックの音がして、返答するより早くドアが開いた。
不躾なくせに颯爽と入室したのはレジーニである。ブルーグレーのスーツに黒のシャツとネクタイを合わせるという、シックなコーディネートで決めている。寝起きで髪も服もよれよれのエヴァンとは雲泥の差だ。
「起きていたか。ローが朝食を用意してくれている。食事が済んだらすぐにここを出るぞ」
「なんだよ、入ってきていきなり。まずは“おはよう”だろ。お前、俺のことほっぽりだして帰りやがったな。連れて帰れよ、相棒のくせに」
「たかだかカクテル二、三杯で潰れるような奴の面倒が見きれるか」
「潰れてませんー、ちょっと弱いだけですー」
「細かい主張はどうでもいいから、さっさと朝食を済ませろ。それとも腹に何も入れないままで構わないか」
「わかったわかった、急かすなよ」
エヴァンは素早くスニーカーを履き、レジーニとともに客間をあとにした。
食堂に顔を出すと、ローが一人でお茶を飲んでいた。バージルの姿はなかった。
エヴァンが一晩泊めてくれたことへの礼を言うと、ローは笑って頷いた。朝食をごちそうになり、レジーニとともに慌ただしく彼の屋敷を辞した。
「で、何をそんなに急いでんだ? まだ八時前じゃねーか」
早朝のアンダータウンを足早に歩く相棒の背中に問う。レジーニは肩越しに一瞥をくれたが、立ち止まらなかった。
「急ぐ必要はあるだろう。ガルデの報告を受けたACUがオツベルを連れ戻しに来る。その前に、まだ聞きたいことがあるんだ」
「まーた質問攻めしていじめる気かよ。嫌われても知らねえからな」
「嫌われて結構。得られるはずの情報をみすみす逃せるか」
容赦ない相棒の言葉に対し、エヴァンはからかい半分に大げさなため息をついた。
「怖えーなー、レジーニさんは。そんなんじゃリカにも嫌われるぞ。昨日の態度は……」
突然レジーニが足を止めて踵を返した。まずい怒られるか、と反射的に身構えたエヴァンだが、レジーニは難しい表情でこちらを見つめるだけだ。
「な、なんだよ。言いたいことがあるなら言えよ」
「リカのことだが……」
レジーニは言いかけて口を閉じ、目線を反らした。先を続けるのをためらっている。相棒のこんな態度は珍しい。
「よくない知らせでもあるのか?」
相棒の視線がエヴァンの方に戻る。
「人間の身体をマキニアン化するような〈細胞置換技術〉ほどのナノテクを確立するまでには、相当な実験が行われているだろう」
「まあ、そうだろうな。俺は詳しく知らねえけど」
「それに〈スペル〉だ。覚えているか?〈スペル〉を埋め込んだ生物をメメント化させて、生物兵器として行使する計画があったと、アルが話していただろう」
「ああ、覚えてるよ」
〈スペル〉という装置の存在を知ったのは去年のことだ。開発者はアルフォンセの父、フェルディナンド・メイレインである。
フェルディナンドは政府の研究機関〈イーデル〉の、特殊武器開発部に所属していた。対メメント専用武器であるクロセストの研究開発、ひいては、マキニアン研究にも貢献した才人だ。
彼が〈スペル〉を開発した当初の目的は、不可視のモルジットを探知し収集するためである。より優れたクロセストを製造するには、モルジットの生態研究を進める必要がある、と考えてのことだった。
しかし、メメントの軍用化を目論む〈政府〉の命令により、フェルディナンドは超小型〈スペル〉を造ってしまった。
その小型〈スペル〉をめぐってひと騒動巻き起したのが、エヴァンのかつての仲間――サイファー・キドナである。
「メメントを生物兵器として軍事利用する計画を立てるくらいだ、こっちも相当数の実験を重ねているだろうな」
「なあ、話が見えねえんだけど。リカの話をしてんだろ?」
遠回しなレジーニの物言いに、エヴァンは顔をしかめた。結論を先延ばしにしようとする歯切れの悪さは、レジナルド・アンセルムらしからぬふるまいだ。
「僕が言いたいのは、〈イーデル〉は生体実験に長けていた、ということだ。お前たちマキニアンや、メメントの軍用化以外にも、生体実験を行っていた可能性があったとは思わないか?」
そう問われても、〈イーデル〉の機密事項をことごとく秘匿されていたエヴァンには答えようがない。
「僕は、リカのあの力は、生体実験のせいじゃないかと考えていた」
