異端者狩り
騎馬隊が村から見える位置まできたとき、村長はその威圧感に死を覚悟した。
そして、ゼットに皆と共にエンクロウズ村に逃げるように指示すると騎馬隊の到着を待った。
ゼットは、洞窟の入り口で皆に逃げるように指示すると村長の家の前に戻った。
そのときボトム村の村長と部隊長が対峙していた。
部隊長は右手に剣を持って仁王立ちしていた。
村長:「これはこれは、遠いところご苦労様でございます
さて、このような寂れた村にどのようなご用件でしょうか?」
部隊長:「ちとエンクロウズ村に用があっての、案内してはもらえぬだろうか?」
村長:「残念ながらそれはかないませぬ。」
部隊長:「そうか、残念だ。」
部隊長はそう言うと右手の剣を振り上げ、村長めがけて振り下ろした。
部隊長:「全員殺せ!!」
そう叫ぶと兵士達はときの声を発しながら走り出した。
ゼット:「なんということを、容赦なしか。」
そうつぶやくと、すぐに村長の家の裏へ向かい、木戸をくぐり、かんぬきをかけた。
そして、入り口の油壺を左手に抱え右手に松明を持つと洞窟に入っていった。
ゼットは、叫んだ。
ゼット:「逃げろ、村長が殺された!!」
声は洞窟内を反響しながらまっすぐに洞窟の奥へと進んで行く。
ゼットの前には、逃げていく村人達が見えた。
ゼット:(逃げ切れるだろうか?)
そう考えながら、奥へと進んで行く。
しばらく進み、ふと地面を見ると人形が落ちていた。
ゼット:(これはエルの人形?
ということはここを通過したということか。
無事でいてくれ。)
ゼットは人形を取ろうとしゃがみこんだ。
その時、頭の上でヒュという音が聞こえた。
次の瞬間、前を走っていた男が倒れるのを見た。
急いで近づくと男の首筋には、1本の矢が刺さっていた。
ゼット:(くそ、明かりを照らしていたら狙い撃ちか。)
ゼットは松明を敵に向けて投げ捨てると、大声で叫んだ。
ゼット:「明かりを消せ、狙い撃ちされるぞ!!」
すぐに、洞窟は暗闇に閉ざされた。
明かりは、ところどころに生えたコケが、淡い緑色で光っているものと、
後方にある兵士が持っている物のみだった。
ゼットは人形を握り締めると暗闇の中をヒカリゴケを頼りに、
できうる限りの速さで進んだ。
先頭を進む兵士が先ほど倒した村人の所までたどり着くと、死体が邪魔をして
進みにくい状態になっていた。
兵士:(洞窟内での戦闘は、避けたほうがよさそうだな。)
ゼットは後方からの矢の攻撃が無いことに安堵しながら黙々と前進を続けた。
やっとのことで、分かれ道のところに到着する。
後方を見ると明かりはそれほど近くない。
ゼット:(この距離なら、どの道に入ったか分からないだろう。)
そう考えると、迷わず右から2番目の道に飛び込んだ。
兵士は広い空間に到着すると、あたりを見回した。
兵士:(分かれ道か。この先を探すのは1人では危険だな。)
そして、他の兵士の到着を待った。
しばらく待つと、部隊長と案内役の男が入ってきた。
部隊長:「この先はどっちへ行けばいいのだ?」
案内役:「右から2番目の通路です。」
部隊長:「右から2番目だ!!、進め!!」