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1話

「…ここは?どこだ…」


気が付くと、視界に映る景色はさっきまで龍人が居た場所と全く違う風景が

広がっていた。

そこは自然が豊かで、まるで人の手が入っていないような森林と、その周りには白く雪に覆われた山々が聳え立っていた。

そして一番肝心なのは、目の前には黒いローブを纏い、右手には赤い宝石を拵えた杖を持った人物が居たことだった。


「あの…あなたは?」


(…昼寝してたらいきなり変なことになるし、しかもここはどこだよ!このいかにも魔法使いっぽい人、 まさか、あれか?例のあれか?)


あまりの出来事に内心かなり焦っていた龍人だが、少しずつ冷静になってくると、この一連の摩訶不思議な現象はもしや、目の前の人物が関係してるのではないかと結論付けた。


「あのー、ここは一体どこでしょうか?俺…気付いたらここにいたみたいなんです。自分でも何言ってるのかよくわかんないですけどね、あははは……」


黒いローブの魔法使いは、一瞬驚いた様な表情をしたが、すぐになんとも言えないような表情になり、こちらをじっと見つめていた。


「あ、あの?」


(この人、もしかして言葉が通じてないのかな。やべえ…意思の疎通が出来ないとまずいぞ!)


返事がなかったことに焦っていたが、目の前の人物もようやく口を開いた。言葉は通じるようだ。


「お主を召喚の魔法で呼び出したのはこのわしじゃ。わしと契約するか?」


龍人は「やっぱりか」と観念するような表情で独り言ちた。


(思った通り。これは異世界召喚ってやつだ。アニメや漫画でよくあるやつだ。この魔法使いの言っている契約ってのはよくわからないが、ここは慎重に行くべきだ!)


「えーと…いきなり契約といわれてもよくわかりませんよ。そもそも契約ってなんですか?」


「契約とは、従属の契約じゃ。わしがお主に魔力を供給するかわりにお主はわしに力を貸す。まあ、わしの命令に従ってくれればそれでよい」


龍人は従属の契約など、とんでも無いと思った。勝手に呼び出しておいて、その上自身の自由も奪われるなど考えるとゾッとする思いだった。


(契約を結ぶかどうか確認してくるという事は、双方の意思確認は必要みたいだな、もっとも召喚魔法なんて方法を取れる相手だ。それ以外の魔法もあるはずだ、こっちの意思など関係なしに隷属させる方法もあるかもしれない。そもそも、俺を呼び出して力を貸して欲しいと言ってるけどどうするつもりだ?俺、普通の人間なんだけども…?少し話を合わせてみるか)


「俺の力が必要なら力は貸しましょう。ただし、従属する契約はする気は無い。勝手に呼び出したのはそちらだ、俺の自由は保証してもらいたい。」


「…いいだろう、契約は一方的には結ぶことは出来んからな。しかし、せっかくお主には来てもらったのだから少し我が家でゆっくり話でもしようじゃないか」


一瞬考えるような間を置いて、魔法使いは首肯した。龍人の危惧するようなことにはならず割とすんなり言い分は受け入れられたようだった。しかし、魔法があるような世界で気を抜くとマズイことになりそうだ。内心はこれからどうしよう。と不安に満ちていたが気を引き締めた。

まずこの魔法使いに、召喚した理由と元の世界に戻る方法、この世界のこと先ほど行っていた魔力のことなど聞かなければいけないことが山程あった。


(完全に信用するわけにはいかないが、情報はなるべく集めておかないと…俺になんらかの力があると勘違いしている様子だし、かえって好都合かも。相手は魔法を使えるだろうがこっちは悲しいことに実際、なんの力もないただのリーマンだ。はぁ…どうせ異世界なら神様からチートでも貰える世界が良かった!)


一頻(ひとしき)り無い物ねだりしていたところ、魔法使いから「付いて来い」と言われ、森の中を2、3分歩ったところで開けた場所に出た。そこには石造りの古めかしい屋敷があった。

無駄な装飾などはなく、豪華な作りとは言えないが、粗末では無い。きちんと寸法を測って切り出され、丁寧に組み上げられたであろう石の壁や、正面玄関の重厚な木製の扉はどこか品が感じられた。

森の中なのに草木に埋もれていない様子から手入れはされているのだろう。

ギィと音がする。 魔法使いは玄関の重厚な両開きの扉を開け「入れ」と促した。

玄関を潜ると薄暗い廊下が広がっており、先は真っ暗だった。魔法使いが一歩踏み出すと同時に石造りの廊下の壁にある燭台に次々と火が灯り、ふんわりとした灯火が廊下を照らしだした。

薄暗く続く、先の見えなかった廊下に次々と火が灯るその光景は龍人にとって、ああ、魔法の世界に来てしまったんだな。と実感しつつ、自身の今後も暗いものでなく、この燭台の灯火で照らされるように少しでも明るい道である暗示だったらな。などと一瞬、感慨に浸るのであった。
































 

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