「リカは〈イーデル〉に収容されてたってわけか?」
「ああ。幼少時代の一時期にでも、被験体にされていた可能性があるのではとね。でも彼女の十八年の人生において、怪しむべき部分は見当たらなかった。ストロベリーに調べてもらったんだ。あの力以外は、本当に普通の女の子だよ」
「でも、お前は何か引っかかってんだろ?」
エヴァンは、眉をひそめる相棒の顔を覗き込んだ。何かに傷ついているのに平静を装っている。エヴァンには、秀麗な顔に滲み出る鬱屈が読み取れた。
「問題はリカじゃない。おそらく、父親の方が鍵だ」
レジーニは“父親”という単語を発する一瞬、まるで下劣なものを前にしたかのように、頬を引きつらせた。
「ある男が起こした暴行事件の末に生まれたのがリカだ。意味はわかるだろう? 被害を受けた母親は、彼女を産んで間もなく死んだ。今の母親は実母の妹。その男は中央庁で逮捕されたが、過去の経歴の一切が不明だ」
再び歩き出したレジーニは、振り返りざまに吐き捨てた。
「この男を調べる」
*
早朝の墓場屋敷は、ピリピリした空気が漂っていた。殺伐とまではいかないが、触れ合えばかすかな静電気が起こりそうな程度には張りつめている。
ガラスの泡のような緊張感がむずがゆくて、エヴァンは落ち着きなく身じろぎを繰り返していた。
隣に立つレジーニは、いつものポーカーフェイスを崩していない。ただ、うさん臭いものでも見るかのように碧眼を細め、対峙する人物をねめつけている。
その人物は両腕を組んで踏ん張るように立ち、目尻の垂れた双眸でエヴァンとレジーニを見据えていた。彼は陸軍制服を着用しているが、エヴァンが覚えているものとはデザインが異なっていた。軍部の中でも独立した機関であると、一見して判る。
鼻筋から左頬に走る傷を持つその男こそ、ACUを束ねる総指揮官ケイド・グローバー中佐、ガルデの上司である。
昨日と同じ応接室に集まっているのは、エヴァンとレジーニ、グローバー中佐の他、三人の中間に立つガルデ、ソファの後ろで縮こまっているオツベル。そしてなぜかユイとロゼットの姿までもあった。
「なんでお前らまでいんだよ、学校はどうした学校は」
エヴァンが片眉を吊り上げると、ユイは唇を尖らせた。
「いいじゃないか。オツベルが心配だったから見に来たんだ。学校はちゃんと行くさ」
オツベルの側に寄り添う少女たちは、きちんと制服を着てスクールバッグを背負っている。登校前にわざわざ寄り道したのだ。
悪びれた様子のない少女たちに向けてなのか、グローバー中佐のため息が聞こえた。
エヴァンとレジーニは、アンダータウンからまっすぐ墓場屋敷に移動したのだが、現地はすでに ACUに確保されていた。軍用車両が屋敷を取り囲み、“ACU”と刺繍された腕章を着けた兵士たちが、周辺を警戒していたのだ。
墓場屋敷を覆う林に踏み入った瞬間、彼らに包囲され、屋敷まで連行された。エヴァンは林の手前で、木々の陰に潜む気配を察していたが、レジーニから事前に「ACUの連中が現れてもおとなしくしていろ」と釘を刺されていたので、素直に従った。彼らは味方とは言いがたいものの、今のところは敵でもない。無駄な揉め事を起こすのは、お互いの負債になるだけだ。
そうして応接室に通され、待っていたガルデからグローバー中佐を紹介されたのである。
ケイド・グローバーに対するエヴァンの第一印象は「THE・軍人」だった。着衣の上からでもわかるたくましい身体つきに、厳格そうな堅い表情。いかにもこれまで実直に任務に殉じてきたという、“軍人”のパブリックイメージそのものである。
現役の軍人に睨まれると、体内に染みついた軍役時代の本能が揺さぶられるようで、エヴァンは更に落ち着かなくなった。
記憶は欠如しているだけで、すべてを忘れてしまったわけではない。辛く厳しい訓練の思い出は残っているし、叩き込まれた戦闘技術は、現在の裏稼業で大いに役立っている。
だがそのために、粗雑な扱いを受けたという苦い経験も、抽斗の奥から引っ張り出されるのには辟易した。
(厭なこと思い出しちまった、まったく)
軍役時代の記憶は、すっかり遠い過去のものだ。今さら蘇られても困る。
「この傷が気になるのか?」
厳かな表情のまま、グローバー中佐が自分の顔の傷を指差した。エヴァンの視線が、その傷に注がれていると思ったらしい。
「ああ、えっと、そうじゃねえんだけど。悪ィ、じろじろ見てるつもりはなかったんだ」
慌てて弁解したが、グローバー中佐は肩をすくめるだけで咎めなかった。代わりにレジーニには睨まれたが。
「この程度の傷、君らには大して珍しくもないだろうな。エヴァンといったか。あの日以降、ガルデ以外のマキニアンに会うのは初めてだ」
“あの日”が、今から十一年前の〈パンデミック〉――マキニアン一掃作戦を差していることは、言われるまでもない。
「そして、君たち二人もマキニアンだそうだな」
グローバーがユイとロゼットを振り返る。ロゼットは彼の視線を避けるように、ユイの背後に隠れた。
「ガルデから聞いたけど、あんたもあのとき現場にいたんだって?」
エヴァンの方に向き直ったグローバーは、質問を噛みしめるように頷いた。
「それが命令だった。さぞ恨んでいるだろうが、許しを請うつもりはない」
「今になって俺らに懺悔されてもな。でも、後悔してるなんて言われたらぶん殴ってた」
申し訳ない、悔いているなどという言葉をもらったところで、起きてしまった出来事は帳消しにならない。それならば、己の行いから目をそらさず、生涯背負って忘れずにいてくれた方がいい。
当時、凍結睡眠の中にあったエヴァンが言っても説得力はないだろう。だが少なくとも、ドミニクやガルデの口から、あの日の恨みつらみを聞かされたことはなかった。
ただ〈VERITE〉の連中は、恨み事だけで済ませないだろうが。
会話が途切れたところで、本題に入らせてくれとレジーニが口を開いた。ユイとロゼットに学校へ行くよう言うと、少女たちは渋々ながら従った。オツベルの側にいたいのはやまやまだが、勝手に学校を休んでドミニクに叱られるのも嫌なのだろう。
少女たちは放課後にまた立ち寄ると言い残し、墓場屋敷から出て行った。
「本題って、オツベルのことですか?」
少女たちを見送ったあとに、ガルデがレジーニに尋ねた。グローバー中佐が、片眉を吊り上げる。
「あの子らは放課後にまた来ると言っていたが、我々はもう引き上げるぞ」
「僕らは、それをもう少し待ってもらうために来たんですよ」
顔をしかめるグローバーに、レジーニは、資金援助を申し出る銀行員のような微笑みで対抗する。すなわち、交渉の場に立つときの「あくまでも相手の顔を立てているように見せかけて、イニシアチブは自分で握る」腹づもりの顔である。エヴァンは密かに“外面マスク”と呼んでいる。
「待ってもらうため、とはどういうことだ?」
「オツベルには、メメントに関してまだ聞きたいことがある。僕らには情報が必要だ。他ならぬメメント自身から聞けるチャンスを逃したくないんです」
「それはそちらの都合だろう。承諾する義務はない」
「盾に取るつもりはありませんが、オツベルを保護した対価として、彼女と話をするくらいは安いものだと思いますが?」
「たしかにそれについては感謝している。しかしだからといって、これ以上オツベルを外界にいさせるわけにはいかない。彼女は貴重な存在だ」
レジーニが鼻を鳴らした。
「脱走を許しておいてそれはないでしょう。メメントの生態情報が増えれば、僕ら〈異法者〉の仕事の効率が上がる。それは広い目で見れば、あなた方ACUの負担も減ることになるのでは?」
「裏稼業者の仕事量が、我々に影響を与えるとは思えないな」
レジーニの口元が不敵に歪むのを見て、エヴァンはぎょっとした。相棒の目が笑っていないのだ。グローバーの一言が腹に据えかねたらしい。
「お言葉を返すようですが、十一年前の軍部の行いのせいで、裏社会にはしっかりしわ寄せがきているんですよ。メメントの生態の大半は謎のままで、数は一向に減らない。狩り手は不足している、それなのにACUは、各都市の事案まで手が回っていない。これでどう対策を取れと? 感謝してくれとは言いませんが、〈異法者〉という裏稼業がなければ、世間にはもっとメメントが溢れたでしょうね。まあ、あなたに言っても詮無いことですが」
グローバー中佐の目尻がピクリと痙攣した。ガルデも苦い空気を察したようで、エヴァンに目配せしてくる。オツベルは、話題の中心が自分なので、おろおろと所在なさげに身体をゆすっていた。これはまずいと感じ、エヴァンは弁舌をふるうレジーニのスーツの袖を引っ張った。
「お前、今それを言うかよ!?」
「事実だろう」
相棒に悪びれた様子はなく、むしろ、今まで言いたかったことを言えてせいせいした、とでもいうようにすっきりした顔つきである。常に冷静沈着な男だが、何かの拍子に突然、料簡の狭い態度をとることがあるのだ。今それを発揮しなくてもいいだろうにと、エヴァンは柄にもなく頭を抱えた。
険悪なムードのまま、話を打ち切られては困る。エヴァンはレジーニとグローバーの中間に立つように、一歩前に進み出た。これではいつもと役割が逆だ。
「悪かった! 今のは言いすぎだよな、あとで俺からこいつに注意しとくよ。でもさ、オツベルを連れて行くのを待ってほしいってのは、俺も同じ意見なんだ。でもって、それってオツベルのためでもある。な?」
エヴァンは賛同を求めて、ガルデに向かって頷いた。言葉に含めた意味を察してくれたのか、ガルデも頷き返す。
「そうです中佐。オツベルが今回のような行動に出た理由は、先ほどお話しましたよね? 彼女は誰かに会うために本部を飛び出したんです。その“誰か”を探す必要があります」
中佐は子どもを叱る親のような目で、ガルデとオツベルを順に見た。オツベルが更に縮こまる。
「オツベルの目的を果たさせてください。彼女は今まで充分すぎるほど、我々に尽くしてくれました。一度くらい彼女のために、今度は俺たちの方が動いてもいいのではないですか?」
「ほら、ガルデもこう言ってるしさ。ちょっとは融通利かせてくれよ」
エヴァンがガルデの言葉に便乗すると、グローバーが睨みつけてきた。
「部外者からの指図は受けない。これは我々ACUの問題だ。そもそも、オツベル自身が誰に会いたいのかわからないというのに、どうやってその人物を捜し出すつもりなのだ」
頭が固いのも“THE・軍人”だよな。喉まで出かかったその言葉を、エヴァンは寸でのところで飲み下した。
「それについては、俺も考えたんですが」
ガルデの目線がエヴァンとレジーニ、そしてオツベルへと移動していく。
「ひょっとしたら、リカが関係しているんじゃないかと」
たしかにオツベルは、リカを救出したあとも彼女を気にしていたが、それはリカの生体パルスに干渉する能力のせいではないのだろうか。エヴァンは意見を求めてレジーニを振り返った。相棒は右手を顎に当て、視線を床に落として考え込んでいる。
「なあ、お前どう思う?」
声をかけると、レジーニが顔を上げた。
「そうだな。もしリカに関係があるのなら、ちょうどいい、僕らも彼女の出自について調べるつもりだ」
「何か心当たりがあるとでも?」
グローバー中佐に疑わしげな視線をよこされても、レジーニは動じない。
「十九年前に警察中央庁管轄内で起きた、とある事件を調べるんです」
「その事件とオツベルに、何か関係が?」
「それを調べに、中央庁へ行くんですよ」
レジーニの言葉に、ガルデが声を弾ませて応じた。
「それなら俺に伝手があります。警察中央庁に、ACUの協力者がいるんです。俺もその方には、オツベルの足取りをたどるためにお世話になりました」
「アポを取れるか?」
「少し待っててください」
携帯端末を片手に、ガルデが応接室を出ていく。
ACUの協力者だという人物の助力を得られれば、十九年前の事件――リカの父親である婦女暴行犯の詳細がわかる。そうなれば、オツベルとリカに何かつながりがあるのかどうかも、判明するかもしれない。
数分後、応接室に戻ってきたガルデの表情は明るかった。件の協力者と連絡がとれたようだ。
「話は通してあります。エヴァンとレジーニの名前を伝えておきました。警察中央庁刑事部強行犯課のリック・モリス警部を訪ねてください」
「よし、これで何すりゃいいかわかったな」
エヴァンは右拳を左手に打ちつけ、グローバー中佐に言った。
「ほら、次にやることが決まったんだ。あとはあんたのゴーサインだけだぞ」
THE・軍人はエヴァンたちをぐるりと見渡す。この場にいる誰の考えも変えられないと悟ったのか、呆れたような諦めたようなため息をついた。
「二十四時間以内に解決しなければ、どうあってもオツベルを送還する」
レジーニが勝者の笑みを浮かべた。
「結構」




